文献情報
文献番号
202225019A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器(安全性等の評価方法)に関する国際標準化
課題番号
22KC5001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山本 栄一(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究分担者(所属機関)
- 山岡 哲二(国立循環器病センター研究所先進医工学センター 生体工学部)
- 岩崎 清隆(早稲田大学 フューチャーインスティチュート)
- 野村 祐介(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
- 岡本 吉弘(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
150,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
コロナウィルス等の感染症対策用として、近い将来の実用化が近いマイクロニードル及び再生医療の補完機能を果たす医療機器として、本邦での実用化が期待される脱細胞化生体組織等の二つの革新的な医療機器について、安全性・有効性・品質に関する評価方法を開発する。さらに近い将来の先行主導的な国際標準を獲得に向けて、グローバルな開発状況や特許の状況を調査する。
研究方法
B-1. 安全性等の評価方法の開発:マイクロニードルの評価方法に関する研究(担当:岡本吉弘)
穿刺性能に影響すると思われる要因を把握することを目的として、マイクロニードルと対象物である皮膚の物理特性の確認およびマイクロニードルの穿刺状況を確認するための評価法について基礎的検討を実施する。
B-2. 安全性等の評価方法の開発:脱細胞化生体組織を活用して再生医療の補完機能を果たす医療機器に関する研究
(担当:野村祐介、岩崎清隆、山岡哲二)
脱細胞化生体組織を活用した医療機器について、再生医療補完技術として実用化を図るために、当該医療機器の品質、有効性、安全性評価法を開発すると共に、将来的な国際標準獲得に向けた基礎データを収集する。
B-3. 特許および開発状況の調査(担当:山本栄一)
革新的な医療機器や技術の特許、標準化および開発状況を外部の調査機関等を使って調査する。
B-4. 国内関係機関との連携の強化・推進(担当:山本栄一)
国際標準獲得を目的として、国内関係機関との連携強化を図りつつ、コンソーシアムの形成を目指す。
穿刺性能に影響すると思われる要因を把握することを目的として、マイクロニードルと対象物である皮膚の物理特性の確認およびマイクロニードルの穿刺状況を確認するための評価法について基礎的検討を実施する。
B-2. 安全性等の評価方法の開発:脱細胞化生体組織を活用して再生医療の補完機能を果たす医療機器に関する研究
(担当:野村祐介、岩崎清隆、山岡哲二)
脱細胞化生体組織を活用した医療機器について、再生医療補完技術として実用化を図るために、当該医療機器の品質、有効性、安全性評価法を開発すると共に、将来的な国際標準獲得に向けた基礎データを収集する。
B-3. 特許および開発状況の調査(担当:山本栄一)
革新的な医療機器や技術の特許、標準化および開発状況を外部の調査機関等を使って調査する。
B-4. 国内関係機関との連携の強化・推進(担当:山本栄一)
国際標準獲得を目的として、国内関係機関との連携強化を図りつつ、コンソーシアムの形成を目指す。
結果と考察
C-1. 安全性等の評価方法の開発:マイクロニードルの評価方法に関する研究(担当:岡本吉弘)
マイクロニードルの穿刺の評価法に関する検討:走査型触覚顕微鏡による穿刺状態の観察法、マイクロX線コンピュータートモグラフィー及び超音波画像診断装置によるマイクロニードルの穿刺性能の定量的評価法、穿刺時の皮膚変形、皮膚粘弾性の評価法、刺入方法が皮膚組織に与える荷重負荷の評価法等を開発した。
C-2. 安全性等の評価方法の開発:脱細胞化生体組織を活用して再生医療の補完機能を果たす医療機器に関する研究
(担当:野村祐介、岩崎清隆、山岡哲二)
再生医療の補完機能を果たす医療機器を想定し、脱細胞化生体組織等の表面固定化分子と増殖因子の相互作用の評価法、脱細胞化生体組織中のアレルギー物質の評価法(添付資料6)、さらに製造工程での抗原の除去法や脱細胞化生体組織の滅菌法を検討している。また、生体内での組織再生を促進させる核酸アプタマーを含む高分子材料を開発した。
C-3. 特許および開発状況の調査(担当:山本栄一)本事業の対象としているマイクロニードル及び脱細胞化組織について、国内外の取組状況、国際標準化の動向、特許等について調査を実施し結果、マイクロニードル及び脱細胞化組織ともに、基本的には製造方法、品質検査関連が多く、性能評価に係る試験・評価法の特許は皆無であった。
