地域における効果的な薬剤師確保の取組に関する調査研究

文献情報

文献番号
202225036A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における効果的な薬剤師確保の取組に関する調査研究
課題番号
21KC2009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年6月に公表された「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ」では、薬剤師の従事先には地域偏在や業態偏在があり、特に病院薬剤師の確保が喫緊の課題であることが指摘されている。また、平成30年度厚生労働科学研究費補助金「病院における薬剤師の働き方の実態を踏まえた生産性の向上と薬剤師業務のあり方に関する研究」(代表研究者:武田泰生 鹿児島大学附属病院教授)によると、薬学生の就職希望先には、実習、奨学金返済の有無、給与などが影響を与えていることが示唆されており、薬学生の奨学金貸与の実態を調べところ、約40%の学生が貸与を受けている実態などが明らかとなっている。医師においては、医療法及び医師法の一部を改正する法律(平成30年法律第79号)の一部の施行に伴い、地域医療対策協議会において協議の上、都道府県が「キャリア形成プログラム運用指針」を策定することが医療法に規定されており、都道府県が修学資金を貸与した地域枠医師等に対し、キャリア形成プログラムが適用され、都道府県等における医師確保施策に資するものとなっている。
本研究では、薬剤師確保のための行政機関や関係団体の対応の現状を把握するとともに、薬剤師の偏在解消の最終目的は地域住民の健康の保持に寄与することであることを踏まえて、ジェネラリストとしての薬剤師に必要な知識・技能・態度の修得と若手薬剤師の希望に応じた専門性の獲得に資するキャリア形成プログラムの策定を目指した。
研究方法
厚生労働科学研究費補助金「薬剤師の卒後研修カリキュラムの調査研究」(研究代表者:山田清文)の総合研究報告書、日本病院薬剤師会による「令和3年度卒後臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業」実績報告書、厚生労働科学研究費補助金「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」(研究代表者:矢野育子)の総括・分担研究報告書、薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)、各都道府県が提示している医師のキャリア形成プログラムなどを調査した。また、班会議において、昭和大学の臨床研修薬剤師制度、地域偏在に対する石川県の取組状況、医療プロフェッショナリズムの評価方法などについて、それぞれ研究協力者から詳細な説明を受け協議した。これらの検討結果に基づき、薬剤師のキャリア形成プログラム案を構築した。
日本医療薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の後援を受けて、令和5年3月21日(火・祝)13時~16時、ステーションカンファレンス東京会場とWeb会場のハイブリッド様式にて第2回公開シンポジウムを開催した。参加は事前登録制とし、事前登録者には当日の映像を令和5年3月24日から31日までオンデマンド配信した。また、シンポジウム参加者には、シンポジウム終了後にMicrosoft Formsによる事後アンケートへの協力を依頼し、シンポジウムの感想や研究班の活動に関する意見を求めた。
結果と考察
研究班では、「薬剤師不足地域における薬剤師の確保」と「薬剤師不足地域に派遣される薬剤師の能力開発・向上の機会を確保」の両立を図るキャリア形成プログラムの策定を目指した。プログラムの対象は、地域医療介護総合確保基金を活用した修学資金の貸与を受けた薬剤師、地域枠を卒業した薬剤師、地域での従事要件がある地元出身者枠を卒業した薬剤師、その他プログラムの適用を希望する薬剤師とした。プログラムの対象期間は、修学資金の貸与期間の1.5倍以上(目安として6~9年程度)を基本とし、薬剤師の確保を特に図るべき区域等での就業期間はプログラム期間の半分以上とすることとした。ジェネラリスト養成の臨床研修期間が2年~4年で、その後に専門研修や大学院博士課程など、様々なキャリア形成を選択できることとした。研修地域・施設は、原則として都道府県内で勤務することとし(家族の介護等のやむを得ない理由がある場合を除く)、大学病院・中核病院と薬剤師不足の医療機関・薬局をローテーションすることとした。本プログラムの到達目標として、令和4年度改訂版の薬学教育モデル・コア・カリキュラムが掲げた「薬剤師の生涯にわたる到達目標」を共有することで、卒前教育と卒後教育の一貫性を図った。プログラムの構成員として、対象薬剤師、薬剤師不足の病院・薬局、大学病院・基幹病院・基幹薬局、薬科大学・薬学部、学会・職能団体、都道府県の役割を明示し、各構成員が連携して薬剤師のキャリアパス形成をサポートする体制を提案した。令和5年3月21日に開催した公開シンポジウムで薬剤師キャリア形成プログラム(案)を報告し、考案を重ね、成案に至った。
結論
本研究で提案した薬剤師キャリア形成プログラムは、各都道府県が地域の実情に応じた薬剤師確保計画を策定する上で活用され、キャリア形成を通じた薬剤師の確保につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-10-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-10-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202225036B
