がん患者のQOLを向上させることを目的とした支持療法のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200925004A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者のQOLを向上させることを目的とした支持療法のあり方に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター病院 緩和医療科)
  • 恒藤 暁(大阪大学大学院医学系研究科 緩和医療学 寄附講座・緩和医療学)
  • 的場 元弘(国立がんセンター中央病院 緩和ケアチーム)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 和田 信(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では平成22年度研究として(1)がん患者のQOLを一般外来・外来化学療法・入院という3つの治療の場で調査するパイロットスタディ(2)化学療法を受ける患者における緩和支持治療ニードの評価方法の開発(3)新規抗がん剤第一相臨床試験に関する患者心理の研究に取り組んだ。
研究方法
調査方法は自記式質問紙調査およびインタビュー調査である。
結果と考察
一般外来のがん患者は、痛み、息切れ、睡眠障害、食欲不振、嘔気、便秘、緊張感、抑うつなどで40%から60%の高い有病率を示した。これらの結果は外来で受診中のがん患者が身体的、心理的な負担を抱えていること、外来化学療法中のがん患者は、特に倦怠感、抑うつの症状を有する割合が若干高かったこと、入院中のがん患者は、疼痛、倦怠感、抑うつなどの症状を有する割合が高く、早急に改善が必要なことが明らかになった。また、これらの一連の調査を通して、一般外来での調査は方法論としては一般化しやすいが、外来化学療法中や入院患者に関しては方法論的に問題が多いことが明らかになった。外来化学療法を受ける患者のニードとして多いものは、気持のつらさ・不眠・意思決定支援、口腔の問題・食指不振・嘔気、倦怠感、疼痛・しびれ・呼吸困難であり、これらに対する支持緩和療法を開発していくことが必要であることが明らかになった。新規抗がん剤第一相臨床試験に参加する患者では、治験薬の効果に対する期待が強い。一方、期待した治療効果の得られない場合について考えることを回避しようとする心理傾向が認められ、緩和医療・緩和ケアについても具体的に考えることは回避する傾向が認められた。
結論
本研究の結果、がん患者のQOLの評価方法に関する示唆が得られた。外来化学療法を受ける患者のニードが明らかになった。新規抗がん剤第一相試験を受ける患者のニードが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200925004B
報告書区分
総合
研究課題名
がん患者のQOLを向上させることを目的とした支持療法のあり方に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター病院 緩和医療科)
  • 恒藤 暁(大阪大学大学院医学系研究科 緩和医療学 寄附講座・緩和医療学)
  • 的場 元弘(国立がんセンター中央病院 緩和ケアチーム)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 和田 信(埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では(1)がん診療拠点病院における緩和ケアチームと薬剤部の現状を明らかにする(2)がん診療連携拠点病院において、遺族の視点から緩和ケアの評価を行う(3)進行がん患者における緩和ケアのアウトカムを測定する尺度を開発し、その信頼性・妥当性を検討する(4)がん患者のQOLを一般外来・外来化学療法・入院という3つの治療の場で調査するパイロットスタディを行う(5)化学療法を受ける患者における緩和支持治療ニードの評価方法を開発する(6)がん患者の支持治療に関する介入・横断研究を行うことを目的とした。
研究方法
目的(1)から(5)は自記式質問紙調査を行った。(6)は各種介入研究または横断研究を行った。
結果と考察
わが国のがん診療連携拠点病院の緩和ケアチームと薬剤部の実態が明らかになった。がん診療連携拠点病院のがん患者の遺族に対する緩和ケアの質の評価に関する調査は56施設が参加し2560名の遺族から回収され、がん診療連携拠点病院の終末期がん患者のQOLで改善が必要な領域が明らかになった。進行期がん患者のQOL調査票の開発では、計405人から調査票を回収した。患者によるケア評価、EORTC-QLQ-C15PAL、包括的QOL評価尺度が開発された。がん患者のQOL評価に関する一般外来、外来化学療法、入院でのパイロットスタディを通して、それぞれの場にいるがん患の身体的・心理的症状の有病率が明らかになり、今後のQOL評価への示唆が得られた。外来化学療法を受ける患者のニードとして気持のつらさ、消化器症状、倦怠感が高いことが明らかになった。進行期がん患者の倦怠感に対するリフレクソロジーの有効性が無作為化クロスオーバー試験で認められた。新規抗がん剤第一相臨床試験に参加する患者の心理が明らかになった。その他いくつかの支持療法の開発がすすめられた。
結論
がん診療拠点病院における緩和ケアチームと薬剤部の現状が明らかになった。がん診療連携拠点病院の終末期ケアの質の評価がなされた。進行がん患者における緩和ケアのアウトカムを測定する尺度が開発された。がん患者のQOLの評価方法に関する示唆が得られた。化学療法を受ける患者の緩和支持治療ニードが明らかになった。がん患者の支持治療に関する介入研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200925004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
進行がん患者のQOLの評価方法をEORTC-QLQ-C15PAL、ケア評価尺度、包括的評価尺度という三側面から評価する方法を開発した。がん診療連携拠点病院に関しては国内初の一般病院を対象とした遺族調査が実施された。外来化学療法中のがん患者の支持療法ニードが明らかになった。国内で初めてがん患者のQOLを一般外来、外来化学療法室、入院患者に対して測定する多施設研究が実施された。
臨床的観点からの成果
進行がん患者のQOL尺度は臨床においても利用可能であり、信頼性・妥当性を有する評価が今後可能となる。がん診療連携拠点病院の遺族調査は結果を各病院にフィードバックし、臨床の改善に利用された。外来化学療法中のがん患者の支持療法ニードが明らかになり、今後の臨床介入の示唆が得られた。がん患者の倦怠感に対する有効な介入方法が開発された。
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
がん診療連携拠点病院の緩和ケアチームに関する調査をもとにして厚生労働省委託事業がん医療水準の均てん化を目的とした医療水準等調査事業が平成19年から平成22年にかけて実施されている。
その他のインパクト
がん診療連携拠点病院の遺族調査の結果は日本緩和医療学会、日本看護科学学会のシンポジウムに招聘され講演した。進行がん患者のQOL評価方法については日本癌学会のシンポジウムに招聘され講演した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
投稿中論文あり
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
厚生労働省委託事業がん医療水準の均てん化を目的とした医療水準等調査事業
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamagishi A, Morita T, Miyashita M, et al.
Symptom prevalence and longitudinal follow-up in cancer outpatients receiving chemotherapy.
J Pain Symptom Manage. , 37 (5) , 823-830  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-01
更新日
-