ゲノム編集食品の安全性確保に関する取り組みの周知とさらなる安全性確保に寄与する手法の探求

文献情報

文献番号
202224044A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム編集食品の安全性確保に関する取り組みの周知とさらなる安全性確保に寄与する手法の探求
課題番号
21KA3003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田口 千恵(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,411,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2年12月にゲノム編集トマトが日本で初めて厚生労働省に届出受理され、これまでに4品目のゲノム編集食品が届出されているが、ゲノム編集食品を不安視する声が多く、国民に受け入れられているとは言い難い。今後イノベーションを推進していくためにも、新開発食品に対する国民理解と受容を向上させることが重要である。
ゲノム編集食品の届出制度では、事前相談において安全性の確認が行われ、届出に該当するか安全性審査に該当するかの判断がなされるが、その過程の詳細はほとんど知られていない。ゲノム編集食品の開発者がどのような解析を行って申請しているのか、それらの解析結果を示した提出資料をもとに薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会遺伝子組換え食品等調査会(以下、調査会)メンバーはどのような視点で安全性の確認を行っているのか、そして必要であれば開発者に追加の資料を求めるといった安全性確保の実態を正しく周知することは、国民理解を得るうえで必要不可欠である。
また、ゲノム編集食品の安全性はこれまでの育種技術と同等と考えられているが、急速に開発が進む新しい技術であることから、現在の安全性確認手法が今後生み出されるゲノム編集食品においても十分であるかはわからない。今後の技術の進歩をふまえて、現在の安全性確認手法の良い点や改良の余地がある点を検討しておく必要がある。薬学や農学分野などの専門家に現在の安全性確認手法に関する意見を聞き、今後取り入れるべき新たな視点が見出されれば、さらなる安全性の確保につながり得る。
そこで本研究は、1)ゲノム編集食品の安全性確保に関する取り組みの実態を国民に正しく周知することと、2)さらなる安全性確保に寄与する手法を探求することを目的とする。今年度は、安全性確保に関する取り組みを紹介するためのモデルケースを完成させ、専門家への調査を開始する。
研究方法
①情報提供媒体の完成
1年目に作成したモデルケースを紹介する媒体を完成させる。動画、補足資料に加え、より興味をもちやすい媒体としてマンガを作成する(日本語版、英語版)。
②さまざまな分野の専門家の意見収集
安全性確認手法の具体例に対する専門家(医学、薬学、農学、食品学などに関わる研究者や学識者等)の意見を聞くためにアンケート等の準備を行う。技術の進歩により今後生み出されるゲノム編集食品を想定したうえで、現在の安全性確認手法の良い点や改良すべき点、今後安全性確認に取り入れるべき項目などに関する意見の収集を開始する。さらに、諸外国の制度に関するアップデート情報を調査し、日本の制度の特徴等を把握する。
結果と考察
まず、①情報提供媒体の完成では、初年度に情報収集して考えたモデルケースを紹介する情報提供媒体を3種類完成させた。ゲノム編集食品の安全性確認過程においては解析手法などの学術的・専門的な用語を取り上げざるを得ないが、動画では難しい言葉を使わずに概要を説明するにとどめ、その代わりに補足資料では詳細な説明を盛り込んだ。マンガでは安全性確認の部分のみならず、ゲノムとは、遺伝子とは、といったゲノム編集食品の理解に必要な単語についても、易しい言葉を選んで解説を加えた。複数の媒体を作成したことで、個人の理解度に応じて選択することを可能にした。
また、厚生労働省より国際会議への出席を依頼されたため、マンガの英語版資料も作成した。ゲノム編集技術応用食品等の規制当局者が参加する多国間会議にて、日本のゲノム編集食品に関する届出制度における安全性の確認方法に関するマンガを配布し情報発信を行った。
そして、初年度に行ったゲノム編集食品の安全性確保に対する一般消費者の意識を把握するための調査から、ゲノム編集食品が流通するまでの過程を知ることが受容の向上につながり得る可能性を見出し、学会発表を行った。
次に、②さまざまな分野の専門家の意見収集では、日本分子生物学会のHPに調査協力のお願い文書や情報提供媒体3種類とアンケートフォームへのリンクを掲載してもらい、インセンティブなしでの協力を依頼した。さらに回答者数を増やすために、来年度も継続して行うとともに、他学会への協力の依頼を検討している。
さらには、ゲノム編集技術応用食品等の規制調和に向けた活動や国民理解の施策の共有を目的とした規制当局者が参加する多国間会議に参加し、諸外国のゲノム編集食品に対する規制の最新情報や動向を入手するとともに、日本の制度やリスクコミュニケーションの状況について発表を行った。日本の制度については英文論文(総説)を執筆し情報発信を行った。
結論
ゲノム編集食品の安全性確保に関する取り組みを紹介するための媒体(動画、補足資料、マンガ)を完成させた。また、現在の安全性確認手法の良い点や改良すべき点、今後安全性確認に取り入れるべき項目などに関する専門家からの意見の収集を開始した。

公開日・更新日

公開日
2023-12-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,411,000円
(2)補助金確定額
2,411,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,060,246円
人件費・謝金 0円
旅費 2,394円
その他 1,348,360円
間接経費 0円
合計 2,411,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-11-10
更新日
-