報告書区分
総合
研究課題名
地域における効果的な薬剤師確保の取組に関する調査研究
課題番号
21KC2009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
安原 眞人(帝京大学 薬学部 地域医療薬学研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年6月に公表された「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ」では、薬剤師の従事先には地域偏在や業態偏在があり、特に病院薬剤師の確保が喫緊の課題であることが指摘されている。本研究では、薬剤師確保のための行政機関や関係団体の対応の現状を把握するとともに、全国の薬科大学・薬学部を対象とするアンケート調査と薬学5・6年生を対象としたWebアンケート調査を実施し、薬剤師の偏在に関係する薬学教育側の要因を探究した。さらに、薬剤師の偏在解消の最終目的は地域住民の健康の保持に寄与することであることを踏まえて、ジェネラリストとしての薬剤師に必要な知識・技能・態度の修得と若手薬剤師の希望に応じた専門性の獲得に資するキャリア形成プログラムの策定を目指した。
研究方法
5・6年生が在籍する全国74の薬科大学・薬学部宛に、薬学生の進路の業種と地域性、業態別求人状況と地域性、実務実習地域との関係、大学の就職支援策(特に薬剤師偏在解消への取組)等を尋ねるアンケート調査票を令和3年11月22日に郵便と電子メールにて送付し、令和4年1月21日までに電子ファイルもしくはFAXで寄せられた回答を集計した。
薬科大学・薬学部アンケート調査と同時に、各薬科大学長・薬学部長宛に在籍する5・6年生を対象とするWebアンケート調査への協力を依頼した。協力大学から該当学年の学生に通知されたQRコードもしくはURLを用いて、学生が任意にMicrosoft Formsのアンケートサイトにアクセスし回答した。Webアンケート調査期間は令和3年11月25日から12月31日までとした。なお、本アンケートの実施に際しては、事前に帝京大学医学系研究倫理委員会の審査を受け承認を受けた(帝倫21-157号)。
公開シンポジウムを令和4年2月27日(日)と令和5年3月21日(火・祝)の2回、対面とWeb会場のハイブリッド方式で開催した。
結果と考察
薬科大学・薬学部へのアンケート調査からは、薬剤師の偏在解消に向けた取組や卒業生に対するフォローアップについて不十分な現状が示された。薬学5・6年生のWebアンケート結果では、多くの学生が薬剤師の地域偏在や業態偏在の問題を認識しており、回答者の30%は薬剤師不足地域の薬局や病院に卒業後直ちに就職する意向ありと回答し、卒業後直ちに病院に就職することを希望しない理由の第1位は給与水準であった。令和4年2月と令和5年3月に公開シンポジウムを開催し、関係団体の偏在問題への対応や先進的な大学や地域での取組について協議し、薬剤師キャリア形成プログラムを策定した。プログラムの対象は、地域医療介護総合確保基金を活用した修学資金の貸与を受けた薬剤師、地域枠を卒業した薬剤師、地域での従事要件がある地元出身者枠を卒業した薬剤師、その他プログラムの適用を希望する薬剤師である。プログラムの対象期間は、修学資金の貸与期間の1.5倍以上(目安として6~9年程度)を基本とし、薬剤師の確保を特に図るべき区域等での就業期間はプログラム期間の半分以上とする。ジェネラリスト養成の臨床研修期間が2年~4年で、その後に専門研修や大学院博士課程など、様々なキャリア形成を選択できる。研修地域・施設は、原則として都道府県内で勤務することとし(家族の介護等のやむを得ない理由がある場合を除く)、大学病院・中核病院と薬剤師不足の医療機関・薬局をローテーションする。プログラムの到達目標として、令和4年度改訂版の薬学教育モデル・コア・カリキュラムが掲げた「薬剤師の生涯にわたる到達目標」を共有することで、卒前教育と卒後教育の一貫性を図った。プログラムの構成員として、対象薬剤師、薬剤師不足の病院・薬局、大学病院・基幹病院・基幹薬局、薬科大学・薬学部、学会・職能団体、都道府県の役割を明示し、各構成員が連携して薬剤師のキャリアパス形成をサポートする体制を提案した。
結論
薬剤師の偏在解消の最終目標が地域住民の健康の保持であるという基本を踏まえつつ、学生や教育現場の現状を把握し、「薬剤師不足地域における薬剤師の確保」と「薬剤師不足地域に派遣される薬剤師の能力開発・向上の機会を確保」の両立を図るキャリア形成プログラムを策定した。薬局、医療機関、大学、職能団体、そして行政・自治体が緊密に連携して、各地域の状況に応じた薬剤師のキャリア形成プログラムを構築することにより、全国あまねく、質の高い薬物治療を提供し国民の健康増進に寄与する薬剤師の養成が可能になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-10-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-10-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202225036C

収支報告書

文献番号
202225036Z