治療関連合併症を減少させて同種造血幹細胞移植後の生存率の向上を目指す標準的治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200925019A
報告書区分
総括
研究課題名
治療関連合併症を減少させて同種造血幹細胞移植後の生存率の向上を目指す標準的治療法の開発研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立がんセンター中央病院 特殊病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合虎の門病院 血液科)
  • 松井 利充(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院 輸血部)
  • 神田 善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 鈴木 律朗(名古屋大学医学部 造血細胞いしょく情報管理学)
  • 豊嶋 崇徳(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 日野 雅之(大阪市立大学 血液内科)
  • 池亀 和博(兵庫医科大学 血液内科)
  • 萩原 將太郎(国立国際医療センター 血液内科)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
  • 森 毅彦(慶應義塾大学医学部 血液内科)
  • 緒方 正男(大分大学医学部附属病院 輸血部/血液内科)
  • 金 成元(国立がんセンター中央病院 特殊病棟部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植片対宿主病(GVHD)や感染症などの治療関連合併症を減少させて同種造血幹細胞移植後の生存率の向上を目指す標準的治療法を確立する。
研究方法
抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(ATG)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ホスカルネットナトリウム水和物(FCN)などの薬剤の日本における適応外使用の現状および実際の用法・用量や安全性・有効性に関する情報を明らかにする。また「低用量ATGを用いた非血縁骨髄ミニ移植試験」と「GVHD発症患者における深在性真菌症発症予防試験」の多施設共同臨床試験プロトコールを行う。
結果と考察
MMF、FCNの使用状況全国調査の結果、血縁者間移植のみで300例以上と予想以上に多くの症例で適応外使用されていた。両薬剤とも有害事象は極めて軽微で、高い有効性と安全性が明らかになった。高齢者における臍帯血ミニ移植でMMFを併用することにより早期非再発死亡が減少し生着率が高くなることを明らかにした。ATG の使用状況全国調査の結果、欧米と比較して少量の投与にも関わらず、非血縁骨髄移植後の重症GVHDの頻度は10%以下であった。ATGと真菌症発症予防の多施設共同臨床試験プロトコールは現在、症例登録中である。また同種造血細胞移植患者においても厳格血糖管理により感染症やGVHDが減少することを明らかにし、栄養・血糖管理に関する前向き試験は1試験が終了、2試験が症例登録中である。造血幹細胞移植後のGVHDは人種による差があることが知られており、海外で標準的に用いられているMMF、ATGなどの薬剤も、日本人における有効性、安全性のエビデンスを確立することは重要である。
結論
GVHDや感染症などの治療関連合併症は、同種造血幹細胞移植成績の向上には克服すべき重要な課題である。海外では、ATG, MMF, FCN などの薬剤がGVHDや感染症に対する標準治療として広く用いられているが、我が国では対象患者が年間数千人と少ないため造血幹細胞移植領域での適応拡大が行われる見込みはない。そこで本研究では、これらの薬剤の適応外使用が増加している現状を全国調査により明らかにし、効能追加に直結する臨床研究により我が国独自のエビデンスを確立することにより適応拡大を目指す。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200925019B
報告書区分
総合
研究課題名
治療関連合併症を減少させて同種造血幹細胞移植後の生存率の向上を目指す標準的治療法の開発研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-019
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立がんセンター中央病院 特殊病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合虎の門病院 血液科)
  • 松井 利充(神戸大学大学院医学研究科 内科学講座)
  • 高見 昭良(金沢大学附属病院 輸血部)
  • 神田 善伸(自治医科大学附属さいたま医療センター 血液科)
  • 鈴木 律朗(名古屋大学医学部 造血細胞移植情報管理学)
  • 豊嶋 崇徳(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 日野 雅之(大阪市立大学 血液内科)
  • 池亀 和博(兵庫医科大学 血液内科)
  • 萩原 將太郎(国立国際医療センター 血液内科)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
  • 森 毅彦(慶應義塾大学医学部 血液内科)
  • 緒方 正男(大分大学医学部附属病院 輸血部/血液内科)
  • 金 成元(国立がんセンター中央病院 特殊病棟部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植片対宿主病(GVHD)や感染症などの治療関連合併症を減少させて同種造血幹細胞移植後の生存率の向上を目指す標準的治療法を確立する。
研究方法
抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(ATG)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ホスカルネットナトリウム水和物(FCN)などの薬剤の日本における適応外使用の現状および実際の用法・用量や安全性・有効性に関する情報を明らかにする。また「低用量ATGを用いた非血縁骨髄ミニ移植試験」と「GVHD発症患者における深在性真菌症発症予防試験」の多施設共同臨床試験プロトコールを行う。
結果と考察
MMF、FCN、ATGの使用状況全国調査の結果、予想以上に多くの症例で適応外使用されている現状を明らかにし、高い有効性と安全性を確認した。高齢者における臍帯血ミニ移植でMMFを併用することにより早期非再発死亡が減少し生着率が高くなることを明らかにした。また薬物動態検査も含めた臨床試験によりMMF 1日分3経口投与やDay 30以降のMMF継続・漸減の有用性を明らかにした。ATGと真菌症発症予防の多施設共同臨床試験プロトコールは現在、症例登録中である。また同種造血細胞移植患者においても厳格血糖管理により感染症やGVHDが減少することを明らかにし、栄養・血糖管理に関する前向き試験は1試験が終了、2試験が症例登録中である。
造血幹細胞移植後のGVHDは人種による差があることが知られており、海外で標準的に用いられているMMF、ATGなどの薬剤も、日本人における有効性、安全性のエビデンスを確立することは重要である。
結論
GVHDや感染症などの治療関連合併症は、同種造血幹細胞移植成績の向上には克服すべき重要な課題である。海外では、ATG, MMF, FCN などの薬剤がGVHDや感染症に対する標準治療として広く用いられているが、我が国では対象患者が年間数千人と少ないため造血幹細胞移植領域での適応拡大が行われる見込みはない。そこで本研究では、これらの薬剤の適応外使用が増加している現状を全国調査により明らかにし、効能追加に直結する臨床研究により我が国独自のエビデンスを確立することにより適応拡大を目指す。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
