食中毒原因ウイルス等の汎用性を備えた検査法と制御を目的とした失活法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202224021A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因ウイルス等の汎用性を備えた検査法と制御を目的とした失活法の開発のための研究
課題番号
22KA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
上間 匡(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部第二室)
  • 岡 智一郎(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 吉村 和久(東京都健康安全研究センター)
  • 佐藤 慎太郎(和歌山県立医科大学 薬学部)
  • 木村 博一(群馬パース大学 保健科学部)
  • 元岡 大祐(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ノロウイルスによる食中毒被害低減には,次の2つが重要となる.
1.食中毒発生時に原因物質,原因となった食品および汚染経路の特定により,効果的な食品汚染防止策を示すこと
2.ノロウイルスによる食中毒の多くが食品取り扱い現場において従事者による食品汚染が原因と推定されることから,食品製造時の調理条件や食材の洗浄,さらに従事者の手指等や調理環境に用いる消毒剤などによる不活化条件を示すこと
しかしながら,現状では食中毒の原因と推定される食品はバラエティにとみ、検査担当者は様々な食品に対応する必要があること、さらに細菌と異なり食品中でウイルスが増殖しないため,食品からの微量のウイルスの検出そのものが非常に難しいことなどがあり、さまざまな食品に対応可能な汎用性の高い食品処理法が求められている。
また,食品の製造工程や食品取り扱いの環境において、ノロウイルス等の対策を取る必要があるが、これまでノロウイルスの実用的な培養系が存在しなかったため、直接的なノロウイルスの不活化条件が提示できないという課題があった.
本研究班では、上記の2つの課題に対して、汎用性の高い食品からのウイルス検出法の整備、および食品取り扱い現場で実施可能なウイルスの制御のための具体的なノロウイルスの不活化条件等の提示を目的とする。
研究方法
1検査法の整備 食中毒事件において、さまざまな一般食品からノロウイルス検出の実績のあるパンソルビン・トラップ法、A3T法、遺伝子検出の高感度化のためのnested realtime PCR、網羅的なウイルス遺伝子検出法としてのNGSの導入に関して基礎的な知見の蓄積を図る
2ウイルスの制御 in vitro増殖系をもちいてノロウイルスに対する直接的な不活化条件など科学的データの蓄積を図る。新規の食品汚染経路としての従事者の上気道飛沫中のノロウイルス実態調査を実施する。
結果と考察
1検査法の整備
・パンソルビン・トラップ法に用いる試薬の入手性は良好であった。
・冷凍ベリーの処理の際は、pH9.0以上の食品洗浄液が効果的であった。
・塩おにぎり、食パン、刻みのりの食品処理手順について確認した。
・秋田県で2019-2022年度に発生したウイルス性食中毒7事件において食品検体83検体のうち7検体からパンソルビン・トラップ法にてノロウイルスを検出した。
・東京都内で2021.4-2022.11に発生した食中毒事例で搬入された307事例について検査を実施し、46事例からノロウイルスを検出した。
・食品検体207検体についてA3T法でウイルス検出を試みたが、検出できなかった
・食品へのウイルス添加回収試験について、パンソルビン・トラップ法で得られた核酸抽出物をNGSによってメタゲノム解析を実施した。
・食品検査についてメタゲノム解析が実施できる可能性は十分あることが示された。
・国内における2018-2022年のノロウイルスの遺伝子群、遺伝子型はGIIがGIより多く検出されていた。
・GI.2, GI.3, GI.4, GI.7が検出報告されていた。
・GII.2, GII.4, GII.6, GII.17が多く検出報告されていた。
・主要流行株はGII.4からGII.2、GII.17と変遷している。
・食中毒事件対応における食品検査の実施状況について米国・英国から聞き取り調査を行った。
・米国・英国では食中毒発生時に食品検査を必ずしも実施していなかった。
2ウイルスの制御
・ノロウイルス、サポウイルスに対する不活化条件について文献調査を実施した。
・HACCPにもとづくウイルス対策として衛生管理を実施するには、科学的なデータはまだ少ない状況であった。
・ノロウイルス培養系に用いる糞便検体の入手体制を整えた。
・シジミをモデルとした食品中のノロウイルス不活化に検討を進めた。
・ノロウイルス培養系に用いるiPS由来腸管上皮細胞のロット選定をおこなった。
・ノロウイルス培養系に用いる遺伝子型をGII.4を基本に不活化条件の検証を進める。
・調理従事者等からの食品のウイルス汚染経路として唾液の可能性が示唆される報告がされている。
・食品取り扱い事業者を対象に唾液中のノロウイルスの実態調査を実施した。
・今年度は304検体について唾液の調査を実施したが、ノロウイルスは検出されなかった。




結論
1検査法の整備 食中毒事件に対応する汎用性の高い食品処理法としてパンソルビン・トラップ法、A3T法について手順確認、試薬入手性に問題はなかった。現状ではパンソルビン・トラップ法がウイルス検出成績は良いと思われるが、食中毒時の食品検査法として整備を進める、
2ウイルスの制御 ひきつづきin vitro増殖系を用いてHACCPに従った衛生管理に対応できる様なウイルス制御に関して科学的データの蓄積を進める。

公開日・更新日

公開日
2023-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224021Z