文献情報
文献番号
202226011A
報告書区分
総括
研究課題名
毒物又は劇物の指定等に係る急性吸入毒性試験の代替法の開発及びその精緻化に関する研究
課題番号
22KD1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
- 津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
- 魏 民(大阪公立大学 大学院医学研究科)
- 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 赤根 弘敏(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
21,596,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、(1) in vivo試験代替法として、吸入暴露が想定される物質の毒劇物判定におけるTIPS法の検証、及び、(2) in vitro試験代替法として、ヒト肺癌細胞株(A549)の細胞毒性を指標とした評価法を検討・精緻化し、毒劇物の指定に資する手法の確立を図ることを目的とする。
研究方法
毒物又は劇物は,原則,動物を用いた急性毒性試験におけるLD50/LC50値から判定されており,投与方法には経口,経皮及び吸入が想定されている.しかし,全身吸入暴露法は大規模な暴露装置が必要となるなどの困難があるため,吸入毒性情報は限定的である.本研究では,汎用性の高い経気管肺内噴霧投与法(Trans-tracheal intrapulmonary spraying;TIPS法)による気管内投与毒性試験の急性吸入毒性試験の代替法としての有用性をより堅固なものにすることを目的に,被験物質6剤(N,N-ジメチルアセタミド,N,N-ジメチルホルムアミド,tert-ブチルアルコール,アクリル酸,2‐ジメチルアミノエタノール及びヘキサヒドロ-1H-アゼピン)についてTIPS法による気管内投与急性毒性試験を実施し,TIPS法で得られたLD50値と全身吸入暴露におけるLC50値を比較した.また、TIPS法による短期試験後2年まで観察することによって、長期吸入暴露試験に代わる試験法の開発を行なってきた。被験物質は、このプロジェクトで今までに検索されてきた13物質物質のうち、IARC Monographにおけるヒトにおける発がん物質(要因)の分類においてGroup 2A(おそらくあり)4物質、Group 2B(可能性あり)4物質、Group 3(疑われるがデータ不十分)2物質であるが、TIPSによる短期投与2年後の発がん性との整合性について解析を進めている。
さらに、さらに、ラットを用いた被験物質の経気管肺内噴霧投与法(Trans-tracheal intrapulmonary spraying;TIPS法)を行う際のin vitro投与量設定法として、細胞毒性評価法として使用されているマウス線維芽細胞 3T3を用いたNeutral Red Uptake Cytotoxicity Assay(OECD GD 129)を一部改変し、ヒト肺腺癌細胞株A549を用いた改変Neutral Red Uptake assay(A549 NRU assay)を構築し、試験プロトコールの最適化とその有用性について検討を行った。
さらに、さらに、ラットを用いた被験物質の経気管肺内噴霧投与法(Trans-tracheal intrapulmonary spraying;TIPS法)を行う際のin vitro投与量設定法として、細胞毒性評価法として使用されているマウス線維芽細胞 3T3を用いたNeutral Red Uptake Cytotoxicity Assay(OECD GD 129)を一部改変し、ヒト肺腺癌細胞株A549を用いた改変Neutral Red Uptake assay(A549 NRU assay)を構築し、試験プロトコールの最適化とその有用性について検討を行った。
結果と考察
N,N-ジメチルアセタミド及びN,N-ジメチルホルムアミドのLD50値と全身吸入暴露におけるLC50値の差異は4倍以内であった.tert-ブチルアルコールの差異は0.18~0.36倍であったが,アクリル酸,2‐ジメチルアミノエタノール及びヘキサヒドロ-1H-アゼピンでは4分の1(0.25倍)を超える差異が認められた.A549 NRU assayでの至適条件を設定し、6つの化学物質(Acetylacetone、1,2-Dichloroethane、N,N-Dimethylacetamide、N-Dimethylformamide、Glycidol及びPolyacrylic Acid 5000の本試験におけるLC50を算出し、良好な再現性も確認できた。
結論
TIPS法による気管内投与急性毒性試験の有用性が示唆された。今後,新たに6~10物質について気管内投与急性毒性試験を実施してLD50値の判定及び毒性影響の検討を実施するとともに,投与液の物理化学的性状の検討や肺,気管などの呼吸器を含む諸臓器の病理組織学的検査を実施し,今回認められたTIPS法と全身吸入暴露法の差異の要因を検討する予定である.
TIPS法のin vitro投与量設定試験としてA549 NRU assayを構築することができた。
TIPS法のin vitro投与量設定試験としてA549 NRU assayを構築することができた。
公開日・更新日
公開日
2023-07-31
更新日
-