マイクロニードルについては、美容用途で実用化が先行している韓国が主導して低所得国へのマイクロニードルを用いたワクチンの普及促進を目指しており、製造方法や品質試験法のほか、皮膚への穿刺性能評価についても国際標準化が進展する可能性があるが、国内企業等のヒアリングの結果、最も重要な穿刺性能を定量的に評価する方法がなく、動物試験及び臨床試験による薬物動態の評価に頼っていることが判明した。このような背景から、非臨床試験において、穿刺状況および穿刺に影響する要素の定量的な評価法の開発と標準化が強く求められている。
脱細胞化組織においては、各国の規制対応(医薬品、再生医療、医療機器等)が異なるものの、その基本特性に関してISOやASTMでは国際規格の策定に高い関心がうかがえた。ASTMにおいては、脱細胞化組織における諸々の問題点が記載されているが、各因子が、どのような影響を及ぼすかの因果関係が不明であることが多く、科学的なエビデンスが少ない領域であることが判明した。FDAの国際標準化調整機関のプログラムにおいては非臨床試験に係る7つの課題が挙げられているものの、具体的な要求特性は示されておらず、国際規格においても評価法は未整備であることが判った。
C-4. 国内関係機関との連携の強化・推進(担当:山本栄一)
企業や大学との協働体制を構築し、機関毎に共同研究や情報交換に取り組んだ。なお、事業が単年度であったため、コンソーシアムの結成は見送った。
マイクロニードルの穿刺の評価法に関する検討:走査型触覚顕微鏡による穿刺状態の観察法、マイクロX線コンピュータートモグラフィー及び超音波画像診断装置によるマイクロニードルの穿刺性能の定量的評価法、穿刺時の皮膚変形、皮膚粘弾性の評価法、刺入方法が皮膚組織に与える荷重負荷の評価法等を開発した。
C-2. 安全性等の評価方法の開発:脱細胞化生体組織を活用して再生医療の補完機能を果たす医療機器に関する研究
(担当:野村祐介、岩崎清隆、山岡哲二)
再生医療の補完機能を果たす医療機器を想定し、脱細胞化生体組織等の表面固定化分子と増殖因子の相互作用の評価法、脱細胞化生体組織中のアレルギー物質の評価法(添付資料6)、さらに製造工程での抗原の除去法や脱細胞化生体組織の滅菌法を検討している。また、生体内での組織再生を促進させる核酸アプタマーを含む高分子材料を開発した。
C-3. 特許および開発状況の調査(担当:山本栄一)本事業の対象としているマイクロニードル及び脱細胞化組織について、国内外の取組状況、国際標準化の動向、特許等について調査を実施し結果、マイクロニードル及び脱細胞化組織ともに、基本的には製造方法、品質検査関連が多く、性能評価に係る試験・評価法の特許は皆無であった。
マイクロニードルについては、美容用途で実用化が先行している韓国が主導して低所得国へのマイクロニードルを用いたワクチンの普及促進を目指しており、製造方法や品質試験法のほか、皮膚への穿刺性能評価についても国際標準化が進展する可能性があるが、国内企業等のヒアリングの結果、最も重要な穿刺性能を定量的に評価する方法がなく、動物試験及び臨床試験による薬物動態の評価に頼っていることが判明した。このような背景から、非臨床試験において、穿刺状況および穿刺に影響する要素の定量的な評価法の開発と標準化が強く求められている。
脱細胞化組織においては、各国の規制対応(医薬品、再生医療、医療機器等)が異なるものの、その基本特性に関してISOやASTMでは国際規格の策定に高い関心がうかがえた。ASTMにおいては、脱細胞化組織における諸々の問題点が記載されているが、各因子が、どのような影響を及ぼすかの因果関係が不明であることが多く、科学的なエビデンスが少ない領域であることが判明した。FDAの国際標準化調整機関のプログラムにおいては非臨床試験に係る7つの課題が挙げられているものの、具体的な要求特性は示されておらず、国際規格においても評価法は未整備であることが判った。
C-4. 国内関係機関との連携の強化・推進(担当:山本栄一)
企業や大学との協働体制を構築し、機関毎に共同研究や情報交換に取り組んだ。なお、事業が単年度であったため、コンソーシアムの結成は見送った。
結論
コロナウィルス等の感染症対策用として近い将来の実用化が期待されているマイクロニードルアレイ(MNA)、及び脱細胞化生体組織をはじめとした再生医療の補完機能を果たす医用材料の二つの革新的な医療機器について、安全性・有効性・品質に関する評価方法を開発した。先行主導的に国際標準を獲得するための、特許出願に繋がる成果を得た。
公開日・更新日
公開日
2023-06-05
更新日
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