文献情報
文献番号
202225020A
報告書区分
総括
研究課題名
国際流通する偽造医薬品等の実態と対策に関する研究
課題番号
20KC2002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ‐クウオリティ セキュリティ講座)
研究分担者(所属機関)
- 前川 京子(同志社女子大学 薬学部)
- 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター)
- 髙橋 知里(同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 医薬品分析学研究室)
- Rahman Mohammad(ラーマン モハンマド)(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ-クウォリティセキュリティ)
- Zhu Shu(シュ シュ)(金沢大学 医薬保健学総合研究科 メディ-クウォリティ・セキュリティ講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
1,122,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
COVID-19のワクチンや治療薬の開発と普及に世界が総力を挙げている裏で、偽造品が横行している。日本でコロナ関連薬の偽造品は検知されていないものの、様々な偽造医薬品は個人輸入を通じて侵入している。また、平成29年には国内で「ハーボニー配合錠」の偽造品が卸・薬局を経由し患者に渡った。わが国も決して偽造薬問題を免れていない。そこで国際的な偽造薬犯罪対策、偽造薬による健康被害、個人輸入医薬品の保健衛生実態を明らかにするとともに、偽造薬の監視を高める技術的開発を図る。以て、国民に偽造薬の危険性を啓発・周知し、対策強化に資する調査研究を行う。
研究方法
(1)国際的な偽造医薬品対策の進展:ウェブから文献と情報の収集・整理。
(2)模造医薬品による健康被害に関する調査: PubMedに検索式を適用し2022年3月から2023年3月に掲載された英語論文から模造薬による健康被害を抽出。
(3)個人輸入イベルメクチンの真正性と品質に関する調査:ネット上を流通するコロナ薬からイベルメクチン錠を個人輸入代行サイトを介して購入、真正性と品質を調査。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの非表示含有成分の定量:LC/MSを用いて、2-amino-5-methyl benzoic acidとCetilistat impurity Bについて選択反応モニタリング法による定量系により、1カプセル当たりの含有量を算出。
(5)アナボリックステロイド(AAS)の試買・調査・分析-正規製剤の入手とラマン散乱分光分析-: 42か国の公私機関にメタンジエノン製剤の承認状況を問合せ、入手した正規製剤と試買サンプルのラマン散乱分光分析を超小型ラマン分光器C13560にて実施。
(6)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析:個人輸入サンプル、ポジティブコントロールとメタンジエノン標準製剤について、LC/MS法によりメタンジエノンを定量、また、類縁物質混入の有無を確認するためMET以外のAASを分析。
(2)模造医薬品による健康被害に関する調査: PubMedに検索式を適用し2022年3月から2023年3月に掲載された英語論文から模造薬による健康被害を抽出。
(3)個人輸入イベルメクチンの真正性と品質に関する調査:ネット上を流通するコロナ薬からイベルメクチン錠を個人輸入代行サイトを介して購入、真正性と品質を調査。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの非表示含有成分の定量:LC/MSを用いて、2-amino-5-methyl benzoic acidとCetilistat impurity Bについて選択反応モニタリング法による定量系により、1カプセル当たりの含有量を算出。
(5)アナボリックステロイド(AAS)の試買・調査・分析-正規製剤の入手とラマン散乱分光分析-: 42か国の公私機関にメタンジエノン製剤の承認状況を問合せ、入手した正規製剤と試買サンプルのラマン散乱分光分析を超小型ラマン分光器C13560にて実施。
(6)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析:個人輸入サンプル、ポジティブコントロールとメタンジエノン標準製剤について、LC/MS法によりメタンジエノンを定量、また、類縁物質混入の有無を確認するためMET以外のAASを分析。
結果と考察
