地域共生社会における薬剤師の対物・対人業務の充実に関する調査研究

文献情報

文献番号
202225013A
報告書区分
総括
研究課題名
地域共生社会における薬剤師の対物・対人業務の充実に関する調査研究
課題番号
22KC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
入江 徹美(国立大学法人 熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 香陽子(北海道科学大学 薬学部薬学科薬学教育学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤師・薬局業務のICTへの対応や機械化に加え、昨今の新たな感染症への対応等により、医療提供体制は急速に変化している。こうした変化に柔軟に対応し、地域住民に真に必要とされる医療を提供するためには、薬剤師職能の深化・伸展が必要である。薬剤師が地域包括ケアシステムに積極的に貢献するためには、対物業務の効率化と対人業務の充実が不可欠であり、医療安全の確保を前提に薬剤師業務を見直す必要がある。
本研究では、令和4年度に、アンケート調査や個別インタビューを通して、国内外における薬剤師・薬局の対物業務および対人業務に関する実態を把握し、薬剤師・薬局の対物業務の効率化に関する標準的な調剤業務様式・管理手順書案を作成する。令和5年度には、前年度に作成した調剤業務様式・管理手順書案を試行的に運用し、対物業務の量的・質的変化を多面的に検証する。必要に応じて提案内容を改善するとともに、対物・対人業務の充実に資する薬学部における卒前・卒後教育や生涯研鑽の充実に必要な教育内容を提案する。最終的に、本研究の内容を広く社会に発信し、国民の理解を深め、幅広い意見を取り入れ、施策等に反映させることで、地域住民への安全・安心な医療の提供に貢献することを目的とする。
研究方法
1. 薬剤師・薬局の対物・対人業務の充実に関するインターネット公開情報及び文献情報を入手した。
2. 調剤業務における調製業務を一部外部委託する際に、委託を受ける薬局の調製業務に使用する設備・機器類(以下、「調製設備・機器類)」と称する)に求められる精度・性能、管理条件について、調製設備・機器類を製造・販売している企業からWEB会議で意見を聴取した。
3. 調剤業務における調製業務の一部を受託する際に、薬局薬剤師が確認すべき事項について、調製設備・機器類を使用している薬局薬剤師からWEB会議で意見を聴取した。
4. 上記の調査・意見聴取の結果及び「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ」を踏まえ、「調剤業務における調製業務の一部外部委託における医療安全と適正実施のためのガイドライン(暫定版)」(以下、本ガイドライン(暫定版))と称する)を作成した。
5. 薬剤師及び一般市民を対象にしたアンケート調査を、北海道科学大学倫理委員会の承認を得て、WEBにより実施した。
結果と考察
本研究班では、厚生労働省が「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループのとりまとめ」(令和4年7月)として公表した「対物業務の効率化」のための施策の一つとして「調剤業務における調製業務の一部外部委託」の方針を踏まえ、調剤業務における調製業務の一部を外部委託する際に、医療安全の確保と適正な実施のためのガイドラインを作成することを目標とした。ガイドラインの作成にあたり、調剤業務の外部委託を実施している諸外国の状況を調査するとともに、欧州評議会のAutomated Dose Dispensing(ADD)ガイドラインをはじめとする国内外の公開情報を精査した。その結果、ADDガイドラインの基本的な考え方は参考になったが、欧米では、日本とは医療制度や医薬品提供体制が異なるため、欧米の外部委託システムをそのまま日本に導入することは難しく、日本独自のシステムを構築する必要性が示された。
そこで、調剤業務における調製設備・機器類に求められる精度・性能、管理条件について、調製設備・機器類を製造・販売している企業から意見を聴取した。さらに、調製設備・機器類を使用している薬局薬剤師から、調剤業務における調製業務の一部を受託する際に、通常の業務に追加・確認すべき事項について意見を聴取した。上記の調査・意見聴取の結果及び「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」の検討結果を踏まえ、本ガイドライン(暫定版)をとりまとめた。令和5年度には、本ガイドライン(暫定版)を試行的に運用し、対物業務の量的・質的変化を多面的に検証し、必要に応じて提案内容を改善する予定である。
一方、薬剤師及び一般市民を対象としたアンケート調査の結果、薬剤師の対物・対人業務の充実に伴い、薬剤師が社会に貢献するためには生涯研鑽が必要であり、そのためには薬学部での卒前・卒後教育の充実や多職種との連携強化が必要であることが示唆された。
結論
本ガイドライン(暫定版)が、薬局における対物業務の効率化・対人業務の充実を通して、医療の質を高めることに寄与することを期待する。薬剤師の対物・対人業務の充実に伴い、薬剤師が社会に貢献するためには生涯研鑽が必要であり、そのためには薬学部での卒前・卒後教育の充実や多職種との連携強化が必要である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 296,000円
人件費・謝金 0円
旅費 538,000円
その他 2,176,000円
間接経費 1,038,000円
合計 4,048,000円

備考

備考
収入と支出の差額は、予定していた対面式会議からZoom会議へ変更したことにより旅費が減少したこと、及びアンケート調査費用が見込みより少なかったことによるものです。

公開日・更新日

公開日
2023-06-30
更新日
-