大腸がん肝転移症例の術後補助化学療法に関する研究

文献情報

文献番号
200925024A
報告書区分
総括
研究課題名
大腸がん肝転移症例の術後補助化学療法に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 知行(愛知県がんセンター中央病院 愛知県がんセンター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 濱口 哲弥(国立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 森谷 宜皓(国立がんセンター中央病院大腸外科)
  • 佐藤 敏彦(山形県立中央病院消化器外科)
  • 高橋 進一郎(国立がんセンター東病院上腹部外科)
  • 滝口 伸浩(千葉県がんセンター消化器外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院消化器外科)
  • 赤池 信(神奈川県立がんセンター消化器外科)
  • 藤井 正一(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
  • 瀧井 康公(新潟県立がんセンター新潟病院大腸外科)
  • 伴登 宏行(石川県立中央病院消化器外科)
  • 齊藤 修治(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
  • 山口 高史(京都医療センター大腸骨盤外科)
  • 大植 雅之(大阪府立成人病センター大腸外科)
  • 三嶋 秀行(国立病院機構大阪医療センター外科)
  • 加藤 健志(箕面市立病院下部消化管外科)
  • 岡村 修(関西労災病院外科(大腸・肛門領域))
  • 棚田 稔(国立病院機構四国がんセンター)
  • 白水 和雄(久留米大学病院消化器外科)
  • 佐藤 武郎(北里大学東病院消化器外科)
  • 近藤 征文(札幌厚生病院外科)
  • 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院・消化器センター)
  • 木村 秀幸(岡山済生会総合病院外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大腸がん肝転移治癒切除後の再発抑制を目的として,新規抗がん剤であるオキサリプラチンに5-FUとL-ロイコボリンを併用するmFOLFOX6療法の臨床的有用性を検証する。
研究方法
大腸癌肝転移完全切除例の手術単独群を対照群,手術+mFOLFOX6療法を試験治療群として試験治療群の臨床的有用性をランダム化比較試験で検討する。肝転移切除+FOLFOX療法の第2相試験はないので,先ず第2相試験を行い,安全性を確認した上で,引き続いて第3相試験を行う。[評価項目]第2相試験:治療群の9コース完遂割合 第3相試験:主評価項目:無再発生存期間
副評価項目:全生存期間,有害事象,再発形式。[予定登録症例数]第2相部分:A群39例、B群39例,計 78例 第3相部分:第2相部分も合わせて1群150例,計300例

結果と考察
[結果]平成21年2月に2相部分79例(試験治療群 39例,対照群 40例)の登録が完了し,8月に試験治療群の治療が終了した。第2相試験のendpointは試験治療群9コース完遂割合であるが,39例中20例が未完遂となった。その内容は毒性中9,患者拒否5,併存症による治療開始前の中止1,再発5だった。有害事象が関係した中止理由は好中球減少が12例中8例で最も多い中止理由だった。プロトコール基準の見直しを行い,患者選択基準,化学療法の減量レベル,有害事象により投与開始基準に当てはまらない場合の休薬期間を改訂した。[考察]プロトコール基準の見直しについては,完遂割合を9コースとするdecision ruleを見直す方法と,減量・中止基準を下げてendpointの9コース完遂を維持する方法とがある。FOLFOX投与コース数と奏効率の関係を米国FDAがオキサリプラチンを承認するときの基となったデータおよびわれわれががん臨床研究事業( H16-がん臨床-一般-032)で行った第2相試験でのデータから,抗腫瘍効果は治療開始後3?4コースから現れ,8?9コースでplateauとなることが分かっている。したがって確実な効果を期待するために9コース完遂を維持するのがよいと考えた。そこで減量・中止基準を検討したものである。

