食中毒原因細菌の検査法の整備のための研究

文献情報

文献番号
202224016A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因細菌の検査法の整備のための研究
課題番号
21KA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 大岡 唯祐(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 感染防御学講座 微生物学分野)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 伊豫田 淳(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
21,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
astA(腸管凝集付着性大腸菌耐熱性エンテロトキシン1;EAST1をコードする遺伝子)保有大腸菌による大規模食中毒や腸管凝集付着性大腸菌(細胞への凝集付着性因子遺伝子aggRに加えてastA保有株も含む)や腸管病原性大腸菌(細胞への局在付着性因子:eae等保有株)による食中毒の発生も続いており、これらの病原大腸菌の食品等の検査法は国内外で確立されていないため、研究を行うことにした。さらに、令和3年に富山市で学校等給食によって発生した大規模食中毒の原因物質として疑われた大腸菌について、病原性解明のための緊急的追加研究を実施した。
研究方法
(1)病原大腸菌食中毒の食品検査法確立では、複数のastA特異的コンベンショナルPCR法について、食品での検出性を検討し、選定した優れたPCR法を用いて食品でのastA保有大腸菌の増菌培養法および分離培養法の検討を地方自治体と実施した。また、集団食中事例由来株を全ゲノム解析し、配列データを参考にリアルタイムPCR法開発を検討した。(2)astA遺伝子保有株31株の全ゲノム配列決定を行ない、公共データベース上のastA遺伝子保有株も含め(計713株)、35種類のastA遺伝子バリアントの分布やコピー数、ゲノム局在、転移能などの特性解明のための解析を行った。(3)病原性大腸菌食中毒事例株の解析では、EAST1の発現解析として、ウェスタンブロッティングによる検出手法の確立を目指した。食中毒由来astA遺伝子保有株のメジャー血清型O166:H15等について培養細胞への接着性を解析した。(4)食品中の病原大腸菌の汚染実態および制御法に関する研究では、食品培養液から大腸菌の病原因子のスクリーニングPCRを行い、分離コロニーの病原因子をPCRで再確認した。(5)富山市集団食中毒由来大腸菌の病原性に関する研究では、大腸菌株の完全長ゲノムの取得および解析、培養細胞での感染実験等を行った。さらに、本事例患者の便検体をショットガンメタゲノム解析した。
結果と考察
(1)病原大腸菌食中毒の食品検査法確立では、Yamamotoらのプライマーが検出性に優れていた。培養法の検討では、mEC培地またはNmEC培地を用いて増菌培養し、クロモアガーSTEC基礎培地または薬剤C添加クロモアガーSTEC基礎培地を用いて分離培養する方法が検出性に優れていた。また、astAの全バリアントまたはastAの機能しているバリアントを標的とするリアルタイムPCR法について、プライマーおよびプローブ候補を設計した。(2)713株でのastA遺伝子バリアントを解析し、6種類の主要バリアント(V22, prototypeなど)を同定した。また、1株に複数コピー存在するものはprototype以外にほとんどないこと、主要バリアントをコードする挿入配列IS1414のみがintactな構造であり伝播可能であること、一方で、全株に共通の因子(マーカー遺伝子)を同定するのは困難と思われ、主要なバリアントに絞ってマーカーを検討する必要があることが判明した。(3)病原性大腸菌食中毒事例株の解析では、EAST1の発現解析として、有症例由来株でEAST1ペプチドの発現を確認した。培養細胞感染試験では、O166:H15およびOgGp9:H18において細胞接着性が認められた。全ゲノム配列解析ではastA陽性大腸菌は系統的に多様であることが判明した。(4)食品中の病原大腸菌の汚染実態および制御法に関する研究では、昨年度の調査で特徴的な汚染が認められた輸入野菜、豚内臓肉を中心に調査を行った。その結果、豚内臓肉、輸入オクラ、輸入ベビーコーンからastAが高率に検出された。(5)富山市の学校給食を原因とした集団食中毒由来大腸菌の病原性に関する研究では、特徴的なプラスミドの保有、ETT2TypeⅢ分泌系解析の必要性が明らかになった。培養細胞感染実験では顕著な傷害性は見出されなかった。本事例有症者便検体のショットガンメタゲノム解析では大腸菌以外の既知病原体は検出されず、大腸菌特異的配列の解析から事例株が優先して存在することが示唆された。
結論
astA保有大腸菌の食品検査法に関して、培養法やリアルタイムPCR法を検討し、また、リアルタイムPCRでの新たな対象遺伝子の検索につながる研究や事例株の解析、食品での汚染状況の解明について各分担研究が連携しながら実施した。また、緊急的追加研究として、富山市大規模食中毒の原因物質として疑われる大腸菌について、その病原性に関する研究を実施した。

公開日・更新日

公開日
2023-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224016Z