核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究

文献情報

文献番号
202224051A
報告書区分
総括
研究課題名
核酸等温増幅反応を用いた食品遺伝子検査の新規プラットフォーム開発に係る研究
課題番号
22KA3002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 慶介(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 中山 達哉(広島大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の食品種の多様化、世界各国からの食品の輸入量及びその安全性確保需要増加に伴い、食品遺伝子検査の需要も増すものと考えらえる。現在の食品遺伝子検査はリアルタイムPCRがゴールドスタンダードになっているが、機械が高価かつ時間がかかることが問題視されていた。一方で、遺伝子検出技術として様々な等温核酸増幅反応の有用性が報告されている。Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法やRecombinase Polymerase Amplification(RPA)法は等温でかつ数十分で反応が完了することから、定性検査法として医療分野では普及してきている。しかし、国内の食品遺伝子検査としては検討が進んでいないのが実情である。そこで本研究は、LAMPやRPA等の核酸等温増幅反応の現状の情報収集を行い、その中から実用的な方法を選択して、サンプリングから結果の解析までの流れを鑑みて食品行政に係る遺伝子試験としての適用性を評価し、試験法として開発することを目的とする。
研究方法
等温核酸増幅反応に関する文献調査を実施し、食品遺伝子検査として利用可能な情報収集を行った。
RPAによる検出法開発を検討するために、遺伝子組換えとうもろこしMON863系統をモデルに、とうもろこし内在性遺伝子スターチ合成酵素Ⅱb(SSⅡb)及び多くの遺伝子組換え作物に導入されているカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター配列(P35S)を標的とした方法を検証した。
結果と考察
近年の論文数はLAMPが一番多く、次にRPAと続いた。国内食品検査として未検討のRPAについて5年間の論文を調査したところ、臨床で使われることが多かったが、日本以外の国では動植物や食品の検査への応用例も見られた。反応温度帯は37~39℃で、30分以内で終わるラテラルフローアッセイで利用され、簡便検査法として実績が多く有用な技術であると考えられた。さらに、食品衛生微生物分野におけるRPAの文献を深堀りするとともに、昨今、ニュース等のメディアで報道されている薬剤耐性問題に関する情報収集も同時に行った。報告数は、サルモネラ属菌の検出に関するもの、次いでビブリオ属菌の検出に関するものの順に多かった。単一属菌検出法の他に、複数属菌検出法も報告されていた。複数属菌を検出するものとして、サルモネラ属菌と大腸菌O157、サルモネラ属菌とリステリア、黄色ブドウ球菌と大腸菌O157の検出に関するものが報告されていた。また、食品衛生微生物分野におけるプラスミド性薬剤耐性遺伝子に関する報告を探索したところ、基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生遺伝子であるCTX-M遺伝子に関わるものが1報のみ報告されていた。これらRPAによる食中毒菌及び薬剤耐性遺伝子の報告はすべて37℃前後、30分以内の反応で標的遺伝子増幅を可能としているため、食品衛生微生物分野に応用できる有用な手法であると考えられる。
検討したRPA-SSⅡbに関しては、特異性は良好であるが、検出限界値が260~2,600コピーとリアルタイムPCRと比べて感度が悪かった。RPA-P35Sに関してはバックグラウンドが高く、検査法の開発にはさらに検討が必要であった。しかし、各反応は37℃、15分間以内に完了することから、簡易的に検査求められる場合の時間短縮やオンサイト利用には有用な技術と考えられた。よって、今後、RPAの食品遺伝子検査への応用・導入を検討する際は、その需要調査を行うことも重要と考えられる。
結論
様々な核酸等温増幅反応の中でも、世界的にLAMP及びRPAは食品検査への応用例が多く、かつPCRより迅速簡便である点において、国内の食品遺伝子検査へ適用できた場合のメリットが大きいは考えられる。本研究では引き続き、食品検査で未検討のRPAについて評価し、検査法として開発を進める。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,719,000円
(2)補助金確定額
2,719,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,241,840円
人件費・謝金 366,600円
旅費 46,284円
その他 64,386円
間接経費 0円
合計 2,719,110円

備考

備考
代理店振込手数料分の計上漏れを自己資金により補うことで支払った

公開日・更新日

公開日
2023-11-10
更新日
-