がん患者や家族が必要とする社会的サポートやグループカウンセリングの有用性に関する研究

文献情報

文献番号
200925008A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者や家族が必要とする社会的サポートやグループカウンセリングの有用性に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
保坂 隆(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松島 英介(東京医科歯科大学大学院心療・緩和医療学分野)
  • 河瀬 雅紀(京都ノートルダム女子大学心理学部心理学科)
  • 下妻 晃二郎(立命館大学理工学部化学生物工学科)
  • 堀 泰祐(滋賀県立成人病センター)
  • 所 昭宏(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 長谷川 聡(北海道医療大学看護福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の心のケアにも均てん化が必要である。本研究では,特に心のケアの方法論の開発とその意義を明確化することを目的とする。
研究方法
本研究の2年間で,「がん患者へのグループ療法ファシリテーターの養成講座」を実施してきたので,本年度は「患者・家族・医療者のためのがんカウンセラー養成講座」を試行した。この養成講座は,2時間半ずつのレッスンを3回1日で行うものである。また,乳癌術後患者に対する「心理社会的グループ療法」の介入効果を,心理社会的機能と医療経済面から検証した。
結果と考察
質問票のスコアの平均点は,有意に増加し,この養成講座には,一定の知識としての教育効果があることがわかった。一方,心理社会的グループ療法」の介入結果は,医療経済的な効果は得られなかったがグループ療法の心理社会的な効果は明らかになった。
本研究では,がん患者と家族に対する心のケアの具体例として,グループ療法をベースにしてその対象を拡大して,介護家族やグリーフワークへの応用を試行している。また,患者・家族に調査票を配布し,患者と家族の認知度の比較をした。患者-家族間では,身体面や機能面などの観察可能な側面は比較的に一致度が高く,心理面やスピリチュアリティなど観察困難で主観的な側面は一致度が低かった。患者-家族間のQOL評価の一致を促すような支援的介入,および,両者間のQOL評価の一致度に影響を与える要因を同定するための更なる研究の必要性が示唆された。
結論
同じ境遇や状況の者同士が支え合う力を期待したグループ療法はQOLを向上させることはわかったが,医療経済的にまでの影響は検証できなかった。1対1で行うカウンセリングも,医療者だけでなく,家族やピアカウンセラーにとっても,必要なスキルがある。そのためのカウンセラー養成講座を開催したが,カリキュラムの修正などが今後は望まれる。「心のケアの均てん化」への道はまだ続くことになる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200925008B
報告書区分
総合
研究課題名
がん患者や家族が必要とする社会的サポートやグループカウンセリングの有用性に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
保坂 隆(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松島 英介(東京医科歯科大学大学院)
  • 河瀬 雅紀(京都ノートルダム女子大学心理学部)
  • 下妻 晃二郎(立命館大学理工学部化学生物工学科)
  • 堀 泰祐(滋賀県立成人病センター)
  • 所 昭宏(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 長谷川 聡(北海道医療大学看護福祉学部)
  • 森山 未知子(広島大学保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の心のケアにも均てん化が必要である。本研究では,特に心のケアの方法論の開発とその意義を明確化することを目的とする。
研究方法
全国のがん診療連携拠点病院を対象に、がん患者・家族の心理的サポート体制について実態調査を行った。結果、がん患者又は家族へのカウンセリングは約半数の病院で看護師や臨床心理士、MSWらによって行われていたが、グループ療法や自助グループ、患者会/家族会の実施割合は低かった。できない理由として、9割の病院が「専門スタッフ又はトレーニングを受けたスタッフがいない」ことを挙げた。同時に、グループ療法が提供できないことの患者・家族への不利益は多くの病院で認識されていた。そこで,本研究の骨格として,「がん患者へのグループ療法ファシリテーターの養成講座」を実施した。また最終年度には「患者・家族・医療者のためのがんカウンセラー養成講座」を試行した。いずれの養成講座も,2時間半ずつのレッスンを3回,1日で行うものである。
並行して,乳癌術後患者に対するグループ療法の介入効果を,心理社会的機能と医療経済面から検証した。
結果と考察
「グループ療法ファシリテーターの養成講座」も,「がんカウンセラー養成講座」も,サイコオンコロジーに関する知識を問う質問票のスコアは,講座出席により有意に増加し,この養成講座には,一定の教育効果があることがわかった。一方,心理社会的グループ療法」の介入結果は,医療経済的な効果は得られなかったがグループ療法の心理社会的な効果は明らかになった。
本研究では,がん患者と家族に対する心のケアの具体例として,グループ療法をベースにしてその対象を拡大して,介護家族やグリーフワークへの応用を試行した。また,患者・家族に調査票を配布し,患者と家族の認知度の比較をした。患者-家族間では,身体面や機能面などの観察可能な側面は比較的に一致度が高く,心理面やスピリチュアリティなど観察困難で主観的な側面は一致度が低かった。患者-家族間のQOL評価の一致を促すような支援的介入,および,両者間のQOL評価の一致度に影響を与える要因を同定するための更なる研究の必要性が示唆された。
結論
さまざまなレベル,特にグループ両方を中心に心のケアの方法の確立とその実効性を検証してきた。依然として解決すべき問題は多く,「心のケアの均てん化」への道はまだ続く。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん患者のためのグループ療法のファシリテーター養成講座を修正を加えながら,計1,200名ほどの医療者が受講した。ファシリテーターには,「予測・理解・調整・分析」などから成る「人間関係力」と,「司会・説明・統率」などから成る「司会進行力」が望ましいことがわかった。このグループ療法にはQOLを高める効果があるも,医療経済的には影響を与えていないことがわかった。
臨床的観点からの成果
約1,200名の受講者は,条件が許せば各施設でがん患者のためのグループ療法を施行していくだろう。また,対象を家族や遺族にも拡大していける可能性を示すことができた。一方で,医療者だけでなく,患者同士あるいは家族による「がんカウンセラー養成講座」も施行したので,今後の修正によりプログラムの改良が望まれる。
ガイドライン等の開発
がん患者のためのグループ療法のファシリテーター養成講座も改訂を重ねて,最終的には約90ページから成るテキストと,スライドと,実際の講座を収録したDVD3枚組と,実際にグループ療法で使用できるリラクセーションDVDを作成した。今後はこれらの媒体を用いた研修方法も可能になってきた。
その他行政的観点からの成果
でがん患者のためのグループ療法が患者のQOLを高めることは諸外国だけでなく本邦でも,本研究でも再確認された。約1,200名の受講者は,今後,診療報酬化などの状況になれば,各施設で即座にがん患者のためのグループ療法を施行していくことができる。また,ピアカウンセリングの質の担保を保証するような,がんカウンセラー養成講座への発展も見えてきた。
その他のインパクト
HP(http://hosaka-liaison.jp/)を作成し,研究成果をいあっパンに公開した。また,「グループ療法にも診療報酬化を」というタイトルで朝日新聞に掲載された。各地域で開催したファシリテーター養成講座は,それぞれの地域の新聞などに紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
10件
*保坂 隆:がん患者のためのグループ療法のファシリテーター養成講座の実際と意義。総合病院精神医学20: 156-163, 2008
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
20件
各地域でのファシリテーター養成講座の開催

