我が国における生物的ハザードとそのリスク要因に応じた規格基準策定のための研究

文献情報

文献番号
202224023A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における生物的ハザードとそのリスク要因に応じた規格基準策定のための研究
課題番号
22KA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第二室)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 佐々木 貴正(帯広畜産大学 獣医学ユニット)
  • 山崎 栄樹(国立大学法人 帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,234,000円
研究者交替、所属機関変更
佐々木 貴正:令和5年(2023)1月に国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部から帯広畜産大学へ所属変更。

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の生物的ハザード、国内外での食品衛生の体系比較や規格基準の設定状況、国内流通食品における微生物汚染実態に関する知見の取得等を行い、それらを整理・分析することで、我が国の食品のリスク要因に応じた規格基準の在り方について国際整合性を踏まえて検討することを目的とした。
研究方法
①生鮮野菜または食肉加工食品を対象とした国際的な微生物規格基準に関して、Codex委員会が発行している文書の調査を行うことで、今後注視すべき食品やその微生物規格基準の必要性を検討②食肉を原因とする食中毒発生状況の分析③生鮮野菜類等を原因とする食中毒発生状況の分析及び汚染実態に関する研究④国際微生物規格委員会(ICMSF)及びISO微生物試験法の食品分類表をベースとした、野菜果実類を対象とする食品分類体系表原案の作成及び微生物の増殖に影響を与える食品マトリックス要因の解析⑤国内食中毒事例の食品-病因物質の組み合わせに基づく分類化及びサンプリングプランの国内流通食品への適用に関する研究⑥FAO/WHO合同微生物学的リスク評価専門家会議(JEMRA)が公開しているサンプリングプラン検討ソフトウェアの検討及び利用マニュアルの作成をおこなった。
結果と考察
Codex委員会は、生鮮野菜カテゴリーの15食品、および食肉加工食品カテゴリーの5食品について規格基準を設定しており、これらののほとんどにおいてCXG21-1997に沿って設定された微生物基準に従うよう規定していた。食肉を原因とする食中毒事例の発生割合は、鶏肉(80.9%)不明肉(8.3%)、牛肉(5.6%)、豚肉(4.5%)であった。鶏肉を原因とする食中毒は、カンピロバクター食中毒(652件:90.6%)が最も多く、生又は軽度な加熱状態で提供された事件が多かった。牛肉を原因とする食中毒は、腸管出血性大腸菌食中毒が最も多く(38.0%)、ステーキなどの軽度な加熱状態で提供されている事件が最も多かった。豚を原因とする食中毒については、ローストポークのように軽度な加熱状態で提供された事件もあったが、多くの事例で、かつ丼など、生又は軽度な加熱状態の鶏卵が使われていた。2000年以降に国内で発生した生鮮野菜類等を原因とする食中毒事例は38例の報告が見られ、原因菌ごとでは腸管出血性大腸菌17件、サルモネラ属菌8件、Escherichia albertii3件、エルシニア2件、カンピロバクター、その他の病原大腸菌、チフス菌、黄色ブドウ球菌が各1件であった。米国CDCによる、2016年以降の複数の州にまたがる食中毒集団事例の原因食品は、サルモネラ、毒素原性大腸菌及びリステリアのいずれにおいても野菜類が食肉類と同程度またはそれ以上を占めていた。国際微生物規格委員会(ICMSF)及びISO微生物試験法の妥当性確認に用いる食品分類表をベースとして、野菜果実類を対象に食品分類体系表を整理したところ、ISO 16140別添にて示される食品分類表では、豆類を除く野菜果実類を加熱・非加熱に二分していたほか、微生物の増殖に影響を与える食品マトリックス要因として低pH(酸性)、低水分活性、更にはポリフェノール多含が示されていた。
結論
国内外で近年発生した食中毒の原因食品としての野菜類の重要性が示され、今後製造工程での管理基準や微生物規格について検討すべき項目となりうることが示唆された。過去に国内で発生した食中毒事例を食品-病因物質の組み合わせに基づいて整理・分類し、微生物学的規格基準の構成要素の一つであるサンプリングプランの国内流通食品への適用の必要性について考察を行った結果、国内で発生した食中毒事例の原因食品の大部分が三階級サンプリングプランの適用が推奨されるものであることが明らかとなり、国内流通食品に対する規格基準設定においてサンプリングプラン導入の必要性を明確にした。加えて、国内流通食品に対して適用可能なサンプリングプランの基準値の検討に利用可能な情報の収集を行ったところ、過去に実施された国内流通食品に対する調査の多くが定性的試験法によるものであるため、サンプリングプランの基準値の妥当性検証に求められる微生物濃度に関する定量的知見については十分なデータが存在しないことが明らかとなり、今後、体系的かつ定量的な国内流通食品の微生物汚染状況の調査の必要性が示された。「Microbiological Sampling Plan Analysis Tool」について国内での活用可能性を検討した結果、実際に実施可能なサンプリングプランの策定には、各製造事業所での製造ロットサイズ、検査実施体制、検査の厳密性などの現実的な種々の状況を考慮する必要があるものの、当該ツールは重要な指標を示し、実効性あるサンプリングプランの作成に有用であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2023-11-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-11-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224023Z