文献情報
文献番号
202227022A
報告書区分
総括
研究課題名
中規模建築物所有者等による自主的な維持管理手法の検証のための研究
課題番号
22LA1011
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本間 義規(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
- 東 賢一(関西福祉科学大学 健康福祉学部福祉栄養学科)
- 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 下ノ薗 慧(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
最小限のIoTデバイスによる温湿度,二酸化炭素濃度,等価騒音レベル等の物理情報と建物利用者(執務者)の目視情報や温熱感覚等主観評価をハイブリッドに活用することで,建築物の衛生環境状態を評価・レーティング可能なシステム:B-HERS(Building Hygiene Environment Rating System)を構築することが本研究の目的である。
3年計画の1年目は,全国7件のオフィスビルの物理環境測定及び主観者評価を実施・分析することで,B-HERSのコア部分である物理環境の執務者主観評価による補完可能性を探るとともに,物理要素の閾値設定のためのレーティング手法構築に向けた国内外の評価システム調査を行った。さらに中規模建築物所有者等が自主的な衛生管理行動に移すための心理・評価モデルの構築に向けた行動変容に関する予備調査を実施した。
3年計画の1年目は,全国7件のオフィスビルの物理環境測定及び主観者評価を実施・分析することで,B-HERSのコア部分である物理環境の執務者主観評価による補完可能性を探るとともに,物理要素の閾値設定のためのレーティング手法構築に向けた国内外の評価システム調査を行った。さらに中規模建築物所有者等が自主的な衛生管理行動に移すための心理・評価モデルの構築に向けた行動変容に関する予備調査を実施した。
研究方法
以下の3点について研究を実施している。
①既存建築物の衛生環境詳細調査及び主観評価手法の検討
物理要素と人間の感覚との整合性あるいは相関関係・因果関係を明らかにするため,全国5地域7件のオフィス内の温湿度,照度,等価騒音レベルを長期実測するとともに,冬期詳細測定として浮遊微粒子濃度,浮遊微生物,水質調査,照明光詳細調査および執務者主観評価を行う。
②国内外の室内環境性能レーティングシステム及び知的生産性の評価手法の調査
B-HERSのレーティングシステムに応用することを目的として,国内外の省エネルギー・環境性能評価レーティングシステムやIEQ(室内環境質)モデルを調査する。また,産業保健分野の労働生産性ツールも調査を実施する。これらのツールを,健康・知的生産性,室内環境,水質管理の観点から評価する。
③健康と室内環境にまつわる行動変容に関する検討
建築物衛生の環境管理における各ステージで行動変容を促すしくみを構築するため,Behavioral Science, Nudge Theory等に関する先行研究調査を実施した。
①既存建築物の衛生環境詳細調査及び主観評価手法の検討
物理要素と人間の感覚との整合性あるいは相関関係・因果関係を明らかにするため,全国5地域7件のオフィス内の温湿度,照度,等価騒音レベルを長期実測するとともに,冬期詳細測定として浮遊微粒子濃度,浮遊微生物,水質調査,照明光詳細調査および執務者主観評価を行う。
②国内外の室内環境性能レーティングシステム及び知的生産性の評価手法の調査
B-HERSのレーティングシステムに応用することを目的として,国内外の省エネルギー・環境性能評価レーティングシステムやIEQ(室内環境質)モデルを調査する。また,産業保健分野の労働生産性ツールも調査を実施する。これらのツールを,健康・知的生産性,室内環境,水質管理の観点から評価する。
③健康と室内環境にまつわる行動変容に関する検討
建築物衛生の環境管理における各ステージで行動変容を促すしくみを構築するため,Behavioral Science, Nudge Theory等に関する先行研究調査を実施した。
結果と考察
①既存建築物の衛生環境詳細調査及び主観評価手法の検討
主観温湿度申告は執務者によるばらつきが多く,81%の回答者が実際の室内温度よりも低い申告をしており,逆に相対湿度は81%の回答者が実際の室内相対湿度よりも高いと感じていること,さらに湿度の満足度は絶対湿度と相関することが確認できた。
