がん対策の医療経済的評価に関する研究

文献情報

文献番号
200925036A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策の医療経済的評価に関する研究
課題番号
H20-がん臨床・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部)
研究分担者(所属機関)
  • 武村 真治(国立保健医療科学院 公衆衛生政策部 地域保健システム室)
  • 菅原 琢磨(国立保健医療科学院 経営科学部 サービス評価室)
  • 石川ベンジャミン光一(国立がんセンター がん対策情報センター 情報システム管理課)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 薬学部 薬学科)
  • 福田  敬(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻疫学保健学講座臨床疫学・経済学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
18,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策に投入される費用とそれによって産出される効果を測定し、費用と効果の両面からみたがん対策の医療経済的評価を包括的・総合的に行うことによって、がん対策の効率的な推進のあり方を検討する。
研究方法
がん検診の受診率の向上が国民全体の社会的費用と健康状態に及ぼす影響の評価、がん検診実施機関の経営管理上の課題や今後の展望などに関する面接調査、がんの罹患・死亡に関するデータを体系的に管理するためのメタデータベースの設計及びプロトタイプデータベースの構築、質調整生存年(QALYs:Quality-Adjusted Life Years)の算出を行うためのQOLウェイト(効用値)を収集するためのWebベースの測定ツールの開発、がんの疾病費用(直接費用(がんの医療費)、間接費用(死亡費用(がんで死亡したことによって喪失した将来所得)、罹病費用(がんによる入院・外来で逸失した所得)))の推計と経年変化の影響要因の検討などを実施した。
結果と考察
がん検診の受診率が10%増加することによる1年間の効果(がん患者の生存者数)と費用(検診・精密検査の費用、医療費)の増加は、子宮頸がん検診で約9,800人と約290億円、胃がん検診で約12,000人と約800億円、大腸がん検診で約14,000人と約300億円、乳がん検診で約15,700人と約450億円であった。
検診機関の経営の要である「受診者確保」のためには、利用者の視点に立った利便性向上とリピーターの囲い込み、検診・健診の質と精度管理への配慮が重要との認識がみられた。今後の事業展開については「現状維持」の意向が認められ、新規検診・健診事業のメリットが享受できる場合でも医師等の職員確保が制約要因になっていた。
平成11、14、17年度のがんの疾病費用の経年変化は、直接費用としての医療費は増加していたものの間接費用は減少し、総額では減少傾向にあった。間接費用減少の要因としては就業率や賃金の減少よりも各がんの死亡率の減少の影響の方が大きく、がんの治療および予防等の対策が貢献している可能性が示唆された。
結論
今後は、がん検診から治療・ケアまでに要する時間的要素のモデルへの組み込み、治療・ケアの多様性を考慮した費用(医療費、介護費用)の推計方法の開発、今回開発されたがんの罹患・死亡に関するメタデータベースと効用値測定ツールを用いたQALYsの算出を実施し、がん検診の受診率の変化が費用と効果に及ぼす長期的な影響の評価、増分費用効果比(1QALY当たり費用)を用いたがん検診の費用効果分析を厳密に実施する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
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