次期制度改正を見据えた医薬品市販後安全対策の再構築に関する研究

文献情報

文献番号
202225034A
報告書区分
総括
研究課題名
次期制度改正を見据えた医薬品市販後安全対策の再構築に関する研究
課題番号
21KC2006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
成川 衛(学校法人北里研究所 北里大学 薬学部臨床医学(医薬開発学))
研究分担者(所属機関)
  • 下川 昌文(山陽小野田市立山口東京理科大学 薬学部薬学科)
  • 前田 英紀(明治薬科大学 レギュラトリーサイエンス研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,430,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、医薬品の市販後安全対策について、欧米等の規制や運用の具体的な状況、我が国における市販後安全対策の現状と問題点を網羅的に調査し、新たな市販後安全対策手法を提案することを目的とした。
研究方法
各研究者が分担して、(1)我が国の市販後安全対策に係る現状把握及び問題点の抽出、(2)欧米における市販後安全対策の規制及びその運用状況に係る調査の研究を進め、その結果に基づいて、(3)新たな市販後安全対策手法の検討及び提案のための準備作業を開始した。
結果と考察
(1) 我が国の市販後安全対策に係る現状把握及び問題点の抽出
アンケート調査は100社から回答を得た。市販後副作用症例報告等の件数(概数)について、15日報告(国内症例)は、先発品企業30社(再審査期間中の先発品6品目以上の承認を有する企業)で中央値1,300件/年であり、30日報告と合わせると年に2,000件程度の個別症例報告を行っていた。これらの企業における15日報告(外国症例)は年間20,000件近くに上っていた。各種安全性情報の安全対策への寄与について、未知・重篤の国内副作用症例情報、外国措置報告情報については「寄与が大きい」という回答が多く、未知・重篤の外国副作用症例情報、感染症定期報告情報については「寄与が小さい」という回答が多く得られた。RMP制度については、RMPと再審査制度を紐づけること、つまり再審査で問題ないと判断された場合に承認条件としてのRMPの策定・実施が解除されることに対して疑問を呈する意見もあった。
市販直後調査については、市販直後に重点的に注意喚起を行うことによる安全対策上のメリットを指摘する回答が複数あった一方で、効能追加等の承認時での実施における有用性に疑問が示す回答があった。また、訪問や情報提供を受ける医療関係者側の負担感への懸念、MRの訪問を前提とすることやMRの訪問率を算出することの意義に対する疑問も呈された。使用成績調査については、従来からの慣例的な情報収集に留まり、安全対策への効果と必要なリソースとのバランスが取れていないことへの問題提起があった。製造販売後データベース調査については、リサーチクエスチョンに適したデータベースがない又は限られること、バリデーションのハードルが高いこと、結果が得られるまでに時間を要し速やかな安全対策につなげることが難しいことなどが課題として挙げられた。
安全対策業務の外部委託について、先発品企業ではほぼ全社が外部委託をしているとの回答であり、委託される業務は多岐にわたっていた。課題として、安全管理業務の再委託が原則禁止となっていることを挙げる回答が多く寄せられた。
ヒアリング調査では、未知・重篤の外国副作用症例報告(15日報告)及び感染症定期報告の実態や報告の意義、安全対策業務の外部委託における課題・問題点、データマイニング手法を用いたシグナル検出の実態や意義、市販後安全対策における医療情報データベース研究の意義などについて、様々な意見を聴取することができた。
製造販売後調査等の結果の公開について、使用成績調査は内資系及び外資系企業24社(売上上位各々12社)中19社(79.2%)、市販直後調査は同16社(66.7%)において、各社のホームページで結果が公開されていた。

(2) 欧米における市販後安全対策の規制と運用状況の調査
外国個別症例の規制当局への報告について、欧州、米国のいずれにおいても、緊急報告(15日)の要件に該当する重篤な副作用については、外国での症例を含めて、個別症例の規制当局への報告を求めている。同一有効成分の医薬品に係る個別症例の報告については、欧州では、自社製品であることが否定できない場合に規制当局への副作用の個別症例報告が求められている。米国では、国内で販売されている製品と同じ有効成分を含む医薬品に係る海外での重篤で予測できない副作用については、添加物、剤形、含量、投与経路、適応症が異なる場合であっても、製造販売業者及び製造業者に対して個別症例の報告を求めている一方、FDA(食品医薬品局)への重複報告を避けるために、他社製品による副作用であることが判明した場合は、FDA宛てではなく当該他社に報告することが推奨されている。
欧州では、後発医薬品についてもRMPが作成されており、EMA(欧州医薬品庁)によるガイダンス文書において、先発品のRMPに準じた形で後発品のRMPを作成する旨の指針が示されている。
結論
欧米との比較を交えつつ、我が国の市販後安全対策に係る現状を把握し、問題事項の抽出を行うことができた。今後、これらの課題を整理し、必要な事項についてはさらなる情報収集を行いつつ、関係者の意見も広く聴取しながら、次期制度改正を見据えた医薬品の市販後安全対策の再構築に向けた提言を取りまとめることとしたい。

公開日・更新日

公開日
2023-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225034Z