甲状腺に対する化学物質の影響を評価する手法の研究

文献情報

文献番号
202226007A
報告書区分
総括
研究課題名
甲状腺に対する化学物質の影響を評価する手法の研究
課題番号
21KD1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
  • 赤根 弘敏(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,135,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌攪乱物質のヒト健康への影響は広く検討されているが、化学物質による抗甲状腺作用の評価方法については、いまだコンセンサスが得られていない。本研究では、国際機関および諸外国等における、甲状腺ホルモン攪乱化学物質の判定に利用可能な評価手法ならびに評価実績の情報収集を実施するとともに、ラット組織を用いた病理組織学的・免疫組織化学的検索による、化学物質の甲状腺影響のin vivo評価法確立を目指す。
研究方法
6週齢のSDラットに対し、甲状腺ペルオキシダーゼ阻害等、6種類の機序に基づく計10種の抗甲状腺物質を複数用量で28日間反復経口投与した。各種内分泌器官の臓器重量および血清ホルモン値を測定し、甲状腺・下垂体等について、病理組織学的・免疫組織化学的・分子生物学的検索を実施した。これらの中から、最も鋭敏あるいは毒性学的意義(機序の特定に有用等)を有するパラメータの組み合わせを検索し、化学物質の甲状腺影響のin vivo評価法確立を目指す。また、甲状腺機能阻害物質投与時の遺伝子発現変動を検討するため、甲状腺および下垂体を用いて、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を実施した。さらに、研究期間を通じて、諸外国・国際機関における甲状腺機能評価に関する情報を収集した。
結果と考察
OECDガイドラインおよび化審法に規定される齧歯類を用いた28日間反復経口投与試験に準じて、様々な機序に基づく抗甲状腺物質をラットに複数用量で投与し、臓器重量測定および病理組織学的・免疫組織化学的検索を実施し、血清ホルモン値との比較を行った。最も重要な結果として、病理組織学的検査における甲状腺濾胞上皮細胞の肥大が、多くの被験物質において血清T3・T4・TSH値の有意な変動がみられた用量よりも、さらに低い用量から統計学的有意差をもって認められた。また、血清T4の代謝・排泄を促進する物質の投与により、UGT1A6発現は血清ホルモン値の変動ならびに甲状腺の病理組織学的所見に先行して認められ、間接的な抗甲状腺作用を反映していた。
結論
令和4年度までの結果から、抗甲状腺物質の検出において、ラット28日間反復経口投与試験から得られた甲状腺の病理組織学的検索が、血中ホルモン値測定よりも鋭敏な指標となり得ることが示された。また、甲状腺重量、下垂体TSHおよび甲状腺Ki67の免疫染色も、血中ホルモン値と概ね同等の感度を示し、抗甲状腺物質の評価に有用と考えられた。ヒトへの外挿性を考慮する上で特に重要な、甲状腺への直接影響かあるいは肝臓での代謝を介した間接的な影響かを区別するために、甲状腺のT4免疫染色、肝臓における病理検査およびUGT1A6免疫染色を利用し得る可能性が示唆された。これまでの甲状腺・下垂体を用いた網羅的遺伝子発現解析により、病理組織学的解析をサポートし得る新規バイオマーカーとしてNISを見出した。国際的にはOECDおよびICCVAM/EPAを中心とした専門家会議において、抗甲状腺物質のin vitro評価系開発が進んでいるものの、実用化には多くの課題が残されており、既存の試験に組込みが可能なin vivo評価手法の確立が引き続き重要であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2023-07-31
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収支報告書

文献番号
202226007Z