危険ドラッグ等の乱用薬物の迅速識別に関する分析情報の収集及び危害影響予測のための研究

文献情報

文献番号
202225006A
報告書区分
総括
研究課題名
危険ドラッグ等の乱用薬物の迅速識別に関する分析情報の収集及び危害影響予測のための研究
課題番号
21KC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部第3室)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 理恵(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 緒方 潤(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 入江 智彦(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
  • 出水 庸介(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
  • 森 友久(星薬科大学 薬品毒性学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定薬物制度に対応し,具体的な化合物や植物を指定薬物として指定する際に考えられる問題点を科学的に解決し,規制化に必要な評価手法及び科学的データを監視指導・麻薬行政に提供することを目的とする.
研究方法
新規流通危険ドラッグについて,国連等の国際公的機関が発信する海外薬物情報を広く収集するとともに,問題となりうる製品を入手し,新規流通化合物の構造決定及び分析用標品の準備,各種分析データの整備,識別法等を検討した.一方,危険ドラッグの中枢神経系への影響を検討するために,in vitro及びin vivoの新規評価法を検討した.また,危険ドラッグのマウス脳メタボロームに及ぼす影響を解析した.さらに,危険ドラッグ市場に流通する植物製品のDNA分析による基原種同定及び活性成分分析を行うと共に,DNA情報を利用した幻覚成分含有きのこの判別法を検討した.
結果と考察
令和4年度に入手した危険ドラッグ製品から,新規流通13化合物を検出・同定した.また,シート状製品から,新規LSD類縁体1cP-MIPLAを単離・同定した.オイル状製品から,大麻活性成分THCの還元体HHCのジアステレオマーと,CBDから環化反応でΔ9-THCまたはΔ8-THCを合成する際に副生するΔ4(8)-iso-THC,さらにΔ8-iso-THCの還元反応生成物であるdihydro-iso-THCを,他オイル状製品からは,指定薬物THCPの還元体HHCPのジアステレオマーを検出した.LSD構造類似18化合物のGC-MS,LC-PDA-MS, LC-蛍光検出等による識別法の検討を行った.また,LSDと識別が困難な異性体6化合物について,標品を有していなくても,明確に識別が可能なGC-QTOF-MSによる分析法を開発した.危険ドラッグ製品からの検出事例も散見される,PDE-5阻害活性を有するED治療薬及び類縁体116化合物を対象として,SFC-QTOF-MSを用いた迅速かつ高精度なスクリーニング法を開発し,実際の製品分析に適用した.HHCのジアステレオマー9α-HHC及び9β-HHC(令和4年3月指定薬物)を新たに合成し,分析用標品として確保した.また,これら化合物のコンピュータモデリングによる,カンナビノイドCB1受容体への親和性評価を行った.
一方,危険ドラッグの中枢作用を科学的に評価することを目的として,新規活性評価法を検討した.麻薬PCPの構造類似体の中枢作用評価手法を検討するために,まず陽性対象として,PCP及びPCPyの中枢作用性についてマウス新鮮脳幹スライス標本を用いて検討した.ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた多点電極アレイシステムによる危険ドラッグ評価法を検討するために,新たに4種類の中枢神経作用薬を用いて,薬理作用別に波形のパターンを取得した.合成カンナビノイMDMB-CHMINACA, APICA, 5F-ADB-PINACAを対象として,マウスによる学習・記憶障害と内因性カンナビノイドレベルへの影響を経時的に解析すると共に,カンナビノイドCB1受容体拮抗剤であるAM-251の前投与の効果を調べ,合成カンナビノイドの摂取がCB1受容体依存的に行動障害を惹起することを検証した.また新たに,カルボリンコア構造を有するCUMYL-PeGACLONEと5F-CUMYL-PeGACLONEによる行動障害と生化学的変化に関するプロファイリングを行った.自発運動促進作用を有する麻薬メトカチノンのフェニル基の4位におけるハロゲン化の自発運動に与える影響について検討した結果,この位置のハロゲンの存在が,運動亢進に関わる薬理作用発現に重要な部位であることが示唆された.
植物系危険ドラッグ19製品のDNA分析を行った結果,DMT検出14製品中10製品からDMT含有植物Acacia confusaのDNAが検出され,残りの4製品は人工的な添加もしくは抽出物の可能性が示唆された.さらに,harmaline,harmineを含有する植物種Banisteriopsis caapiのDNAが2製品で検出された.また,幻覚成分シロシン・シロシビンを含有するきのこのDNA情報を利用した判別法を開発するために,inverse PCR法を用いて,シロシビンの存在が報告されているGymnopilusのシロシビン合成系遺伝子の全長取得を行った.
結論
指定薬物総数は令和5年3月末時点で2420となった.本研究成果の一部は,令和4年度に4回実施された指定薬物指定の根拠資料の一部として用いられた.また,分析データは監視指導・麻薬対策課長通知として発出されるとともに,国立衛研違法ドラッグ閲覧システムに登録され公開された.本研究結果は危険ドラッグの規制化に有用な情報を提供し,国の監視指導行政に直接貢献するものである.

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202225006Z