文献情報
文献番号
200925023A
報告書区分
総括
研究課題名
NK細胞腫瘍に対する東アジア多国間治療研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H19-がん臨床・一般-023
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 律朗(名古屋大学医学部 造血細胞移植情報管理・生物統計学)
研究分担者(所属機関)
- 河 敬世(大阪府立母子保健総合健康センター)
- 中村 栄男(名古屋大学大学院医学系研究科 臓器病態診断学)
- 鈴宮 淳司(福岡大学筑紫病院 内科学第二)
- 加納 康彦(栃木県立がんセンター 血液内科)
- 石田 文宏(信州大学医学部 第二内科)
- 山口 素子(三重大学医学部付属病院 血液内科)
- 木村 宏(名古屋大学大学院医学系研究科 微生物学)
- 磯部 泰司(順天堂大学医学部 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
節外性NK細胞リンパ腫(ENKL)は、鼻腔を中心とする節外性臓器に発症する悪性リンパ腫で、腫瘍細胞がP糖タンパクなどの多剤耐性因子を発現することから化学療法抵抗性で、予後不良な難治性リンパ腫である。限局期例に対しては放射線照射療法の工夫により近年予後は改善されつつあるが、進行期および再発・難治例では有効な治療法がないのが現状である。これらのNK細胞腫瘍は日本など東アジア諸国では全悪性リンパ腫の3-8%を占める一方、欧米では1%未満であり、有効な治療法の開発を行うことがわが国を含む東アジア地域に期待されている。我々は香港・韓国・台湾の共同で、エトポシド、L-アスパラギナーゼ、イホスファミド、メトトレキサート、デキサメタゾンからなる新規化学療法レジメン(SMILE療法)を考案した。本研究の目的は、東アジア多国間でENKLに対する最適な治療法を臨床試験で評価することである。
研究方法
本研究ではSMILE療法の第II相試験を行い、SMILE療法2コースの寛解導入療法としての有効性と安全性を評価する。Primary endpointは奏効率 (overall response rate)、secondary endpointsは完全奏効率 (%CR)、1年生存率、初発/再発/難治別の治療効果、再発例での先行レジメン別での治療効果、有害事象発生率とした。登録期間3年で38名の登録を予定した。
結果と考察
登録症例38例の主な背景は年齢16-67歳(中央値47歳)、男:女=21:18、初発IV期21例、初回治療後再発13例、初回治療抵抗例5例であった。29例(74%) がプロトコール治療の2コースを完遂した。総合効果は完全寛解(CR)が15名、部分寛解(PR)が14名、不変(NC) 3名、増悪(PD) 3名であり、早期死亡(ED)は4名であった。Primary endpointである奏効率は74% (90% CI: 60-85%) であり、90%信頼区間の下限は閾値奏功割合の35%を大きく上回った。既存のCHOP療法(奏効率14%)、DeVIC療法(奏効率44%)と比較して、SMILE療法の高い抗腫瘍効果が明らかとなった。
結論
SMILE療法は、未治療IV期、再発・難治の節外性NK/T細胞リンパ腫に対して想定した以上の抗腫瘍効果を示し、これまで標準治療のなかったこのリンパ腫の標準療法と結論された。反面、骨髄抑制をはじめとする毒性も比較的強く、その実施には十分な注意が必要である。
公開日・更新日
公開日
2010-05-24
更新日
-