(1)国際的な偽造医薬品対策の進展:米国医薬品供給網防衛法、国際刑事警察機構や欧州不正防止局の偽造薬取締、世界保健機関の加盟国メカニズム、並びにCoE医療製品犯罪条約に注目。
(2)模造医薬品による健康被害に関する調査:英語論文450件中、1件の模造医薬品による健康被害を検出した。豪で模造ベンゾジアエピン含有製剤による健康被害が発生した。
(3)個人輸入イベルメクチンの真正性と品質に関する調査: イベルメクチン3mg錠を個人輸入代行9サイトから、13サンプル入手。6サイトは該当製品をCOVID -19治療薬と記載し、5サイトでは口コミ、カスタマーレビューで触れていた。処方箋要求は皆無。8サンプルが真正品と確認された。他の3サンプルが含量、含量均一性または溶出性不適合。蘭仏製は薬価に比べて高額、インド製は安価だった。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの非表示含有成分の定量:1カプセル中の2-amino-5-methyl benzoic acid、Cetilistat Impurity B含有量を定量したところ、2-amino-5-methyl benzoic acidは平均1.3 mg (0.9 %)、Cetilistat Impurity Bは、平均18.8 mg (13%) であった。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析-正規製剤の入手とラマン散乱分光分析-:モルドバで医薬品として承認されていたDANABOL10mg 錠の正規品を入手した。ラマン散乱分析によりコーティングされていない製剤のメタンジエノン定性分析が可能であった。主成分分析により異なる製品は分離することが確認された。ネット上を自由に流通する生理作用の強いAASによる健康被害の発生が懸念された。
(6)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析:抽出法を改良した結果、ポジティブコントロールサンプル中のMET標準品の回収率は、100.7%と算出された。標準製剤であるDANABOLに含まれるMET含量は、101.6%であった。15検体すべてに、METが表示含量の80.6~95.7%の範囲で含まれていた。一方で、MET以外のAASを類縁物質として含有する製品はなかった。
(2)模造医薬品による健康被害に関する調査:英語論文450件中、1件の模造医薬品による健康被害を検出した。豪で模造ベンゾジアエピン含有製剤による健康被害が発生した。
(3)個人輸入イベルメクチンの真正性と品質に関する調査: イベルメクチン3mg錠を個人輸入代行9サイトから、13サンプル入手。6サイトは該当製品をCOVID -19治療薬と記載し、5サイトでは口コミ、カスタマーレビューで触れていた。処方箋要求は皆無。8サンプルが真正品と確認された。他の3サンプルが含量、含量均一性または溶出性不適合。蘭仏製は薬価に比べて高額、インド製は安価だった。
(4)インターネットで購入した痩身薬Zenigalの非表示含有成分の定量:1カプセル中の2-amino-5-methyl benzoic acid、Cetilistat Impurity B含有量を定量したところ、2-amino-5-methyl benzoic acidは平均1.3 mg (0.9 %)、Cetilistat Impurity Bは、平均18.8 mg (13%) であった。
(5)アナボリックステロイドの試買・調査・分析-正規製剤の入手とラマン散乱分光分析-:モルドバで医薬品として承認されていたDANABOL10mg 錠の正規品を入手した。ラマン散乱分析によりコーティングされていない製剤のメタンジエノン定性分析が可能であった。主成分分析により異なる製品は分離することが確認された。ネット上を自由に流通する生理作用の強いAASによる健康被害の発生が懸念された。
(6)LC/MS法を用いたメタンジエノン定量法の構築と個人輸入製品の分析:抽出法を改良した結果、ポジティブコントロールサンプル中のMET標準品の回収率は、100.7%と算出された。標準製剤であるDANABOLに含まれるMET含量は、101.6%であった。15検体すべてに、METが表示含量の80.6~95.7%の範囲で含まれていた。一方で、MET以外のAASを類縁物質として含有する製品はなかった。
結論
COVID-19 関連製品をはじめ、多くの偽造医療製品が押収され、国際的な対策強化が続いていた。個人輸入代行サイトで購入したイベルメクチン製剤は、保健衛生上の問題を有していた。ラマン散乱分光分析の定性分析の有用性並びにLC/MSが偽造薬や未知製剤に含有される成分の同定、定量に有用であることを証明した。医薬品や生理活性物質の個人輸入は保健衛生上問題があることから控えるべきである。
公開日・更新日
公開日
2023-07-14
更新日
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