薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究

文献情報

文献番号
202225030A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
課題番号
21KC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 上條 吉人(埼玉医科大学 医学部 臨床中毒学)
  • 根本 透(公衆衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,333,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国の薬物乱用・依存に関する最新状況およびその経年的変化を異なる対象集団に対する全国規模の疫学調査を通じて情報を収集するとともに、大麻や一般用医薬品の乱用といった近年、公衆衛生上の問題が拡大しつつある個別の課題について掘り下げることを目的とした。
研究方法
研究の実施経過:研究計画に基づき、令和4年度は、以下の分担研究課題を実施した。
研究2:飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2022年)
研究3:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022年)
研究4:救急医療における薬物関連中毒症例に関する実態調査:一般用医薬品を中心に
研究5:米国における嗜好用大麻の合法化が邦人留学生の意識・行動に与える影響に関する研究

※なお、次の研究課題は令和3年度に実施済みである。
研究1:薬物使用に関する全国住民調査(2021年)
結果と考察
各研究の結果および考察は、総括・分担研究報告書に記載した。
結論
薬物乱用・依存の実態把握を目的とするモニタリング的な全国調査(中学校における中学生、精神科医療施設を受診する患者)、および一般用医薬品(市販薬)と大麻の乱用問題を掘り下げた研究を実施し、次の結論が得られた。
1. 全国の中学生において、アルコール、タバコ、薬物乱用(有機溶剤、大麻、覚醒剤、危険ドラッグ)のいずれの経験率も前回調査(2018年)に比べて有意に減少したことが確認された。これらの結果は、コロナ禍においてアルコールや薬物乱用といった物質使用を行う中学生が減っていることを示唆している。
2. 全国の精神科医療機関を受診する薬物関連精神障害患者において、睡眠薬・抗不安薬、市販薬の関連精神疾患症例の明らかな増加を認め、特に若年層や女性の増加が特徴的であった。この患者層は、1年以内の薬物使用率が高く、併存精神障害が高率でありながら、治療継続に課題を抱える一群であった。
3. 市販薬過量服用で救急搬送された患者は、「若年」「女性」が多く、メンタルヘルスの不調を抱えながらもどうにか社会生活を送っていて、精神科医療や相談支援等につながっていない若者が自殺手段や不快気分の解消、つらい現状を忘れる方法として市販薬を過量服用している現状が浮かび上がった。自傷・自殺以外の目的での服用も多く、依存の傾向も認められた。
4. 米国カリフォルニア州における大麻合法化により、邦人米国滞在者は日常的に大麻が蔓延している環境におかれている。嗜好目的での大麻使用が合法化し、ディスペンサリーで容易に大麻が購入できる事から、邦人米国滞在者の大麻使用への意識は「個人の自由である」と肯定的であった。合法化に伴い、大麻の普及や日常化が進み、今後邦人滞在者間で大麻使用者が増加する可能性が懸念される。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202225030B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物乱用・依存状況の実態把握と薬物依存症者の社会復帰に向けた支援に関する研究
課題番号
21KC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
  • 上條 吉人(埼玉医科大学 医学部 臨床中毒学)
  • 根本 透(公衆衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、わが国の薬物乱用・依存に関する最新状況およびその経年的変化を異なる対象集団に対する全国規模の疫学調査を通じて情報を収集するとともに、大麻や一般用医薬品の乱用といった近年、公衆衛生上の問題が拡大しつつある個別の課題について掘り下げることを目的とした。
研究方法
研究の実施経過:研究計画に基づき、以下の分担研究課題を実施した。
研究1:薬物使用に関する全国住民調査(2021年)
研究2:飲酒・喫煙・薬物乱用についての全国中学生意識・実態調査(2022年)
研究3:全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022年)
研究4:救急医療における薬物関連中毒症例に関する実態調査:一般用医薬品を中心に
研究5:米国における嗜好用大麻の合法化が邦人留学生の意識・行動に与える影響に関する研究
結果と考察
各研究の結果および考察は、総括・分担研究報告書に記載した。
結論
薬物乱用・依存の実態把握を目的とするモニタリング的な全国調査(15~64歳の一般住民、中学校における中学生、精神科医療施設を受診する患者)、および一般用医薬品(市販薬)と大麻の乱用問題を掘り下げた研究を実施し、次の結論が得られた。
