非メジャー血清群腸管出血性大腸菌の重症化因子の同定及び新たな分離検出法確立のための研究

文献情報

文献番号
202224050A
報告書区分
総括
研究課題名
非メジャー血清群腸管出血性大腸菌の重症化因子の同定及び新たな分離検出法確立のための研究
課題番号
22KA3001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
窪村 亜希子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 李 謙一(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)は食中毒や腸管感染症の原因微生物の1つであり同菌による重症例では血便や溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し、死者も報告されるため公衆衛生上重要な微生物である。EHECの主要7血清群(O157など)が保有する病原性遺伝子領域locus of enterocyte effacement(LEE)は宿主細胞への付着等に寄与し、病原性発揮に関与している。しかしLEEを保有しない EHEC(LEE(-)血清群EHEC)の重症例や死亡例も報告されているが、十分な研究がされていないことから、LEE(-)血清群EHECの病原性について研究を行った。
研究方法
(1)全ゲノム配列解析(WGS解析)では、国内で分離されたLEE(-)血清群EHECのうち、HUSを起こしたO血清群を中心とした9種類のO血清群(O74, O113, O115, O163, O166, O174, O183, OX18, OUT)に属する328株を対象に実施した。得られたシークエンスデータを使用して網羅的に病原性関連遺伝子の検出を行うことで確実にLEE(-)血清群EHEC研究対象株の選定を行った。検出された病原性関連遺伝子のうち細胞付着関連遺伝子に着目し、保有状況の確認も行った。また、HUS患者由来株4株を対象に完全長配列(コンプリートゲノム)の決定を行った。(2)培養細胞を使用した表現型の確認では、(1)により選定されたLEE(-)血清群EHECを対象に細胞付着性試験を実施した。HUS患者由来株については細胞毒性試験も併せて実施した。
結果と考察
(1)WGS解析により、328株から312株のLEE(-)血清群EHECの選定を行った。312株からは、53種類の付着関連遺伝子が検出された。HUS患者由来株のコンプリートゲノムの解析から、共通して巨大プラスミド(131~174kb)の保有が確認された。(2)培養細胞を使用した表現型の確認では、細胞への付着株数は19株(6.1%)のみであり、付着率はLEEを保有する株の10分の1程度であることが確認された。53種類の細胞付着関連遺伝子のうちeibGのみが細胞付着性に有意差を示した(p < 0.01)。細胞に付着した株のうち15株(78.9%)は細胞付着形態から付着因子の特定が困難であった。HUS患者由来株の細胞毒性試験では、今回検討を行った条件では健康者由来株と比べ大きな差は認められなかった。
結論
LEEを保有しないLEE(-)血清群EHECは、LEEを保有するEHECと細胞への付着状況が異なることが確認された。LEE(-)血清群EHECの病原性発揮に関与する因子については、細胞付着因子以外にも着目して解析を行っていく必要性がある

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,950,000円
(2)補助金確定額
2,950,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,388,141円
人件費・謝金 488,280円
旅費 0円
その他 73,579円
間接経費 0円
合計 2,950,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-11-10
更新日
-