化学物質誘導性の甲状腺機能低下症における次世代影響評価に関する総合研究

文献情報

文献番号
202226008A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質誘導性の甲状腺機能低下症における次世代影響評価に関する総合研究
課題番号
21KD1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中西 剛(岐阜薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 田熊 一敞(大阪大学 大学院 歯学研究科 薬理学教室)
  • 松丸 大輔(岐阜薬科大学 衛生学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
18,225,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ヒトでは妊娠期の甲状腺機能低下が児の脳発達に悪影響を与えることが疫学調査により明らかとなった。このような背景を踏まえ、化学物質の毒性評価を行う各関連ガイドライン試験法においても、甲状腺ホルモン関連指標の検討が追加された。しかしこれら関連指標の変動と化学物質の児動物における毒性学的意義、特に発達神経毒性(DNT)については不明な点が数多く取り残されている。化学物質曝露により誘導される妊娠期の甲状腺機能関連指標の変動をリスク評価に生かすためには、DNT評価等の次世代影響を効果的に進めるための新たな技術を導入し、母体の甲状腺機能関連指標の変動と毒性との関係を明確にすることで、学術的基盤を堅固なものにする必要がある。
今年度は、マウスにおいて抗甲状腺薬プロピルチオウラシル(PTU)を様々な用量で母動物に曝露し、妊娠期から甲状腺機能を低下させた際の甲状腺関連指標の変動と児動物への影響の相関を検討した。特に脳発達への影響については、児動物脳の神経発達状態を非侵襲的にトレースできると期待されるレポータートランスジェニックマウス(Syn-Repマウス)を用いて検討を行った。また前述のin vivo実験で得られた結果を基に、ヒトiPS細胞などを用いて甲状腺関連指標の変動による次世代影響を評価できるin vitro試験法の構築を試みると共に、神経細胞分化時に甲状腺機能低下を誘導した際の遺伝子発現変動についても網羅的解析を試みた。
研究方法
Syn-Repマウスの各臓器におけるレポーター分子(Luc2)の発現は、臓器をホモジナイズして得られた遠心上清を用いて、in vitroルシフェラーゼアッセイにより評価した。
In vivoイメージング解析は、D-Luciferin溶液を腹腔内投与後、IVISを用いて発光量を測定することで行った。
DNT研究におけるSyn-Repマウスの有用性の検証は、バルプロ酸(VPA)500mg/kgを妊娠12.5日に腹腔内投与することで行った。その後の児動物の脳について、in vivoイメージング解析とNissl染色法による組織形態学的解析を行った。また胎生期にVPAに曝露した児動物を対象に、自発行動試験や社会性相互作用試験等の各種行動試験を行った。
抗甲状腺薬を用いた妊娠期甲状腺機能低下の誘導は、妊娠6日からプロピルチオウラシル(PTU)を混餌投与することで行った。胎児の発生や器官/骨格形成における妊娠期の甲状腺機能低下の影響は、出生前発生毒性試験(TG414)に準じた方法で行った。児動物脳発達への影響は、Syn-Repマウスを用いたin vivoイメージング解析により行った。
ヒトiPS細胞における甲状腺ホルモン受容体(THR)αのノックダウン(KD)はshRNAを搭載したレンチウイルスベクターを感染させることで行った。作製した細胞について神経細胞分化に与える各種化学物質の影響を検討した。THRα-KD細胞(外胚葉)よりRNA抽出を行い、scramble controlに対して発現が低下している遺伝子の網羅的解析を行った。
結果と考察
今年度は以下のことを明かにした。
Syn-Repマウスは、発達期脳の神経細胞の構築状態を非侵襲的にトレースできたことから、DNT評価のNew Approach Methodology(NAM)としての有用性が示された。
妊娠期の母体甲状腺機能低下における次世代影響を評価するための最適なPTUの投与条件見い出し、ラットとの種差について議論できるデータを得た。
Syn-Repマウスを用いた検討により、児動物脳への影響は母体血中の甲状腺関連ホルモンに変動が認められない軽度の甲状腺機能低下時においても起こる可能性が示唆された。
出生前発生毒性試験(TG414)の結果、妊娠期に母体の甲状腺機能が完全に抑制されても、児の着床や骨格・臓器形成等にはほとんど影響がないことが確認された。
ヒトiPS細胞を用いた神経細胞分化誘導モデルにより、甲状腺ホルモン受容体(THR)αが神経細胞分化に重要であるとともに、THRαの発現抑制がDNT陽性対照化学物質に対して併用効果を示すことが確認された。
結論
甲状腺機能低下による次世代影響は、脳以外では認められなかったことから、妊娠期~離乳期の母体甲状腺機能低下における次世代影響は脳が最も鋭敏なエンドポイントである可能性が示された。またSyn-RepマウスおよびヒトiPS細胞を用いたin vitro系を組む合わせることで、妊娠期の甲状腺機能低下時やDNT陽性対照物質の脳神経系構築への影響評価やメカニズム解明を効果的に行うことができる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202226008Z