文献情報
文献番号
202225018A
報告書区分
総括
研究課題名
若年者を対象としたより効果的な薬物乱用予防啓発活動の実施等に関する研究
課題番号
20KC2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(公益財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センター)
研究分担者(所属機関)
- 河井 孝仁(東海大学 文化社会学部広報メディア学科)
- 鈴木 順子(北里大学薬学部)
- 関野 祐子(東京大学大学院薬学系研究科ヒト細胞創薬学寄付講座)
- 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
- 舩田 正彦(湘南医療大学 薬学部)
- 森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
- 山本 経之(長崎国際大学 薬学部 薬理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本の薬物乱用状況は欧米等と比較すれば非常に低い割合となっている。しかし、近年、薬物をとりまく状況は、カナダで大麻の合法的な嗜好目的使用が可能になったり、インターネットにおいて薬物に関する様々な情報を容易に入手できるようになったり、大きく変化してきている。現在、薬物乱用防止教育が学校において広く行われるなど、国内の様々な機関が連携して薬物乱用防止に努めているが、日本の若者で大麻の乱用が増加しているおそれがあり、また、このような若者が今後、大麻を継続的に乱用したり、大麻から他の薬物の乱用につながったりすることにより、将来、日本で薬物の乱用がさらに進むことが危惧されている。また、大麻草に由来する成分を含む医薬品が欧米で承認されるなど、大麻草由来の成分であっても医療で活用されているものがあり、日本でも、このようなエビデンスを踏まえた大麻由来成分の規制等が望まれている。
このような状況に対応するため、これまで、先行研究「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」では、大麻に関する情報収集や、地域における効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、その成果は小冊子としてまとめられ活用されている。しかしながら、現在においても、以下のような課題がある。
(1)大麻由来成分の医療での有用性等を含め、大麻に関する様々な研究開発が継続的になされており、それを収集し、根拠に基づく施策の立案等に活用していく必要がある
(2)例えばカナダの大麻規制の変更は若者における大麻乱用の防止等が目的とされているが、規制変更後、実際にどのような社会的影響を与えているか等、外国の状況を継続的に情報収集する必要がある
(3)若者を対象とした、より効果的な予防啓発方法を検討し、実施する必要がある
これらに取り組み、日本の若者による大麻等の薬物の乱用を予防していくことを本研究の目的とする。
このような状況に対応するため、これまで、先行研究「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」では、大麻に関する情報収集や、地域における効果的な予防啓発の実施等に関する研究が行われ、その成果は小冊子としてまとめられ活用されている。しかしながら、現在においても、以下のような課題がある。
(1)大麻由来成分の医療での有用性等を含め、大麻に関する様々な研究開発が継続的になされており、それを収集し、根拠に基づく施策の立案等に活用していく必要がある
(2)例えばカナダの大麻規制の変更は若者における大麻乱用の防止等が目的とされているが、規制変更後、実際にどのような社会的影響を与えているか等、外国の状況を継続的に情報収集する必要がある
(3)若者を対象とした、より効果的な予防啓発方法を検討し、実施する必要がある
これらに取り組み、日本の若者による大麻等の薬物の乱用を予防していくことを本研究の目的とする。
研究方法
研究目的を達成するために、7つの分担研究を組織して基礎研究、調査研究および啓蒙活動を行った。
結果と考察
若年者の不安と相談意欲についてのアンケート調査の結果、大麻乱用防止にとって多様な不安を持つ若年者を地域の支援力と繋ぐことの意義を確認し、地方自治体等が参照できる広報のガイドブック作成に繋がる重点事項を明確にすることができた。また、薬物乱用防止活動を担うことのできる人材としての薬局薬剤師を対象としたセミナーや講演等を実施してきたが、令和4年度はこれまでの実績を踏まえて、薬剤師の教育を加速させるための活動指針を作成し、各学習の機会に達成すべき観点を明示することで一貫性のある学びの誘導ができた。一方、大麻を巡る米国及びカナダの規制状況について調査してきたが、本年度の米国のMMLsは令和3年度の調査結果と同様に37州+コロンビア特別区で認められ、MMLsが導入されていない13州ではカンナビジオールの所持・使用を認めていた。各州政府は、連邦政府で決定した法律や大麻産業界のガイドラインを州単位の責任で運用していた。また、論文等の調査により,育種によるTHC,CBD以外のカンナビノイドの増強された大麻品種の改良やマイナーカンナビノイド生産をバイオ企業が進めていることが明らかとなった。また, THCおよびhexahydrocannabinol(HHC)のアセチル化体を含有する製品を調査した結果,ともに電子タバコカートリッジ用のリキッド製品が多ことが明らかとなった。さらに大麻による脳の機能変化と脳部位としての海馬と線条体の神経活動変容との相関性等に焦点を当て追究・総括した。ここで得られた新たな知見は、大麻の乱用防止/予防的介入や医薬品開発に関する情報を提供し、今後の研究の方向性を示すものと期待される。一方、ラット胎仔由来凍結海馬神経細胞を使ったin vitro アッセイ法により合成カンナビノイドの発達期神経毒性を評価し、高濃度の合成カンナビノイド慢性投与が発達期特有の神経細胞死をもたらすことを見出し(令和2年、3年)、令和4年度にはCB1, CB2受容体阻害薬が神経細胞死を増強し、細胞死が軽減しないことをみいだした。また、THCの感覚がGABAA-受容体を介して作用を惹起する抗不安薬を摂取した際に得られる感覚に最も近いことを昨年度までに示したが、本年度は各種オピオイド受容体作動薬やsigma1-受容体作動薬ならびにphencyclidineも全く般化を示さないが、カチノン系の薬物に分類されるMDMAおよびmethamphetamineはTHCの弁別刺激効果に対して一部感覚の類似性を示すことが判明した。
結論
各分担研究者が研究計画に沿って基礎研究、調査研究および啓蒙活動を行い、有用な知見を得ることができた。それらの知見を適切に活用することによって本研究目的が達成されるものと期待される。
公開日・更新日
公開日
2023-08-23
更新日
-