興行場における衛生的な環境確保のための研究

文献情報

文献番号
202227009A
報告書区分
総括
研究課題名
興行場における衛生的な環境確保のための研究
課題番号
21LA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
開原 典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 基哉(北海道大学 大学院工学研究院)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 本間 義規(国立保健医療科学院)
  • 伊庭 千恵美(京都大学 工学研究科建築学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 興行場における衛生的な環境確保を目的として、通知の見直しを視野に、興行場に求められる衛生基準の提言に資する情報整備を行う。求められる成果は、①建築物衛生法や建築基準法等の同時に規制を受ける関係法規や海外の規制と比較整理した資料、②興行場法に基づく各都道府県等の条例及び興行場の衛生状況の調査結果、③映画館における4D上映等の演出装置に関するメンテナンスの必要性について整理した資料、以上これらの調査結果を踏まえた興行場に求められる衛生基準への提言に資する科学的根拠を示す。
研究方法
 本研究班「興行場における衛生的な環境確保のための研究」は、求められる成果①~③に対応して、3つの研究部会から構成(①国内外の衛生基準調査と分析、②実態調査(条例と指導状況の把握および事例調査)、③衛生管理手法の確立)される。
 国内外の衛生基準の調査と分析では、建築物衛生法や建築基準法等の同時に規制を受ける関係法規や海外の規制について、文献調査や国内外の技術動向の資料に基づき、知見を整理する。
 実態調査では、ヒアリングやアンケート調査を行い、条例と指導状況の把握するとともに、施設の規模・用途・築年数および空調方式の違いを踏まえて、3年間で15件程度測定を行う。
 衛生管理手法の確立では、自治体の指導助言に資する4D上映等の装置と空気調和設備の維持管理に関する知見を整備するとともに、施設の種類等を踏まえた安心・安全につながる感染症対策の知見を整備する。
結果と考察
 R4年度の研究によって、以下の知見が得られた。
 国内外の衛生基準の調査では、令和3年度までに、国内外の文献調査に基づいて、欧米各国や国際機関等における興行場を対象とした衛生管理に関する既往の規制やガイドライン、ならびに、興行場に係る新型コロナウイルス感染症対策に関する各国の規制等を抽出し整理を行っているが、令和4年度も継続して国内外の情報集積を行い、必要に応じて情報を更新した。これらの情報は、我が国の興行場の感染症対策等、今般の変化を踏まえた衛生管理のあり方に関する知見と位置付けられる。
 実態調査では、これまでの通知では十分に想定されていない映画館の4D上映等、興行場における新たな興行内容・規模・時間を踏まえた衛生管理の実態把握のため、各都道府県等の条例について、衛生項目別に分析しその課題を抽出するとともに、現場調査として、興行場のうち映画館のシネマコンプレックスの観覧場(2D観覧場と4D観覧場)の実測(入場者数、4D等エフェクト記録、温度・湿度・CO2濃度・空気清浄度の連続測定および真菌・細菌)と維持管理に関するヒアリングを行い、温熱環境を含む多面的な衛生管理に関するエビセンスを集積した。空気中の準揮発性有機化合物(SVOC)に関する現場測定の方法については、令和3年度に引き続き検討を行うとともに、令和4年度は新たに労働衛生環境下での規制管理が行われているイソシアネートについての簡易測定に向けたパッシブサンプラーの開発と実空間での調査に向けた検討を行った。興行場は多様な施設があり、調査件数、設備の情報や運転スケジュール等の情報収集は課題であるものの、これまでに不足していた興行場の興行中の室内の詳細な空気環境性状に関するエビデンスが得られている。また、衛生器具の個数について、現場からの運用状況等を踏まえた適正化の要望に対し、その使用状況についても調査とその分析を行っている。
 衛生管理手法の確立では、令和3年度までに、安心安全な興行場の室内衛生環境の確保を目指して、先を見据えた浮遊飛沫(エアロゾル)感染のリスク検討の結果から、建築物、空調換気設備、維持管理、空気清浄やマスクの感染対策等、多数の要因の影響を受ける可能性を示している。令和4年度は、興行場の室内空気環境の特徴を踏まえて、浮遊飛沫感染対策に関するエビデンスとして、令和3年度までにとられた国内におけるCOVID-19 に対する建築環境対策と関連する知見を整理している。
結論
 興行場の国内外の技術動向、各都道府県等の指導状況、観覧場の室内空気環境の実態から、興行場の用途毎の特質を踏まえた、衛生管理、行政指導に関する効果的な手法が必要である。一連のエビデンスの集積により、興行場の建築設備の設計と維持管理や運用の在り方等に関する課題の提起が可能となる。本研究班には、これまでの通知では十分に想定されていない実態を踏まえた、興行場に求められる衛生基準への提言に資する科学的根拠の構築が求められている。

公開日・更新日

公開日
2024-04-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202227009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,950,000円
(2)補助金確定額
5,950,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,591,951円
人件費・謝金 1,037,862円
旅費 242,949円
その他 1,078,009円
間接経費 0円
合計 5,950,771円

備考

備考
自己資金771円

公開日・更新日

公開日
2024-01-22
更新日
-