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
保坂 隆
がん患者のためのグループ療法のファシリテーター養成講座の実際と意義
総合病院精神医学 , 20 , 156-163  (2008)
原著論文2
中村千珠,河瀬雅紀,保坂 隆
がん診療連携拠点病院における心理社会的サポート。
総合病院精神医学 , 20 , 129-138  (2008)
原著論文3
保坂 隆
グループ療法のファシリテーター養成講座の実際と意義
緩和医療学 , 10 , 56-61  (2008)
原著論文4
森さとこ,森山美知子,保坂 隆
がん診療連携拠点病院におけるがん患者・家族のサポート体制に関する実態調査
緩和医療学11: 141-148, 2009 , 11 , 141-148  (2009)
原著論文5
保坂 隆
がん患者やその家族に対する社会的サポートやグループカウンセリングに関する研究について
緩和医療学 , 11 , 367-372  (2009)
原著論文6
石川和穂,松島英介
終末期がん患者と家族介護者による患者のQOL評価の一致の重要性:家族は患者のQOLをどのくらい正確に評価できるのか
精神科 , 11 (1) , 68-72  (2007)
原著論文7
久村和穂、松島英介、永井英明
緩和ケアをうけるがん患者と家族介護者による患者のQOL評価の一致の検討
総合病院精神医学 , 20 (2) , 139-148  (2008)
原著論文8
中村千珠、河瀬雅紀
がん患者への心理的サポートプログラム作成に向けての基礎的研究-患者の現状とニーズの把握-
心身医学 , 47 (2) , 111-121  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-01
更新日
-