食品中のブドウ球菌エンテロトキシンの検出および嘔吐活性の解明に関する研究

文献情報

文献番号
202224056A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中のブドウ球菌エンテロトキシンの検出および嘔吐活性の解明に関する研究
課題番号
22KA3007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
廣瀬 昌平(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌が産生する嘔吐毒素であるブドウ球菌エンテロトキシン (SEs)により引き起こされる。SEsは、抗原性の違いによりSEAからSE27までの計29種類が報告されており、日本では、SEAによる食中毒事例数が最も多いとされている。食中毒疑い事例をブドウ球菌食中毒であると同定するためには、食品検体からSEsを検出する方法がもっと有効であるが、食品自体がSEsの検出性および嘔吐活性に与える影響は明らかになっていない。そのため、本研究では、まず、ブドウ球菌食中毒の主要な原因食品を過去の事例から抽出し、それらの食品中でのSEAの検出性を明らかにすることを目的とした。また、黄色ブドウ球菌の中には食中毒を高頻度に発生し得る遺伝的背景を有する高食中毒原性菌株群が存在するとされている。この高食中毒原性菌株群を特定するためには、ブドウ球菌食中毒事例由来株を収集し横断的な遺伝子解析が必須である。そのため、本研究では黄色ブドウ球菌食品由来株と食中毒事例由来株の遺伝的背景を解析し、由来ごとの傾向を明らかにすることを目的とした。
研究方法
ブドウ球菌食中毒の主要な原因食品を明らかにするため、2000年から2021年までの食中毒統計から原因食品を15種類(米飯、鶏肉・豚肉・牛肉、魚介類、寿司、卵料理、パン、麺類、和菓子、洋菓子、ソース・タレ、牛乳、飲料その他、食品その他、弁当等複合食品、不明)に分類し、各食品群ごとの事例数、摂食者数および患者数を抽出した。また、各事例ごとに摂食者に対する患者数をアタックレートとして算出した。次に、主要な原因食品中でのSEA添加回収試験を実施した。大腸菌発現系を用いてリコンビナントSEAを作製し、市販のSEs検出キットを用いて検量線を作成し、定量性を確認した。米飯、求肥、粒餡、鮭フレークおよび加熱牛肉にSEAを添加した後に緩衝液を加えてストマッカー処理し、懸濁液中のSEA濃度を測定して、SEAの回収率を算出した。また、食品由来株4株および食中毒事例株4株の遺伝的背景を解析するため、抽出DNAをSEs multiplex PCRおよび全ゲノム解析に供試した。
結果と考察
事例数の多いブドウ球菌食中毒の主要な原因食品群は米飯、和菓子、肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)、魚介類であった。アタックレートは、和菓子でやや高い傾向が認められたが、主要な原因食品群間に有意な差は認められなかった。また、米飯、求肥、粒餡、鮭フレークおよび加熱牛肉を用いた添加回収試験の結果、陰性対照である緩衝液ではSEA添加量20 ngに対し18.2 ng/検体(91%)、米飯では添加量40 ngに対し46.2 ng/検体(116%)、求肥では添加量20 ngに対し9.6 ng/検体(48%)、粒餡では添加量20 ngに対し11.2 ng/検体(56%)、鮭フレークでは添加量20 ngに対し13.2 ng/検体(66%)、加熱牛肉では添加量20 ngに対し20.9 ng/検体(104%)で検出された。そのため、食品の種類によっては、食品がSEAの検出性に影響することが示唆された。食品由来株4株および食中毒事例株4株のSEs遺伝子および主要な病原因子関連遺伝子の保有状況に一定の傾向は認められなかったが、全ゲノム配列の結果から、食品由来株および食中毒事例株は由来ごとに異なるクラスターに分かれることが推測された。
結論
ブドウ球菌食中毒の主要な原因食品群は米飯、和菓子、肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)、魚介類であった。食品の種類によっては、食品がSEAの検出性に影響することが示唆された。食品由来株および食中毒事例株は、由来ごとに別のクラスターに分かれることが推測された。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,719,000円
(2)補助金確定額
2,719,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,610,860円
人件費・謝金 101,400円
旅費 0円
その他 6,740円
間接経費 0円
合計 2,719,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-11-10
更新日
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