海外では、GVHDや感染症に対する標準治療として広く用いられているミコフェノール酸モフェチル(MMF)、抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(ATG)、ホスカルネットナトリウム(FCN)の我が国における適応外使用の現状を全国調査により明らかにし、効能追加に直結する多施設共同臨床試験を行い、我が国独自のエビデンスを確立することにより適応拡大を目指す。同種造血細胞移植後に厳格血糖管理を行うことにより感染症やGVHDのリスクが減少する可能性について、世界でも初めて報告した。
臨床的観点からの成果
GVHDや感染症などの治療関連合併症は、同種造血幹細胞移植成績の向上には克服すべき重要な課題である。日本におけるMMF、FCN、ATGの使用状況全国調査を行ったところ、予想以上に多くの症例で適応外使用されており、高い有効性・安全性を明らかにした。高齢者に対する臍帯血ミニ移植では、GVHD予防にMMFを併用することより早期非再発死亡の減少と高い生着率が可能となった。薬物動態検査を基にしたMMFによるGVHD予防法確立に関する研究により、1日分3経口投与が有用であることを報告した。
ガイドライン等の開発
2008年7月に日本造血細胞移植学会より公表されたGVHDに関するガイドライン中に、本研究班で行った低用量ATGによるGVHD抑制効果に関する記載がなされた。
その他行政的観点からの成果
近年、FCNやMMFの適応外使用例が急増しており、移植領域での適応拡大が望まれている。FCNの適応拡大について厚労省・PMDAと計5回面談を行い、治験や臨床試験は行わず、本研究の使用状況調査を参考資料として平成22年6月に適応拡大の申請を行う予定である。また本来は治験の枠組みでしか行われなかったPMDAとの対面助言を平成22年1月に行った結果、MMFの全国使用状況調査に加えて、薬物動態検査も含めたMMF予防に関する多施設共同臨床試験を施行した後に適応拡大申請を行う方針となった。
その他のインパクト
平成22年1月31日に行われた公開シンポジウムにおいて、「GVHD・感染症治療薬の同種造血細胞領域での適応拡大を目指して」を報告したところ、出席していた全国骨髄バンク推進連絡協議会理事より、本研究班で取り組んでいるMMFとFCNの早期保険適応に関する要望書が厚生労働大臣へ提出された。平成22年3月31日に行われた厚生労働委員会において、斉藤委員より本件に関する質問がなされた。本研究によりオーファン領域における薬剤の適応拡大承認を促進する新たなモデルシステムを構築することは極めて重要である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
140件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
94件
学会発表(国際学会等)
56件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fuji S, Kim SW, Fukuda T, 他
Decreased insulin secretion in patients receiving tacrolimus as GVHD prophylaxis after allogeneic hematopoietic SCT.
Bone Marrow Transplant , 45 , 405-406  (2010)
原著論文2
Kurosawa S, Fukuda T, Tajima K, 他
Outcome of 93 patients with relapse or progression following allogeneic hematopoietic cell transplantation.
Am J Hematol , 84 , 815-820  (2009)
原著論文3
Fuji S, Kim SW, Fukuda T, 他
Intensive glucose control after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation: a retrospective matched-cohort study.
Bone Marrow Transplant , 44 , 105-111  (2009)
原著論文4
Fuji S, Kim SW, Fukuda T, 他
Positive impact of maintaining minimal caloric intake above 1.0 x basal energy expenditure on the nutritional status of patients undergoing allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Am J Hematol , 84 , 63-64  (2009)
原著論文5
Saito B, Fukuda T, Yokoyama H, 他
Impact of T cell chimerism on clinical outcome in 117 patients who underwent allogeneic stem cell transplantation with a busulfan-containing reduced-intensity conditioning regimen.
Biol Blood Marrow Transplant , 14 , 1148-1155  (2008)
原著論文6
Kim SW, Fukuda T, Teshima T, 他
Reduced-intensity unrelated donor bone marrow transplantation for hematologic malignancies.
Int J Hematol , 88 , 324-330  (2008)
原著論文7
Fuji S, Kim SW, Fukuda T, 他
Preengraftment serum C-reactive protein (CRP) value may predict acute graft-versus-host disease and nonrelapse mortality after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Biol Blood Marrow Transplant , 14 , 510-517  (2008)
原著論文8
Fuji S, Kim SW, Fukuda T, 他
Hyperglycemia during the neutropenic period is associated with a poor outcome in patients undergoing myeloablative allogeneic hematopoietic stem cell transplantation.
Transplantation , 84 , 814-820  (2007)
原著論文9
Maruyama D, Fukuda T, Kato R, 他
Comparable antileukemia/lymphoma effects in nonremission patients undergoing allogeneic hematopoietic cell transplantation with a conventional cytoreductive or reduced-intensity regimen.
Biol Blood Marrow Transplant , 13 , 932-941  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-02
更新日
-