文献情報
文献番号
200925015A
報告書区分
総括
研究課題名
進行胃がんの生存率を向上させる標準的治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
笹子 三津留(兵庫医科大学 外科学)
研究分担者(所属機関)
- 井上 暁(東京都立墨東病院 外科)
- 伊藤 誠二(愛知県がんセンター 消化器外科)
- 岩崎 善毅(東京都立駒込病院 外科)
- 加治 正英(富山県立中央病院 外科)
- 高木 正和(静岡県立総合病院 外科)
- 円谷 彰(神奈川県立がんセンター 消化器外科)
- 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院 外科)
- 福島 紀雅(山形県立中央病院 外科)
- 畑 啓昭(独立行政法人国立病院機構京都医療センター 外科)
- 肥田 圭介(岩手医科大学 外科学講座)
- 川崎 健太郎(兵庫県立がんセンター 消化器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
全体では70%近い治癒率を達成した胃がんにおいて、依然10%程度の5年生存率にとどまっているスキルス胃がん、あるいはそれに準ずる大きな3型胃がんの予後改善。
研究方法
【研究形式】多施設共同の第Ⅲ相ランダム化比較試験(優越性試験)で、主たるエンドポイントは全生存期間。【研究対象】腹腔鏡検査を含めた臨床的検索で遠隔転移を伴わない治癒切除可能な8cm以上の大型3型・4型胃がん症例。【症例登録とランダム割付】JCOGデータセンターで中央登録。 【治療内容】試験治療:術前TS-1+CDDPによる化学療法を2コース施行後、D2郭清を伴う根治手術を行い、術後6週以内よりTS-1単剤による化学療法を約1年実施する。対照群:試験群と同様の手術・術後治療を行う。【予定症例数】予定登録数は316例。【実施施設】JCOG胃がん外科グループに所属する消化器がんの基幹施設38施設。(倫理面への配慮)本人に口答及び文章による説明を行い、文章による同意を得る。説明内容には、試験参加の自由、同意後の撤回の自由、質問の自由、個人情報の扱いなどが含まれる。
結果と考察
【研究結果】本試験は2005年に手術単独と術前化学療法+手術を比較する試験として開始されたが、両群ともに術後補助化学療法を加えた内容に治療を変更して2007年に再開した。2010年3月末までに142例を登録した。21年度では59例を登録した。これまでに手術合併症による死亡はなく、順調に試験は進行している。
【考察】術前化学療法は高いコンプライアンスが特徴で、微小転移のコントロールに期待が寄せられている。一方で無効症例での手術の遅れ、臨床的ステージングの間違いにより必ず一定頻度で治療が不要な患者にまで負担をかけるといった欠点もある。我が国では欧米に比して症例数が5倍以上多く、進行胃がんの全例に入院治療を要する術前化学療法を行う社会的な負担(医療経済)および入退院マネージメントの煩雑さから、現時点では広く進行胃がんを対象とするには時期尚早と考えられている。本試験でかかる治療の有効性が明確となれば、ステージ3胃がんでもより予後の良い対象にも術前化学療法を適応しようとする流れが予想できる。
【考察】術前化学療法は高いコンプライアンスが特徴で、微小転移のコントロールに期待が寄せられている。一方で無効症例での手術の遅れ、臨床的ステージングの間違いにより必ず一定頻度で治療が不要な患者にまで負担をかけるといった欠点もある。我が国では欧米に比して症例数が5倍以上多く、進行胃がんの全例に入院治療を要する術前化学療法を行う社会的な負担(医療経済)および入退院マネージメントの煩雑さから、現時点では広く進行胃がんを対象とするには時期尚早と考えられている。本試験でかかる治療の有効性が明確となれば、ステージ3胃がんでもより予後の良い対象にも術前化学療法を適応しようとする流れが予想できる。
結論
予後不良な大型3型・4型胃がんに対してTS-1+CDDPによる術前化学療法を2コース行う治療は安全に施行でき、今後の生存解析の結果が注目される。
公開日・更新日
公開日
2010-05-24
更新日
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