新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究

文献情報

文献番号
202224019A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウィルス感染症対策に取組む食品事業者における食品防御の推進のための研究
課題番号
21KA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
  • 赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高畑 能久(大阪成蹊大学 マネジメント学部)
  • 田口 貴章(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 加藤 礼識(別府大学 食物栄養科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
17,937,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、食品への意図的な毒物混入事件が頻発したこともあり、通常の食品事業者においては食品防御への対応が進んできているところであるが、飲食物の運搬を請負う事業者については参考となる食品防御ガイドラインが存在せず、十分な対応が行われているとは言えない。特に、新型コロナウィルス感染症がもたらした新しい飲食サービス形態に関する安全・安心の実現は急務である。本研究では、従来の食品事業者だけではなく、飲食物の運搬を請負う事業者においても、食品への意図的な毒物混入を防御するための方策について研究する。具体的には、以下を明らかにするための研究を実施する。
研究方法
今年度は、以下に示す9項目について、国内外の政府機関ウェブサイト、公表情報の収集整理、実地調査、ヒアリング調査、アンケート調査、人体試料やモデルウィルスを用いた分析、検討会における生物・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。
結果と考察
(1)フードチェーン全体の食品防御上の安全性向上に向けた脆弱性評価については、無人販売所を含む3箇所について実地調査を行い、食品防御の観点からみた脆弱性に関する情報を収集・整理した。その結果として、今後、食品防御ガイドラインに反映できる可能性のある脆弱性5点を抽出した。
(2)新型コロナウィルス感染症対策と調和した食品防御ガイドラインに関する検討については、食品防御対策ガイドラインの食品製造工場向け(令和元年度改訂版)(案)、同じく運搬・保管施設向け、調理・提供施設向け(それぞれ令和元年度版)(案)について、新型コロナウィルス感染症対策との調和に向けた修正を行った。また、デリバリーサービス提供事業者及び利用事業者向けの食品防御チェックリスト(案)を作成した。
(3)テイクアウト・デリバリー施設(専門店含む)における食品防御対策の実態調査については、テイクアウト・デリバリー施設では、自社配達であるか、宅配代行事業者に委託しているのかに関わらず食品防御対策および衛生管理の取り組みが不十分な店舗が認められることを明らかにした。
(4)コロナ禍における外食の不安に関する要因分析については、ウェブアンケート調査結果を用いて、コロナ禍での外食の不安に関連する因子を明らかにすることができた。
(5)フードデリバリーサービスの配達従事者への食品防御教育の阻害要因については、食品防御教育の阻害要因を解消しながら、配達員が食品防御に関する知識を持って、安心・安全なフードデリバリーサービスの提供につなげる必要があることを明らかにした。
(6)血液・尿等人体試料中毒物及び食品中の毒物・異物の検査手法の開発と標準化については、人体試料中の高極性農薬の分析法は、前処理に用いる溶媒の種類・量の検討、及びLC条件における平衡化時間の検討が必要であることなどが判明した。
(7)食品のデリバリーやテイクアウト用の容器等における新型コロナウィルスのモデルウィルスを用いた生残性評価については、感染性ウィルス生残性は容器・包装の種類によって異なること、またウィルス生残性減少の傾向は、大きくは生残性の高いプラスチック樹脂系統と、生残性の低い紙類系統に分類されるが、発泡スチレンや、表面をサンドブラスト加工したポリスチレン、表面をポリスチレンコーティングした未晒クラフト紙の例の通り、表面加工の程度や添加物の使用等の要因によって影響を受け、大きく変化することが示唆された。
(8)新興感染症流行時における地方自治体の食品防御対策の検討については、アンケート調査等を通じて行政機関における食品防御対策上の課題を明らかにすることができた。また、食品におけるSARS-CoV-2の汚染状況の有無の検証のための試験方法の検討を進めることができた。
(9)海外における食品防御政策等の動向調査については、米国FDA「食品への意図的な混入に対する緩和戦略」規則・ガイダンスの更新状況を確認した結果、今年度中の大きな更新はなされていなかったことがわかった。
結論
近年、オンラインフードデリバリーサービス等の宅配事業、また自社サイトを通じて直接注文を受け付けるインターネット販売等も含めて、新しい飲食物の販路が開拓され、またそれらの多様化が押し進められた。今年度の研究では、このような調理・提供事業者と消費者とを接続する部分のサービスにおける、食品防御に関する懸念点の抽出を中心に行った。その結果、特に①テイクアウト・デリバリー施設及び無人販売所における脆弱性、②配達員等に対する食品防御に関する教育、③容器等におけるウィルスの生残性、④地方自治体における食品防御に対する体制整備等、より深い検討を要する論点が明らかになった。以上を念頭に、次年度の研究では、新しい事業形態(飲食物の運搬)を行う事業者における、実行性のある食品防御の方法等の検討を実施する。

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224019Z