ウエルシュ菌食中毒の制御のための検査法の開発及び汚染実態把握のための研究

文献情報

文献番号
202224022A
報告書区分
総括
研究課題名
ウエルシュ菌食中毒の制御のための検査法の開発及び汚染実態把握のための研究
課題番号
22KA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 三澤 尚明(宮崎大学 農学部 獣医学科 獣医公衆衛生学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,774,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウエルシュ菌食中毒はグラム陽性桿菌Clostridium perfringens によって引き起こされる食中毒である本菌による食中毒は依然発生が続いており、減少の傾向が認められない。原因として、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌の主たる汚染食品が明らかになっていないことがまず挙げられる。ウエルシュ菌は多くの食品から検出されるが、そのほとんどがエンテロトキシン非産生株であり、食中毒の原因となるエンテロトキシン産生株はほとんど検出されない。本研究では大規模な食品の汚染実態調査を実施し、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌の汚染源を明らかにするとともに、汚染食材からのウエルシュ菌除去法や食材中の増殖挙動を検討する。また、ウエルシュ菌の高感度迅速検査法を作製し、食中毒発生時の原因食材の同定を容易にする。また、調理済み食品の汚染状況を調査し、飲食店での調理実態を明らかにし、指導に役立てる。以上の研究結果を総合し、生産から調理段階までを考慮したウエルシュ菌食中毒予防法を提案する。令和4年度は汚染実態調査と迅速検査法の作製を行った。
研究方法
ウエルシュ菌汚染実態調査は、肉類、野菜類、魚介類、香辛料、乾物を主な対象として行った。今回の調査では、ウエルシュ菌食中毒の主な原因となる芽胞型ウエルシュ菌を検査対象した。食品の10倍乳剤を作製し、70℃、20分間の加熱後、増菌培養し、菌分離を行った。増菌培養液および分離コロニーからDNAを抽出し、ウエルシュ菌のマーカーとしてアルファ毒素遺伝子(cpa)およびエンテロトキシン遺伝子(cpe)を検出した。分離菌株は生化学性状試験を行い、ウエルシュ菌であることを確認した。
ウエルシュ菌の迅速検査法は、増菌培養を経ずに食品から直接、ウエルシュ菌の検出を行える方法を目指した。そのために、ウエルシュ菌に対する抗体と免疫磁気ビーズを用い、食品中からウエルシュ菌の濃縮を行い、新しく作製した高感度PCR法を組み合わせて検出を試みた。さらに、カレーを用いた添加回収実験を行い、検出感度を確認した。
結果と考察
・汚染実態調査
従来ウエルシュ菌食中毒の原因食品として重要視されてきた食肉であるが、牛肉からはウエルシュ菌芽胞は全く検出されず、豚肉でも陽性率は2.7%であった。この結果から、牛肉や豚肉でのウエルシュ菌汚染は非常に限られたものである可能性が示唆された。鶏肉でウエルシュ菌の汚染が認められていることから、牛肉、豚肉の食肉処理工程の衛生管理が進み、ウエルシュ菌汚染が低減されたのではないかと考えられた。また、多くの香辛料・カレー粉および水産食品からエンテロトキシン遺伝子が検出されたため、ウエルシュ菌食中毒の原因食品として重要であることが示唆された。香辛料・カレー粉はわが国で多発するカレーを原因食とするウエルシュ菌食中毒の汚染源として注意していく必要がある。さらに、干しエビやイリコ、昆布などの水産乾燥食品においても汚染が強く認められた。これらの食品は和食をはじめとした多くの料理で使用されている。煮物やめんつゆなどでウエルシュ菌食中毒が多発しているが、水産乾燥食品を“だし”として使用し、そこから汚染が発生している可能性が示唆された。
・迅速検査法の作製
ウエルシュ菌の高感度検出法の作製を開始した。ウエルシュ菌抗体を使用した免疫磁気ビーズ法とPCR法を組み合わせた検出法を検討した。カレーを用いた添加回収実験の結果、食品乳剤中に3×102cfu/ml以上でウエルシュ菌が存在していれば、増菌培養なしでウエルシュ菌およびエンテロトキシン遺伝子の存在を検出することができた。多くのウエルシュ菌食中毒事例では、食品中でウエルシュ菌が105/g以上増殖しているため、原因食材の同定目的としては、十分な感度であると思われた。本検査法を用いることにより、増菌培養を経ずに約3時間で、食品中のウエルシュ菌の存在を検出できるため、原因食材の同定が急がれる現場の検査では有用であると思われた。次年度は、検出感度を上げるためにさらに検討を行う予定である。
結論
今回の調査結果から、香辛料・カレー粉やイリコ、エビ、海藻などの海産乾燥食品がウエルシュ菌食中毒予防のために重要であると考えられた。一方、これまでウエルシュ菌食中毒の原因食材であると考えられてきた牛肉、豚肉、鶏肉、根菜による食中毒発生リスクは低いと考えられた。
今回作製した迅速検査法は102 cfu/mL以上のウエルシュ菌を検出することができた。今後、特異性を確認するとともに、検出感度をさらに向上させ、食中毒の原因究明だけでなく、汚染調査にも使用できるようにしたい。

公開日・更新日

公開日
2023-05-16
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

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収支報告書

文献番号
202224022Z