文献情報
文献番号
202227020A
報告書区分
総括
研究課題名
クリーニング業の新業務形態の衛生学的安全性の検討および効果的な衛生管理手法の確立
課題番号
22LA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
林 俊治(北里大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 道子(北里大学 看護学部)
- 中村 正樹(北里大学 医療衛生学部)
- 笹原 鉄平(自治医科大学 臨床感染症学部門)
- 金山 敦宏(防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症疫学・制御研究部門)
- 角田 正史(防衛医科大学校 医学科)
- 清 和成(北里大学 医療衛生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,390,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者の1人である伊藤道子は、令和4年度は北里大学に所属していたが、令和5年度から公立小松大学に所属することとなった(令和5年4月1日着任)。移籍後も引き続き本研究に参加する予定である。
研究報告書(概要版)
研究目的
クリーニング業は不特定多数の顧客より衣類の洗濯を依頼される業種である。しかし、これらの衣類に病原微生物が付着している可能性があり、汚染衣類によってクリーニング業の従業員および顧客において感染事故が発生するリスクがある。そこで、クリーニング業の安全を確保するために、「クリーニング業法施行規則」および「クリーニング業における衛生管理要領について」が定められている。
従来のクリーニング業においては、顧客が衣類をクリーニング引き受け店に渡し、クリーニング工場にて洗濯された後、顧客が引き受け店で衣類を受け取るといった業務形態が長年続けられてきた。この中でクリーニング引き受け店は上記の規則や要領に従って安全管理に努めてきた。しかし近年、従来の方法とは異なる衣類の受け渡し方法を用いる業務形態が生まれてきている。本研究の目的は、クリーニング業における新しい業務形態の実態を明らかにし、それらの業務形態の安全性を感染リスクという視点から検証することである。以上の検討結果を基に、クリーニング業における衣類の受け渡し方法が将来的にどうあるべきかについて提言を行う。
従来のクリーニング業においては、顧客が衣類をクリーニング引き受け店に渡し、クリーニング工場にて洗濯された後、顧客が引き受け店で衣類を受け取るといった業務形態が長年続けられてきた。この中でクリーニング引き受け店は上記の規則や要領に従って安全管理に努めてきた。しかし近年、従来の方法とは異なる衣類の受け渡し方法を用いる業務形態が生まれてきている。本研究の目的は、クリーニング業における新しい業務形態の実態を明らかにし、それらの業務形態の安全性を感染リスクという視点から検証することである。以上の検討結果を基に、クリーニング業における衣類の受け渡し方法が将来的にどうあるべきかについて提言を行う。
研究方法
新しい衣類の受け渡し方法を採用している企業は、主にインターネットなどに広告を出している。そこで、検索エンジンを用いて、これらの企業をリストアップし、新しい衣類の受け渡し方法としてはどのようなものがあるかを明らかにする。さらに、これらの新しい受け渡し方法がどの程度利用されているかを調べるために、インターネットを用いたアンケート調査を行う。
上記の調査でリストアップされた新しい衣類の受け渡し方法の安全性を感染リスクという視点から検証する目的で、衣類の受け渡し場所の細菌汚染調査を行う。具体的には、衣類の受け渡しを実際に行っている場所の環境表面の細菌汚染の状況を調査する。さらに、この汚染を除去するためには、どのような消毒・清掃方法が有効かも検討する。
上記の調査でリストアップされた新しい衣類の受け渡し方法の安全性を感染リスクという視点から検証する目的で、衣類の受け渡し場所の細菌汚染調査を行う。具体的には、衣類の受け渡しを実際に行っている場所の環境表面の細菌汚染の状況を調査する。さらに、この汚染を除去するためには、どのような消毒・清掃方法が有効かも検討する。
結果と考察
広告媒体などを用いた調査の結果、クリーニング業における新しい衣類の受け渡し方法がリストアップされた。①従来のクリーニング引き受け店における衣類の受け渡しの他に、②クリーニング引き受け店に併設されたロッカーによる衣類の受け渡し、③公共の場に設置されたロッカーによる衣類の受け渡し、④宅急便を用いた衣類の受け渡し、⑤コンビニエンスストアでの衣類の受け渡し、といった業務形態が現れてきている。また、クリーニング業に含まれるかどうかの解釈が難しいが、家庭での洗濯を代行する⑥洗濯代行業なるものも出現している。以上の新しい業務形態がどの程度利用されているかの調査は今後の検討課題である。また、これらの業務形態と現行法との整合性に関しては現在検討中である。
感染リスクを調べる目的で、各業務形態における衣類の受け渡し場所の細菌汚染調査を行った。現在のところ、特に感染リスクの高い業務形態は見つかっていないが、調査が十分ではない業務形態もあるため、これについては現時点で結論を出すに至っていない。
クリーニング業に持ち込まれる汚れた衣類が細菌に汚染されている以上、衣類の受け渡し場所が細菌に汚染されることを完全に防ぐことはできない。ただし、本研究で得られたデータを見る限り、衣類の受け渡し場所の細菌汚染は緊急の介入を要するほど危険なものではない。しかし、検出された細菌の中には食中毒の原因菌として重要なセレウス菌と黄色ブドウ球菌が含まれていることは注意しなくてはならない。しかし、衣類の受け渡し場所を定期的にアルコール含侵ワイプで清拭していれば、この汚染は低レベルに留まることも本研究で明らかになった。また、消毒薬を含まないワイプによる清拭でも同様の結果が得られている。
感染リスクを調べる目的で、各業務形態における衣類の受け渡し場所の細菌汚染調査を行った。現在のところ、特に感染リスクの高い業務形態は見つかっていないが、調査が十分ではない業務形態もあるため、これについては現時点で結論を出すに至っていない。
クリーニング業に持ち込まれる汚れた衣類が細菌に汚染されている以上、衣類の受け渡し場所が細菌に汚染されることを完全に防ぐことはできない。ただし、本研究で得られたデータを見る限り、衣類の受け渡し場所の細菌汚染は緊急の介入を要するほど危険なものではない。しかし、検出された細菌の中には食中毒の原因菌として重要なセレウス菌と黄色ブドウ球菌が含まれていることは注意しなくてはならない。しかし、衣類の受け渡し場所を定期的にアルコール含侵ワイプで清拭していれば、この汚染は低レベルに留まることも本研究で明らかになった。また、消毒薬を含まないワイプによる清拭でも同様の結果が得られている。
結論
クリーニング業における衣類の受け渡し場所の細菌汚染は生活衛生上の重要な問題であるが、定期的な清拭や消毒によって十分に解決可能な問題ともいえる。しかし、この定期的な清拭や消毒が行うことが難しい業務形態には問題があると言わざるを得ない。ロッカーを用いた衣類の受け渡し、宅急便を用いた衣類の受け渡し、コンビニエンスストアにおける衣類の受け渡しなどでは、定期的な清拭や消毒が十分に行われていない現状もあり、これらの業務形態に対して介入を行う必要があるかもしれない。
公開日・更新日
公開日
2024-04-01
更新日
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