国内流通食品に検出されるカビ毒に対する安全性確保の方策の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202224026A
報告書区分
総括
研究課題名
国内流通食品に検出されるカビ毒に対する安全性確保の方策の確立に資する研究
課題番号
22KA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院動物生命科学部門)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 服部 一夫(東京農業大学 応用生物科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,512,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
オクラトキシンA(OTA)は、麦類、種実類、豆類を汚染するカビ毒である。今後、デオキシニバレノール(DON)に加えてOTAの基準値が設定された場合、輸入検疫においてDONに加えOTAの検査も実施する必要が生じ、現場の負担の増加が懸念されている。そこで本研究においては、小麦におけるDONとOTAの同時分析法を開発し、公定法の候補として提唱する。また、OTAの効率的な検査のためのスクリーニング法の検討を合わせて実施し、公定法として採用可能かを判断するデータを得る。一方、モニリフォルミン(MON)は、新興カビ毒に分類される化合物で、平成29年に公表された欧州食品安全機関(EFSA)の評価結果において、実験動物において致死毒性を示すこと、様々な穀類に検出されることが公表され、国際的な関心が高まっており、さらなる情報の収集が望まれている。そこで本研究においては、MONが日本人の健康に対してリスクを有するかを判断し、将来的に規格基準を設定する必要があるかを議論するためのデータを得るために、食品中のMONの分析法の開発、マウスにおける毒性評価、MON汚染の原因となる因子の解明を行う。
研究方法
小麦中のDONとOTAの同時分析は、多機能イムノアフィニティーカラムによる精製とLC-MS/MSによる定量により行った。国内の8分析機関による試験から得られた回収率等のパラメーターを評価し、妥当性を確認した。OTAの簡易分析法については、OTA非汚染の小麦、ライ麦又は大麦の破砕物に、OTA標準品を終濃度2、5又は 10 µg/kgとなるよう添加した検体を用いて4種の市販のOTA測定用ELISAキットの性能評価を行った。穀類中のMONの分析は、陰イオン交換カートリッジによる精製とHPLC法による検出を組み合わせた方法で行った。マウスを用いた毒性評価については、単回投与試験と14日間反復投与試験を実施し、MONを20、40及び80 mg/kg体重の用量で、各群5例のマウスに経口投与を行い、一般状態の確認や病理組織学的検査を実施した。生産菌の情報を応用したMON汚染食品の探索について、3種類の液体培地の間で、Fusarium属菌のMON産生性の比較検討を行った。
結果と考察
小麦中のDONとOTAの同時分析法の開発について、多機関共同試験の結果で得られたパラメーターは、全てAOACが公表するクライテリアを満たしていたことから、妥当性が示された。OTAを対象にして、現時点において日本で入手可能な市販ELISAキットを用いて、その適応性を検討した結果、2種のキットにおいて想定cut off値で安定した測定が可能と考えられた。穀類中のMONの分析法について、考案した分析法の性能を添加回収試験により評価した結果、良好な結果が得られたことから、来年度以降はこの分析法を用いて汚染調査を実施する。毒性試験については、単回投与試験の結果求められたLD50値は68.1 mg/kgであった。14日間反復投与試験では、再生尿細管が認められたことから、マウスにおけるMONの毒性標的臓器は、腎臓である可能性が示唆された。生産菌の情報を応用した新興カビ毒汚染食品の探索については、Fusarium属菌のMON産生性をスクリーニングするSSA培地でのアッセイ系の確立に成功した。
結論
小麦からの抽出液を多機能イムノアフィニティーカラムで精製し、LC-MS/MSで定量を行うDONとOTAの同時分析法を開発した。多機関共同試験において良好な結果が得られたことから、その分析法は小麦中のDONとOTAの同時分析に使用可能であることが示された。4種類の市販ELISAキットを用いて、大麦、小麦、ライ麦を用いた添加回収試験を行い、その適応性を検討した。その結果、2種類のキットについて、小麦への適応性が示された。穀類中のMONの分析法を開発し、単一試験室による添加回収試験で性能を評価した結果、良好な結果が得られたことから、その分析法は穀類中のMONの汚染実態調査に用いることが可能と考えられた。マウスにおける毒性試験を実施した結果、単回投与試験においては高用量群で死亡例や腎臓の尿細管の壊死が、14日間の反復投与試験においても腎臓への影響が認められた。これらの結果より、MONはマウスに対して急性の致死毒性と腎毒性を示すことが明らかとなった。食品におけるMON汚染の原因を解明するための第一段階として、Fusarium属菌のMON産生性をスクリーニングするSSA培地でのアッセイ系を確立した。今後、この系を用いた調査を継続することによって、日本国内で流通する食品におけるMON産生菌の分布実態に関する情報を蓄積し、食品にMON汚染をもたらす因子を解明する。

公開日・更新日

公開日
2023-08-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224026Z