幹細胞制御によるがん治療法開発のための基盤研究

文献情報

文献番号
200924040A
報告書区分
総括
研究課題名
幹細胞制御によるがん治療法開発のための基盤研究
課題番号
H21-3次がん・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(国立がん研究センター 研究所 がん転移研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 森 正樹(大阪大学 大学院 消化器がん)
  • 北村 俊雄(東京大学医科学研究所)
  • 岡本 康司(国立がん研究センター 研究所 早期がん研究プロジェクト)
  • 横山 明彦(国立がん研究センター 研究所 分子狩猟学部)
  • 金子 周一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 大河内 仁志(国立国際医療センター研究所 国際臨床研究センター 細胞組織再生医学研究部)
  • 畑田 出穂(群馬大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
65,730,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の発生・進展・転移・再発・治療抵抗性の全ての段階に於いて「がん幹細胞」が深く関わる。本研究の目的はがん幹細胞の生物学的特徴の解明や、がんで失った臓器を様々な幹細胞で再生する基盤技術を開発することで、幹細胞の制御をもとにした新たながん治療法の創出につなげる研究を推進する。
研究方法
ヒト乳がん細胞株、肺がん細胞株、大腸がん細胞、白血病細胞株等を用いて、がん幹細胞の標的分子候補やmicroRNAsの定量化を行い、がん幹細胞における標的分子群とそれを制御するmiRNAsの発現様式の全体像を明らかにする。さらにがん細胞に未分化胚細胞遺伝子を導入、分化可塑性を誘導する。また、がん幹細胞、がん細胞のエピゲノムの状態を明らかにし、がん幹細胞に特徴的な遺伝子を特定する。
結果と考察
1)薬剤耐性を制御する因子として発見したRPN2遺伝子は、乳がんや大腸がんのがん幹細胞で強く発現していることを新たに見いだした。ヒト乳がんのCD44+CD24-がん幹細胞のRPN2の発現抑制は、コロニー形成能や浸潤能、および腫瘍形成能やリンパ節転移を顕著に抑制し、がん幹細胞の性質を強く阻害した。2)消化器がん幹細胞を特徴づける表面抗原としてCD13, CD90を同定し、CD13+CD90-のがん幹細胞が薬剤耐性克服のための標的細胞であることをつきとめ、特に細胞周期G0期制御分子であるFBXW7の発現が予後と強く相関した。また大腸がんの手術検体から調整したがん幹細胞で肝転移と相関する複数のmicroRNAを同定した。3)正常肝幹細胞マーカーであるEpCAMとAFPを用いることで肝細胞がんを幹細胞タイプと肝細胞タイプに分類する方法を確立、幹細胞タイプの肝細胞がんではEpCAM陽性細胞ががん幹細胞としての性質を有すること、Wntシグナルによって自己複製制御を受けていること、5-FU抵抗性であること、EpCAMの遺伝子発現抑制ががん幹細胞の性質を失わせることを見出した。
結論
平成21年度は、おもに各種のがんにおけるがん幹細胞の分子生物学的な性状をゲノム、エピゲノムなどの観点から解析することで、がん幹細胞の特異的分子マーカーと考えられるRPN2(乳がん、大腸がん)、CD13, CD90(大腸がん),EpCAM(肝細胞がん)などを明らかにした。さらにiPS技術によるリプログラミングが、がん細胞の悪性度を転換する事を示した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-03
更新日
-