食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究

文献情報

文献番号
202224036A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等有害物質摂取量の評価とその手法開発のための研究
課題番号
22KA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
堤 智昭(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 美成(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 畝山 智香子(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部)
  • 鹿嶋 晃平(東京大学 医学部附属病院総合周産期母子医療センター(小児科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
40,831,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、リスク管理やその効果の検証に不可欠となる、食品(母乳含む)を介した有害物質の摂取量を適時かつ継続的に調査する。また、摂取量調査に必要となる有害物質の分析法を開発する。さらに、リスク管理の優先順位付けに必要となる各種有害物質の暴露マージン(MOE)についての情報を収集し整理する。
研究方法
全国約10地域で調製したトータルダイエット(TD)試料を分析し、ダイオキシン類(DXN)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、有害元素(ヒ素、カドミウム、水銀、鉛等)等について国民平均(一歳以上)の一日摂取量を推定し、経年変化を調査した。乳幼児におけるDXN及びPCB摂取量を調査するため、乳幼児用の一食分試料を作製した。有機フッ素化合物(PFAS)の摂取量調査の開始に向けて、TD試料を対象とした分析法を検討した。DXNについては汎用性の高い分析法を開発するため、GC-MS/MSの測定条件を検討した。食品からの摂取量の情報が不足しているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BT)及びリン酸エステル系難燃剤(PR)の分析法を新たに開発するため、LC-MS/MSやGC-MS/MSの測定条件を検討した。乳児にとって主要な食品となる母乳のDXN濃度を測定し、その経年変化を調査した。各種有害物質のMOEの情報を世界の食品安全担当機関等より収集した。
結果と考察
TD試料の分析結果から国民平均の摂取量はDXNが0.42 pg TEQ/kg bw/day、PCBが6.6 ng/kg bw/dayと推定された。DNXは耐容一日摂取量の約11%、PCBは暫定一日摂取許容量の約0.1%であった。DXN摂取量は1998年以降、緩やかな減少傾向を示していた。主な元素類の平均摂取量は、ヒ素が254、無機ヒ素が17.0、カドミウムが16.1、水銀が6.81、メチル水銀が5.64、鉛が4.78(単位は全てμg/person/day)と推定された。摂取量推定値と健康影響に基づく指標値の比(ハザード比)を求めた結果、無機ヒ素のハザード比(1.03-1.48)が最も高かった。また、過去の調査と比較し経年変化を解析したところ、カドミウム、水銀、鉛は減少傾向であったが、ヒ素は近年上昇傾向であった。乳幼児の給食献立を参考に、乳児用と幼児用の一食分試料を各32食分作製し、DXN及びPCB分析用の試料とした。PFAS分析法については、LC-MS/MS装置のバックグランドの低減と移動相の最適化を行い、さらに卵、肉類等からのPFOS疑似ピークの完全分離を達成した。中鎖PFASを対象とした分析法の定量下限値(LOQ)は0.05~0.1 ng/gであった。卵黄、牛肉等を用いて添加回収試験を行った結果、PFASの回収率は72.3~99.9%であった。DXN分析については、GC-MS/MSのモニターイオンや昇温条件を検討した。検量線作成時のDXNの相対感度係数の変動係数は10%以下であった。推定した食品試料中のDXNのLOQは、ガイドラインに記載の目標検出下限を満たした。BT分析法については、13種のBTを良好に分離でき、かつ感度良く検出できるLC-MS/MS測定条件を検討した。検量線は良好な直線性を示し、0.01 ng/mL標準溶液の各ピークのS/Nは10以上であった。PR分析法については、16種のPRについてGC-MS/MSとLC-MS/MSの測定条件を検討した。今回検討した機器の測定感度はLC-MS/MSが勝るが、ピーク分離に関してはGC-MS/MSが優れていた。初産婦の出産後1か月の母乳中のDXN濃度は5.65±2.08 pg TEQ/g fatであった。平均値の経緯をみると長期的に認められている漸減傾向が継続しているが、昨年度との比較では、ほぼ横ばいないし極わずかに上昇していたが、統計学的有意差は認めなかった。MOEを指標とした有害物質のリストを更新・発展させた。これまで通り、がんがエンドポイントとなる優先順位の高い物質は無機ヒ素で、がん以外のエンドポイントでは鉛が最も安全側に余裕がなかった。また近年各国で評価や規制の動きがあるPFASについて情報収集を継続した。
結論
食品からのDXN摂取量や母乳中のDXN濃度は、行政施策の効果等もあり経時的な減少傾向が示唆されている。カドミウム、水銀、鉛等の摂取量についても減少傾向が示唆されている。一方で、無機ヒ素はハザード比が高く摂取量の減少傾向も認められないことから、継続調査の必要性が高いと考えられる。PFAS分析法についてはTD試料への適用性を評価して、摂取量調査への活用を目指す。その他の検討中の分析法については、前処理方法の検討を行い、食品試料やTD試料への適用を図る。MOEの情報については、優先してリスク管理すべき有害物質を選定する際に有用であることから、継続的に収集する。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224036Z