法規制薬物の分析と鑑別等の手法開発に向けた研究

文献情報

文献番号
202225015A
報告書区分
総括
研究課題名
法規制薬物の分析と鑑別等の手法開発に向けた研究
課題番号
22KC1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
  • 三澤 隆史(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 緒方 潤(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,麻薬・向精神薬取締法,覚せい剤取締法,大麻取締法及びあへん法などで厳しく規制される薬物及び植物の効果的な鑑別法を薬物取締行政に提示するために実施する.令和5年3月時点で,医薬品医療機器等法下,指定薬物として規制されている薬物は2420種類となった.また,指定薬物から麻薬に規制強化された薬物は72種類にも及ぶ.これら薬物は,所持・使用が禁止されているが,構造類似体が多く存在し,また,ほとんどの薬物において代謝物情報が未知であるため,特に,生体試料中薬物の鑑別は困難を極めている.そこで,この研究では,主に生体試料中規制薬物及び代謝物の迅速で高感度,かつ選択性の高い鑑別法開発に焦点をあて,新規に開発された質量分析装置等を用いた検討を行う.また乱用される植物について,成分分析及び遺伝子分析による鑑別法の開発を行う.以上,本研究は,法規制薬物及び植物について効果的な鑑別を行うための手法を確立することを目的としている.
研究方法
Dextromethorphanもしくはエナンチオマーのlevomethorphanを投与したラット毛髪試料等を用いて,SFEの条件検討を行い,キラルカラムを用いたLC-MS/MSによる摂取識別法の検討を行った.大麻尿試験においてGC注入口で誘導体化するIPD-TMS誘導体化法の検討を行った.また,CBD代謝物の-7COOH-CBD,7-OH-CBD及び大麻尿鑑定の主な対象物質であるTHC-COOHを対象物質としTHC-COOHとCBD代謝物を識別可能な大麻尿試験法について検討を行った.インターネット上等で流通するTHCアナログの含有を標榜する製品の流通実態調査を行い,THCのアルキル側鎖の長さが異なる化合物を製品より単離精製した.∆9-THCおよび∆8-THCを効率的かつ高純度に合成できるルートの検討を行い, 高純度標準品の確保を目指した. また, 合成化合物のカンナビノイド受容体への親和性評価をコンピュータモデリングで行なった. 大麻草のテルペン合成酵素遺伝子の多様性に着目し,テルペン合成酵素遺伝子の配列情報を用いた大麻種の判別法を検討するために遺伝子を取得し,配列情報の調査を行った.
結果と考察
法規制薬物の鑑別に関する研究では,dextromethorphanもしくはエナンチオマーのlevomethorphanを投与したラット毛髪試料等を用いて,SFEの条件検討を行い,キラルカラムを用いたLC-MS/MSによる摂取識別法の検討を行った.その結果SFEによる前処理法は1試料につき1時間半程度で可能であり,毛髪中の薬物及び代謝物を高効率かつ簡便に検出・識別可能であった.大麻尿試験においてGC注入口で誘導体化するIPD-TMS誘導体化のためのGC注入口条件を検討し,注入口温度を250℃,スプリット比を1:1,試料溶媒にアセトニトリルを用いる条件を設定した.この条件で,IPD-TMS誘導体化は従来の加熱法と同等の反応効率を有し,IPD-TMS誘導体化で試験時間を大幅に短縮できることが示唆された.また,IPD-TMS誘導体化法を用いた大麻尿試験法の添加回収試験では7-OH-CBDが39.3%,7-COOH-CBDが47.6%,THC-COOHが103.5%となり,低濃度の大麻尿に対しても本法は対応可能であることが示唆された.THCVの含有を標榜する製品からΔ8-THCVとΔ9-THCV,THCBの含有を標榜する製品からΔ8-THCBとΔ9-THCBと,THCHの含有を標榜する製品からΔ8-THCHとΔ9-THCHを同定した.∆9-THCおよび∆8-THCの効率的かつ高純度の合成法の検討の結果,CBDを出発原料とし,環化反応の反応条件が100℃下では∆8-THC,-40℃下では∆9-THCが優先的に合成されることを明らかにし,それぞれの化合物を分析用標品として提供した.また,∆8-THCおよび∆9-THCのコンピューモデリング計算結果では,計算に用いたCB1受容体-AM11542複合体中の,カンナビノイド誘導体AM11542と同様に結合し,CBDと比較して∆8-THCおよび∆9-THCは同程度の結合力を示すことが示唆された.
法規制植物の鑑別に関する研究では,大麻8試料から2種のテルペン合成酵素遺伝子断片を単離し,その配列比較を行った結果,各遺伝子はイントロン領域に大きく違いが見られ,それぞれ2つのタイプに分離された.
結論
本研究は,厚生労働省の薬物取締行政に直接貢献する研究であり,国の乱用薬物対策に即したものである.また今後出現しうる新規の乱用薬物の鑑別についても有用であると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,400,000円
(2)補助金確定額
5,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,400,824円
人件費・謝金 0円
旅費 628,661円
その他 370,515円
間接経費 0円
合計 5,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-07
更新日
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