文献情報
文献番号
202225010A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師・薬局における災害時等対応についての調査研究
課題番号
21KC1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
江川 孝(福岡大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 渡邉 暁洋(岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,860,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成23年度厚生労働省科学研究「薬局及び薬剤師に関する災害対策マニュアルの策定に関する研究」において、災害時に薬剤師・薬局が行うべき活動や平時の災害への備え等については、「薬剤師のための災害対策マニュアル」として取りまとめられている。しかし、約10年が「薬剤師のための災害対策マニュアル」の策定から経過するなかで、地震や台風、集中豪雨による水害などの大規模災害時における医薬品供給体制の確保や薬剤師の対応等の現状や関係法令の改正状況を鑑み、必要な見直しを行うことは緊迫した課題である。また、近年、都道府県によっては、被災地域に設置される保健医療調整本部において業務主管部局と連携して対応する医薬品等の医療物資の供給に精通する担当者(いわゆる災害薬事コーディネーター)の養成等が進められているが、全国の都道府県に薬事コーディネーターが配置されていない状況である。そこで、本研究は、災害時において適切に対応できる薬剤師の養成に資するよう、近年の災害発生状況のみならず新型コロナウイルス感染症等の新興感染症の流行状況を踏まえながら、薬剤師・薬局として対応すべき取組に焦点を当てて災害対応マニュアルの改訂を行うものである。令和4年度に計画している具体的な年度毎の研究項目は、収集した過去の災害の薬事対応の事例をもとに、災害時における医薬品供給体制の確保に必要な薬剤師の対応を検討し、災害時に求められる薬剤師の役割や平時から必要となる準備等を明確化して、当該内容を盛り込んだ災害対応マニュアル改定項目(案)を作成する。
研究方法
令和4年度に実施した全国の都道府県薬剤師会に対して災害時の薬剤師の活動や行政機関・卸業との連携、各都道府県の災害対策マニュアル整備についてのアンケート調査結果から、指揮と連携(Command & Control)、安全(Safety)、コミュニケーション(Communication)及び評価(Assessment)の観点で分類して災害対策マニュアルに反映すべき項目を抽出し、薬剤師のための災害対策マニュアル改訂版の目次(案)を取りまとめた。この改訂版の目次(案)は日本薬剤師会災害対策委員会にて上申し、日本薬剤師会災害対策委員が所属する都道府県の薬剤師会から意見を求めた。収集された意見は、研究班の最終案として日本薬剤師会災害対策委員会にてl協議した。
結果と考察
薬剤師のための災害対策マニュアル改訂版の目次(案)は研究班会議にて協議した後、班員からの意見を反映して、平時に準備すべきことに「事業持続計画(Business Continually Planning, BCP)作成」、都道府県薬剤師会・都道府県病院薬剤師会での「支援・受援体制」、日本病院薬剤師会の対応の章を新設、災害時の薬剤師の救援活動に、「モバイルファーマシーの活用」、「災害時の感染対策(感染症の基本的な考え方・感染予防について)」、「支援者のメンタルヘルスケア」、支援薬剤師の標準的研修の章を追記して薬剤師のための災害対策マニュアル改訂版の目次(案)の修正を加えた。その後、日本薬剤師会災害対策委員が所属する都道府県の薬剤師会から意見を求めた結果、災害時の薬剤師の救援活動に、「保健医療福祉調整本部における活動」、「災害薬事コーディネーターの活動」、「災害関連死と健康二次被害の対策」、「災害時の薬事データ管理」が追加された。さらに、参考資料には、「災害処方箋の様式更新、薬剤版J−SPEEDの集計表」、「災害薬事コーディネーターの業務(例)」、「支援薬剤師の育成研修の具体例」、「東日本大震災以降に発生した災害の通知追加」、「STARTのアルゴリズム、薬事トリアージ」、「深部静脈血栓症(DVT)に対する注意喚起」、「放射線災害時の薬事対応」、「災害対応医薬品供給車両(モバイルファーマシー)の運用等に関する協定書(例)」が追加された。また、過去の災害薬事データの薬剤版J-SPPEDによる解析は、薬効分類を見直し、過去に大規模災害を経験した被災県から収集した災害処方箋の薬事情報の解析に加え、紛争災害にて緊急医療支援が必要であったウクライナ避難民に対する薬事支援でも解析を行った。本年度の取組で薬剤版J-SPPEDはExcel版が作成され、クラウドで使用できるスプレッドシートへの改修を進め、スマートフォン端末で使用できるアプリ化の基盤整備として新型コロナウイルス感染症宿泊療養施設における一般用医薬品集や国際災害にて救護にあたるI-EMTを対象にした医薬品集を作成した。
結論
災害対策マニュアル改訂版の目次(案)は、2023年3月3日に開催された日本薬剤師会災害対策委員会にて承認され、確定された。
公開日・更新日
公開日
2024-11-13
更新日
-