安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202225044A
報告書区分
総括
研究課題名
安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築のための研究
課題番号
22KC2007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大隈 和(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 照英(金沢工業大学 加齢医工学先端技術研究所)
  • 田野崎 隆二(慶應義塾大学医学部 輸血・細胞療法センター)
  • 岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤は、人体より採取された血液を原料として製造されているが、少子高齢化により献血可能人口は減少しており、輸血用血液製剤の供給実績は減少傾向にある。一方、血漿分画製剤、特に免疫グロブリン製剤は、世界的に需要が増加しており、国内においても安定供給に支障をきたす可能性がある。折しも、令和元年からの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、さらに有限である血液製剤の安定供給、安全性の向上、献血者の保護を行う必要があった。令和4年度はSARS-CoV-2感染の流行継続に伴い、血液製剤の安定供給と献血者の保護を図るための採血基準を作成及びSARS-CoV-2の採血事業への影響を評価し、対応を検討する。また、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの見直しに関する検討等を行う。
研究方法
新規SARS-CoV-2ワクチンの接種が行われているため、班会議を開催し、感染症の流行状況やワクチン接種に伴う副反応発生状況を、海外からの研究報告やガイドライン等を参考に確認し、現時点での知見をまとめた。その上で、本ワクチン接種者の採血制限についての考え方をまとめた。SARS-CoV-2既感染者の採血制限については定期的に見直すこととなっており、更なる感染拡大を想定したSARS-CoV-2既感染者の採血制限についても検討する必要があったため、班会議を開催し議論した。また、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインについて現状に対応するための一部改正や、サル痘の海外での流行や国内発生を受けて当該感染症に関する採血制限の設定等が必要になったため、班会議を開催し検討後提言を行った。
結果と考察
以下の課題について検討し意見を取りまとめた。1. 血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正(案)について:①HBV、HCV及びHIVに関して、NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたNAT陰性の血漿の取扱いについて:有効期間内にある使用されていない血漿製剤については、輸血用血液製剤としての使用は不可として供給停止・回収するものの、原料血漿としての使用は可とする。②1)HEV感染者のHEV-RNA持続陽性期間が約3カ月であることを考慮し、十分な安全域を確保した上で、HEVに係る遡及調査期間を6カ月とする。2)医療機関から輸血用血液製剤によるHEV感染が疑われた者が報告された場合であっても、HEVは経口感染で何度も感染する特性があること等を考慮し、投与された輸血用血液製剤の供(献)血が6カ月より前に行われた場合には事後検査依頼の対象外とする。3)HEV-NAT陽性となった供(献)血者から過去に採血されたNAT陰性の血液の取扱い:遡及調査期間内かつ有効期間内にある輸血用血液製剤については供給停止又は回収の対象とする。原料血漿としての使用は可とする。遡及調査期間外かつ有効期間内にある輸血用血液製剤については供給停止又は回収の対象としない。2. 新たに承認されたSARS-CoV-2ワクチンの接種者の採血制限について:武田社製の組換えタンパク質ワクチン(ヌバキソビッド筋注)については不活化ワクチンと同様の採血制限期間(接種後24時間)、ヤンセンファーマ社製のウイルスベクターワクチン(ジェコビデン筋注)についてはアストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチンと同様の採血制限期間(接種後6週間)に揃えることが適切である。3. サル痘に係る安全対策について:当面の措置として、サル痘既感染者から採血を行わない。サル痘の潜伏期間は最大21日間とされていることから、サル痘患者等との接触者については、最終接触日から21日間は採血を行わない。供(献)血者が採血時に、サル痘既感染者であったこと又はサル痘患者等との接触者であったことが判明した場合には、遡及調査期間を、サル痘既感染者については発症日の21日前からそれ以降、サル痘患者等との接触者については最終接触日から21日後までとする。4. SARS-CoV-2既感染者の採血制限について:採血制限期間変更なし。5.今後SARS-CoV-2の感染拡大が顕著になって血液製剤の供給等に影響が出るかもしれない可能性を想定して、現在の安全域を広くとったSARS-CoV-2既感染者の採血制限期間をもとに理論上必要な同期間を検討したところ、4週間から2週間に短縮可能である。
結論
COVID-19に関連する採血制限について、感染症の流行状況やワクチン接種に伴う副反応発生状況を確認し検討を行い、血液製剤の安全性及び安定供給に寄与する提言を行った。また、血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの一部改正やサル痘に関する採血制限についても検討し提言を行った。これらの提言を厚生労働省血液事業部会安全技術調査会において報告した。

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225044Z