オルガノイドおよびその共培養系を用いた化学物質の新規in vitro有害性評価手法の確立

文献情報

文献番号
202226009A
報告書区分
総括
研究課題名
オルガノイドおよびその共培養系を用いた化学物質の新規in vitro有害性評価手法の確立
課題番号
22KD1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
戸塚 ゆ加里(日本大学薬学部 環境衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 俊夫(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 動物実験部門)
  • 成瀬 美衣(国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所動物実験施設)
  • 美谷島 克宏(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 渡邉 昌俊(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 西村 有平(三重大学 大学院医学系研究科統合薬理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
20,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学物質の開発には、安全性評価が不可欠であり、そのために実験動物を用いた反復投与試験等の実施が必要とされる。一方、動物愛護3Rs (Replacement・Reduction・Refinement)の観点から、化学物質の発がん性予測等の安全性評価の動物実験代替法が求められている。本研究では、マウス肺及び肝臓オルガノイドおよび免疫系や間質細胞等との共培養系を用いた化学物質の新規in vitro有害性評価手法の確立を目指すことと、一次線毛の発現がオルガノイドを用いた新規評価系の有用なエンドポイントとなり得るかについての検討を行うことを目的とする。
研究方法
共通して使用する市販のマウス肝臓オルガノイド(STEMCELL Technologies, ST-70932)の長期培養、化学物質暴露などの条件について検討した。また、C57BL/6J(B6J)由来肺オルガノイドに対しカルバミン酸エチル(ウレタン)を暴露し毒性評価を行なった。エピゲノム変化評価系の構築として、DEN誘発肝腫瘍とin vitro DNA発がん性試験のWESによるDNA変異の比較を行った。in vivo毒性評価実験としては、ウレタンならびにアクリルアミドを用いて雄性C57BL/6Jマウス28日間投与毒性試験を実施し、病理組織学的検査、血液生化学的検査などから毒性学的影響を観察した。さらに、マウス正常組織を用いて、一次線毛の発現解析について検討した。そのほかに、一次線毛の分子基盤解明のため、二光子励起顕微鏡を用いて、ゼブラフィッシュの一次線毛の蛍光ライブイメージングを実施した。また、オルガノイドにおける一次線毛の発現解析の予備実験として、既存の細胞株を使用した一次線毛の発現状態および条件の確認を行った。
結果と考察
マウス肝臓オルガノイドの培養、実験などの条件に関して検討し、Organoid Growth Medium(STEMCELL Technologies, ST-06030)を用いドーム状に培養することで安定した長期培養が可能だとわかった。化学物質の暴露方法は、メタンスルホン酸エチルのような培地に対して可用性の物質であれば、ドーム型培養法でもMatrigel Bilayer Organoid Culture法でも同様な細胞毒性が確認できた。一方、B6J雄マウスの肺由来オルガノイドにウレタンを2,500 µMおよび10,000 µM濃度で処置することにより、対照(0 µM)に比べてオルガノイドが不整形(発芽類似変化)を示す傾向がみられた。また、in vitro 発がんDEN誘発肝腫瘍とin vitro DNA発がん性試験のWESによるDNA変異の比較において、同じDNA部位のSNPが生じ、DEN処置オルガノイドを皮下に移植して生じた皮下増殖性病変や、肝腫瘍でそのSNPが濃縮されていることを明らかにした。オルガノイド評価系でのエンドポイント候補探索のためのin vivo毒性試験に関しては、ウレタンやアクリルアミドを毒性陽性対照物質としてマウスを用いた28日間反復経口投与毒性試験を実施し、標的臓器に毒性学的変化が惹起されることを確認した。さらに、マウス正常組織を用いて、一次線毛の検出方法を確立した。in vitroにおいても免疫細胞学的染色を用いてDU-145において一次線毛の発現を確認している。また、蛍光ライブイメージングを用いて、ゼブラフィッシュの肝臓、尿細管、腸管、脳など、様々な組織における一次線毛の形態が観察可能であることを確認した。
結論
マウス肝臓オルガノイドの安定した培養を長期間維持できる条件を決定したので、研究分担者の各施設において同一条件でオルガノイドの維持を行い様々な実験を行うことが可能となる。また、B6Jマウス由来の肺オルガノイドを用いた反復毒性試験法から得られた結果より、細胞増殖に対する影響を指標とする毒性評価に適用可能であることが示された。そして、in vitro 発がんDEN誘発肝腫瘍とin vitro DNA発がん性試験のWESによるDNA変異の比較において、オルガノイドを用いたin vitro発がん性試験が動物実験の代替法として利用可能なことが示唆された。さらに一次線毛についてはマウス正常組織並びに既存の細胞株においてその発現が確認され、マウス毒性試験より得られた病態組織やオルガノイドへの応用が期待できる。また一次線毛の形態変化を、様々な組織において評価できるゼブラフィッシュを作成したので、化学物質が一次線毛に与える影響の分子基盤を解析し、オルガノイドやラットなどの化学発がんモデルにおける一次線毛の影響評価に有用な情報を提供しうると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202226009Z