水道水及び原水における化学物質等の実態を踏まえた水質管理の向上に資する研究

文献情報

文献番号
202227018A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水及び原水における化学物質等の実態を踏まえた水質管理の向上に資する研究
課題番号
22LA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 浅田 安廣(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻)
  • 越後 信哉(京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻)
  • 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 白崎 伸隆(北海道大学 大学院工学研究院 環境創生工学部門)
  • 高木 総吉(大阪府立公衆衛生研究所 衛生化学部 生活環境課)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 増田 貴則(国立保健医療科学院)
  • 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
  • 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
  • 三浦 尚之(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
37,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正などに資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
原水や水道水質の状況,浄水技術について調査研究を行うため,ウイルス,細菌・寄生虫,無機物,化学物質・農薬,消毒副生成物,臭気物質,リスク評価管理,水質分析法の8課題群-研究分科会を構築し,研究分担者17名の他に52もの水道事業体や研究機関などから117名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
水道事業体において実施可能なPMMoVの検査方法を確立することを目的として,市販の核酸抽出・精製キットの有用性を評価した.キットによるPMMoVの検出結果は陰電荷膜法濃縮方法と概ね一致しており,さらに濃縮を行うと100 copies/Lのオーダーまで測定できることが示された.
レジオネラ汚染とその指標性としての従属栄養細菌に関する調査を行った.一般細菌数と従属栄養細菌数の相関から一般細菌数100 CFU/mLに相当する従属栄養細菌数は430 CFU/mLであり,現状の暫定目標値2,000 CFU/mLを大幅に下回ったが,浄水とろ過水のそれぞれでは相関性は弱く,目標値設定には細菌類再増殖を考慮する必要がある.一度汚染された給水システムでは蛇口の定期的な開栓のみでレジオネラを制御することは難しい.水道におけるクリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物の検査において,遺伝子検査と他機関によるクロスチェックが機能した事例を報告した.
鉛管の残存件数は令和元年度水道統計で約200万件であるが,統計対象水道事業体の概ね1/3の事業体は残存鉛管の全体把握が難しい状況である.鉛管残存家屋では滞留後の水の非飲用利用が広報されているが,その周知や実際上の課題,鉛管の実態の把握と対策の必要性が指摘された.鉛の水質検査における流水後15分滞留させての採取に伴う作業負担と有効性への課題が示された.食品安全委員会の鉛評価書から,今後も鉛ばく露低減のための取組が必要であると考えられた.
農薬類の実態調査の結果,本年度から対象農薬リスト掲載農薬の変更されたイプフェンカルバゾンや未分類のメタゾスルフロンは浄水においても比較的高い濃度,頻度で検出された.粒状活性炭池の有機フッ素化合物の破過曲線を調査したところ,その鎖長が短いほど破過速度が大きく,さらに破過は水温が高いほど促進されていた.フェントエートは塩素処理するとChE活性阻害性を誘発し,オキソン体が寄与している可能性が示唆された.表流水中の農薬の検出可能性を推定するための機械学習モデルを開発し,農薬の検出可能性を高い精度で評価できることがわかった.
全国調査によりブロモクロロ酢酸,ブロモジクロロ酢酸は目標値案の50%を超過している地点があることが示された.トリハロメタン濃度と消毒副生成物グループ(ジハロ酢酸は除く)の濃度には関連性が認められた.さらに,臭素化消毒副生成物濃度は,同じグループの塩素化消毒副生成物濃度とトリハロメタン濃度から予測可能であった.
カルキ臭原因物質の消去剤としてはアスコルビン酸ナトリウムが有効である.残留塩素濃度が高い場合には臭気強度(残留塩素が存在する場合としない場合の差)が高い傾向にあった.浄水中に含まれるベンズアルデヒドは臭気に寄与していないと判断された.標準物質の調整が困難であるため臭素と塩素を両方含むトリハロアミン類の定量法は未確立である.
欧州の飲料水指令で管理されることとなっている20種のPFAS化合物類のうち,NOAEL(LOAEL)等に関するデータが得られたのは9物質であった.トリクロロエチレンの複数の影響によって裏付けられた全体的なTDIは0.5 µg/kg bw/dayが適切であると考えられた.
LC-QTOFMSを用いたスクリーニング分析法の前処理方法の分析精度を検証し,多数の農薬類を精度良く回収できる方法であることが明らかになった.農薬類のLC-QTOFMSスクリーニング分析法によるにおいては定量下限値を適切に設定することで解析者による判断基準の差を小さくできる.LC-MS/MSを用いたPFASのスクリーニング分析法を検討し,同定に必要な保持時間,マススペクトルの情報,定量に必要な検量線情報をデータベース化した.
結論
水道労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会,水道における微生物問題検討会に資すべき情報が収集された.

公開日・更新日

公開日
2023-10-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-14
更新日
2023-10-11

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
40,802,000円
(2)補助金確定額
40,802,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 25,221,681円
人件費・謝金 5,235,748円
旅費 4,104,271円
その他 3,219,586円
間接経費 3,075,000円
合計 40,856,286円

備考

備考
自己資金: 54,286円

公開日・更新日

公開日
2024-01-23
更新日
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