光環境は,クルイトフ曲線上で,7つのオフィスとも快適範囲に入っていた。相関色温度は温熱感に与える影響も考慮することが必要である。
音環境に関しては,会話時間が主な騒音源であり,平均等価騒音レベルで46.6~52.3dB(A)であった。空調機器騒音やプリンター等のモーター機器に対する不満率は18~26%程度で高くなく,音環境全体の不満率は19%とそれほど高くなかった。
執務者のCO2呼出量から換気量を推定,42.3~141.7m3/h/personとなり,すべての測定建物で30m3/h/personを満たしていることを確認した。浮遊微粒子濃度は特定建築物が中規模建築物よりも全般的に低い粒子個数濃度であることを確認した。浮遊微生物に関しては日本建築学会規準の基準値以下であった。空気質の主観評価に関しては空気の汚れ感と換気量は有意に相関があり,満足度とも関連することがわかった。
②国内外の室内環境性能レーティングシステム及び知的生産性の評価手法の調査
室内環境質(IEQ)評価モデルとして, EU・ALDREN ProjectのTAILスキームを中心に調査を行い,健康リスク・快適性評価スキームとして有力であることがわかった。そのほか,統合的ペストコントロール,水質等の項目を評価するシステムはあるものの残留消毒剤に関連する項目は含まれていないことがわかった。
③健康と室内環境にまつわる行動変容に関する検討
ナッジ理論を含めた行動変容研究について文献レビューを行い,公衆衛生分野における行動変容研究の動向や,建築物衛生管理行動を促すためのWeb アプリの開発・活用に資する情報の整理を行った。
主観温湿度申告は執務者によるばらつきが多く,81%の回答者が実際の室内温度よりも低い申告をしており,逆に相対湿度は81%の回答者が実際の室内相対湿度よりも高いと感じていること,さらに湿度の満足度は絶対湿度と相関することが確認できた。
光環境は,クルイトフ曲線上で,7つのオフィスとも快適範囲に入っていた。相関色温度は温熱感に与える影響も考慮することが必要である。
音環境に関しては,会話時間が主な騒音源であり,平均等価騒音レベルで46.6~52.3dB(A)であった。空調機器騒音やプリンター等のモーター機器に対する不満率は18~26%程度で高くなく,音環境全体の不満率は19%とそれほど高くなかった。
執務者のCO2呼出量から換気量を推定,42.3~141.7m3/h/personとなり,すべての測定建物で30m3/h/personを満たしていることを確認した。浮遊微粒子濃度は特定建築物が中規模建築物よりも全般的に低い粒子個数濃度であることを確認した。浮遊微生物に関しては日本建築学会規準の基準値以下であった。空気質の主観評価に関しては空気の汚れ感と換気量は有意に相関があり,満足度とも関連することがわかった。
②国内外の室内環境性能レーティングシステム及び知的生産性の評価手法の調査
室内環境質(IEQ)評価モデルとして, EU・ALDREN ProjectのTAILスキームを中心に調査を行い,健康リスク・快適性評価スキームとして有力であることがわかった。そのほか,統合的ペストコントロール,水質等の項目を評価するシステムはあるものの残留消毒剤に関連する項目は含まれていないことがわかった。
③健康と室内環境にまつわる行動変容に関する検討
ナッジ理論を含めた行動変容研究について文献レビューを行い,公衆衛生分野における行動変容研究の動向や,建築物衛生管理行動を促すためのWeb アプリの開発・活用に資する情報の整理を行った。
結論
全国5地域7件のオフィスビルの物理環境測定及び主観者評価を実施した。分析の結果,B-HERSのコア部分となる空気環境管理に,光・音環境データの複合的利用で,換気量を推定できる可能性を示した。一方,執務者の主観評価結果は,単一物理要素間(例えば温熱と暑さ・寒さ評価)に統計的有意性は認められるものの,センサー代替が可能なほどの分解能は認められなかった。今後,TAILスキーム等のレーティング手法も参考にしながら主観評価内容を精査するとともに,地点数あるいはデータ数を増やし検討を進める。さらに中規模建築物所有者等が自主的な衛生管理行動に移すための心理・評価モデルの構築に向けた行動変容についても引き続き検討を進める。
公開日・更新日
公開日
2024-04-01
更新日
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