結論
未だ大腸がん肝転移切除に対して満足できる補助療法はなく,またFOLFOX療法の至適投与コース数や薬剤の減量gradeについて明らかにした報告はないので,大腸がん肝転移切除例に適した改訂プロトコールによる本研究の意義は大きい。
この改訂案はJCOG効果・安全性評価委員会および参加施設のIRBで審査を受けて試験を再開している。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200925024B
報告書区分
総合
研究課題名
大腸がん肝転移症例の術後補助化学療法に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 知行(愛知県がんセンター中央病院 愛知県がんセンター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 島田 安博(国立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 濱口 哲弥(国立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 森谷 宜皓(国立がんセンター中央病院大腸外科)
  • 佐藤 敏彦(山形県立中央病院消化器外科)
  • 高橋 進一郎(国立がんセンター東病院上腹部外科)
  • 滝口 伸浩(千葉県がんセンター消化器外科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院消化器外科)
  • 赤池 信(神奈川県立がんセンター消化器外科)
  • 藤井 正一(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
  • 瀧井 康公(新潟県立がんセンター新潟病院大腸外科)
  • 山田 哲司(石川県立中央病院消化器外科)
  • 伴登 宏行(石川県立中央病院消化器外科)
  • 石井 正之(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
  • 齊藤 修治(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
  • 山口 高史(京都医療センター大腸骨盤外科)
  • 大植 雅之(大阪府立成人病センター大腸外科)
  • 三嶋 秀幸(国立病院機構大阪医療センター外科)
  • 加藤 健志(箕面市立病院下部消化管外科)
  • 岡村 修(関西労災病院外科(大腸・肛門領域))
  • 棚田 稔(国立病院機構四国がんセンター)
  • 白水 和雄(久留米大学病院消化器外科)
  • 高橋 慶一(都立駒込病院大腸外科)
  • 佐藤 武郎(北里大学東病院消化器外科)
  • 近藤 征文(札幌厚生病院外科)
  • 工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院・消化器センター)
  • 木村 秀幸(岡山済生会総合病院外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 大腸がん肝転移治癒切除後の再発抑制を目的として,新規抗がん剤であるオキサリプラチンに5-FUとL-ロイコボリンを併用するmFOLFOX6療法の臨床的有用性を検証する。
研究方法
大腸癌肝転移完全切除例の手術単独群を対照群,手術+mFOLFOX6療法を試験治療群として試験治療群の臨床的有用性をランダム化比較試験で検討する。肝転移切除+FOLFOX療法の第2相試験はないので,先ず第2相試験を行い,安全性を確認した上で,引き続いて第3相試験を行う。[評価項目]第2相試験:治療群の9コース完遂割合 第3相試験:主評価項目:無再発生存期間  副評価項目:全生存期間,有害事象,再発形式。 [予定登録症例数]第2相部分:A群39例、B群39例,計 78例 第3相部分:第2相部分も合わせて1群150例,計300例 [症例集積期間] 登録開始より3年間

結果と考察
[結果] 本研究計画は平成19年2月にJCOG倫理審査委員会で承認されたが全参加施設でIRBの承認が得られたのは平成20年2月と遅れた。平成21年2月に2相部分79例(試験治療群 39例,対照群 40例)の登録が完了し,同8月に試験治療群の治療が終了した。第2相試験の解析結果を基にプロトコール基準の見直しを行い,患者選択基準,化学療法の減量レベル,有害事象により投与開始基準に当てはまらない場合の休薬期間を改訂した。この改訂案は平成21年11月にJCOG効果・安全性評価委員会で承認された後に参加施設のIRBで審査を受けて試験を再開した。
[考察]研究期間3年の間に登録予定数300例を集積できなかった。その理由の一つに,実際の臨床現場ではevidenceが無いにも拘わらず,切除可能な肝転移例にも抗がん剤治療が行われていて,不適格となる症例が予想よりも多かったことが挙げられる。また大腸がん肝転移切除とその補助療法は現在のトピックスであり,肝転移切除例を対象とした類似の研究が本邦では本試験以外に平成19年,20年の2年間でも9つも行われている。研究参加施設は同時期に複数の類似研究に参加することを避けて,参加している研究の症例登録に全力を傾注することを申し合わせた。
 

結論
 大腸がん肝転移切除に対する補助療法は未だ満足する治療法はない。肝切除後の補助療法としてのFOLFOX療法は手術を行わない進行大腸がんに対する場合と同じで良いものではなく,過大な手術侵襲が伴う大腸がん肝転移切除例に適した改訂プロトコールによる本研究の意義は大きいものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究を計画した平成16年当時,国内では未だFOLOFX療法の経験が無かったために前研究(H16がん臨床-一般-032)で日本人の進行・再発大腸がんを対象としてFOLFOX6療法の第2相試験を行い,その結果から大腸がん肝転移に対する補助療法としてmFOLFOX6療法を採用した。
本研究では肝転移切除例を対象としたmFOLFOX6療法の第2相試験を行って,肝切除という過大な手術侵襲が及んだ症例に対するmFOLFOX6療法における減量基準を策定できた。

臨床的観点からの成果
FOLFOX療法は非手術進行・再発大腸がんの標準治療となっているが,進行・再発大腸がんに於いてさえ至適投与コース数や有害事象発現時の減量基準についての検討はされていない。本研究により大腸がん肝転移切除後の補助療法として安全なmFOLFOX6療法のregimenを提案できた。

ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成20年度厚生労働科学研究・研究成果等一般向け発表会 「進行・再発大腸がんの治療」平成21年2月7日 於 名古屋市
平成21年度厚生労働科学研究・研究成果等一般向け発表会 「大腸がん治療の進歩」 平成22年2月6日 於 名古屋市

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kanemitsu Y, Kato T, Shimizu Y, et al.
A randomized phase 2/3 trial comparing hepatectomy followed bay mFOLFOX6 with hepatectomy alone as treatment for liver metastases from colorectal cancer: Japan Clinical Oncology Group study JCOG0603
Jpn J Clin Oncol , 39 (6) , 406-409  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-