1. 15~64歳の一般住民における違法薬物の生涯経験率(者数)は、大麻1.4%(約128万人)が最も高く、有機溶剤0.9%(約82万人)、危険ドラッグ0.5%(約43万人)、MDMA0.3%(約27万人)、覚醒剤0.3%(約24万人)、ヘロイン0.3%(約23万人)、コカイン0.2%(約22万人)、LSD0.1%(約13万人)と推計された。大麻については、2019年から2021年にかけて過去1年経験者数が増加した(2019年:約9万人、2021年:約13万人)。大麻使用者の過半数は「国内のみ」で使用されていた。使用された形状は、乾燥大麻や大麻樹脂に加えて、ワックス・リキッドタイプ、大麻成分を含有する食品の使用者も報告された。
2. 全国の中学生において、アルコール、タバコ、薬物乱用(有機溶剤、大麻、覚醒剤、危険ドラッグ)のいずれの経験率も前回調査(2018年)に比べて有意に減少したことが確認された。これらの結果は、コロナ禍においてアルコールや薬物乱用といった物質使用を行う中学生が減っていることを示唆している。
3. 全国の精神科医療機関を受診する薬物関連精神障害患者において、睡眠薬・抗不安薬、市販薬の関連精神疾患症例の明らかな増加を認め、特に若年層や女性の増加が特徴的であった。この患者層は、1年以内の薬物使用率が高く、併存精神障害が高率でありながら、治療継続に課題を抱える一群であった。
4. 市販薬過量服用で救急搬送された患者は、「若年」「女性」が多く、メンタルヘルスの不調を抱えながらもどうにか社会生活を送っていて、精神科医療や相談支援等につながっていない若者が自殺手段や不快気分の解消、つらい現状を忘れる方法として市販薬を過量服用している現状が浮かび上がった。自傷・自殺以外の目的での服用も多く、依存の傾向も認められた。
5. 米国カリフォルニア州における大麻合法化により、邦人米国滞在者は日常的に大麻が蔓延している環境におかれている。嗜好目的での大麻使用が合法化し、ディスペンサリーで容易に大麻が購入できる事から、邦人米国滞在者の大麻使用への意識は「個人の自由である」と肯定的であった。合法化に伴い、大麻の普及や日常化が進み、今後邦人滞在者間で大麻使用者が増加する可能性が懸念される。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202225030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の一般住民および中学生における薬物使用の経験率(および経験者数)を推計し、わが国の薬物使用の最新動向を把握することができた。全国の精神科医療施設における薬物使用症患者の最新動向を把握することができた。薬物使用・薬物使用症に関する研究成果は、Journal of the National Institute of Public Health等で公表するとともに、新聞等のメディアでも取り上げられた。
臨床的観点からの成果
薬物使用・薬物使用症に関する研究成果は、薬物依存に係る様々な研修会を通じて、アディクション臨床家の育成に役立てた。
【成果を公表した研修会の例】
依存症治療指導者・依存症相談対応指導者・地域生活支援指導者養成研修(薬物)
薬物依存臨床医師研修・薬物依存臨床看護等研修
認知行動療法の手法を活用した薬物依存症に対する集団療法研修
薬物依存症回復施設職員研修
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
研究代表者は、令和4年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会(厚生労働省)に参考人として参加し、一般用医薬品(市販薬)の乱用・依存に関する研究成果を発表した。この審議を踏まえ「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則第十五条の二の規定に基づき濫用等のおそれのあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品の一部を改正する件」により改正され、濫用等のおそれのある医薬品の範囲が見直された。(令和5年2月8日、薬生発0208第1号)
その他のインパクト
研究代表者は、厚生労働省「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」の企画委員として参画し、薬物問題関連シンポジウム「身近な市販薬・処方薬依存」に出演した。
各種動画コンテンツで研究成果に関連するデータが使われた。
福岡県大麻乱用防止教育用動画「みんなで考えよう!大麻乱用防止教室」~大麻による健康影響編~.「みんなで考えよう!大麻乱用防止教室」~大麻の誘いへの対処編~.
東映「灰色の青空~薬物乱用の背景を見つめて~」
警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課「薬物乱用防止対策啓発映像大麻の誘惑」

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
19件
成果報告会を開催した(2021年度、2022年度)、講演17件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
引土絵未,喜多村真紀,新田慎一郎他
依存症回復支援施設における治療共同体 エンカウンター・グループの意義に関する質的考察
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 57 (6) , in press-  (2022)

公開日・更新日

公開日
2023-08-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
202225030Z