自然毒等のリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
202224015A
報告書区分
総括
研究課題名
自然毒等のリスク管理のための研究
課題番号
21KA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 )
研究分担者(所属機関)
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所  水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所  環境・応用部門 水産物応用開発部)
  • 内田 肇(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 安全管理グループ)
  • 小澤 眞由(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所環境・応用部門水産物応用開発部安全管理グループ)
  • 髙橋 洋(国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産大学校)
  • 辰野 竜平(水産研究・教育機構 水産大学校 食品科学科)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
  • 南谷 臣昭(岐阜県保健環境研究所 食品安全検査センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
23,078,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、フグ毒をはじめとした動物性自然毒やきのこを含む有毒植物など植物性自然毒に係る知見を収集・整理し、関係事業者に効果的な対策を提供するとともに、消費者に対して正確な情報提供を行うことを目的とする。
研究方法
動物性自然毒においては、天然フグの主要な水揚げ地において、漁獲および流通状況の調査を行う。雑種フグの出現状況については、分子マーカーを用いて種・雑種の割合を明らかにするとともに、雑種フグに含有されるテトロドトキシン(TTX)を部位別にLC/MS/MS法により調べる。麻痺性貝毒については、国際的に妥当性が評価されているLC/MS/MS法を国内で効果的に利用するために、主要生産海域のホタテガイなどの毒組成をLC/MS/MS法により明らかにし、現在の貝毒検査の公定法であるマウス毒性試験との相関について検証する。植物性自然毒については、高等植物及びキノコの毒成分を対象に、中毒発生時に保健所と協力して原因究明にあたる地方衛生研究所(地研)にとって有用なLC/MS/MS分析法を検討し、妥当性評価などにより分析法を確立する。自然毒による食中毒の予防策を効果的かつ効率的に講じるために、主に植物性自然毒(キノコ・高等植物)を原因とする食中毒を対象に、その発生の実態や原因等を調査して傾向を解析する。また、厚生労働省ホームページ(以下、HP)に掲載されている「自然毒のリスクプロファイル」について、全般的な更新を行う。
結果と考察
 石川県輪島市、秋田県秋田市・男鹿市、北海道神恵内村・初山別村で雑種漁獲状況調査の調査を行った(それぞれ雑種混獲率0.148%、1.952%、0.050%)。各水揚げ地において、雑種は漁獲後、水産加工会社等に購入された後、ふぐ処理者の監督の下で排除されていた。
 日本沿岸域で採取されたふぐおよび雑種ふぐついて、各個体を組織ごと(皮、筋肉、精巣、卵巣、肝臓)に分けて、テトロドトキシン(TTX)群を分析した。その結果から、可食部位を判別した。皮については、トラフグ×マフグ、トラフグ×ゴマフグ、ゴマフグ×ショウサイフグ、ゴマフグ×マフグが10 MU/gを超過しており、可食部位として適さないことが明らかになった。筋肉については、トラフグ×マフグ、ゴマフグ×ショウサイフグが10 MU/gを超過しており、可食部位として適さないことが明らかになった。ただし、これら雑種ふぐは一度冷凍してから腑分け作業を行っており、皮などの解凍の際、ドリップとともに隣接する組織から毒が移行した可能性が考えられる。精巣はいずれの雑種フグでも10 MU/g以下であった。卵巣と肝臓ではコモンフグ×ショウサイフグを除いて、いずれの種でも10 MU/gを超過しており、可食部位として適さないことが明らかになった。
 北海道で採取されたホタテガイ、ならびに東北地方で採取されたホタテガイやカキ、アカガイなどの二枚貝について、公定法に従って調製した抽出液をマウスに投与し、毒力を求めた。また、同一試料を用いて、LC/MS/MSに適した分析試料を調製して、分析した。ホタテガイ分析においては二枚貝代謝物M-toxinsの毒性を評価して毒性等価係数を求める必要性があることが明らかとなった。
 キノコ毒と指標成分の全7成分でLOD≦0.1 mg/kg (= ML・1/10)となり、Codexの評価基準を満たした。また、シイタケとブナシメジを用いて1 mg/kgでの添加回収試験を実施したところ、絶対検量線で定量した6機関の平均添加回収率は80-110%、HorRat≦2となり、Codexの評価基準を満たした。選択性を考慮に入れ、定量限界を1 mg/kgに設定することで、正確な定性と定量が可能な汎用性の高い方法として有効であることが確かめられた。
 「植物性自然毒の食中毒の発生動向調査及び「自然毒のリスクプロファイル」更新」では、写真及び毒成分の化学構造式の未掲載や不明瞭さが特に指摘されたことから、その改善には特に留意し更新作業を進めている。
結論
石川県、秋田県、北海道で漁獲されたフグの流通状況や雑種フグの出現状況を把握した。麻痺性貝毒公定法であるマウス毒性試験とLC/MS/MS法の検査結果を比較した結果、LC/MS/MSの測定結果が低くなることが明らかになり、その一因として毒代謝物の毒性が関与していることが示唆された。主に国内での食中毒発生件数が多いキノコや死亡事例が多いキノコを対象として、妥当性評価を行い妥当性を確認した。我が国における植物性自然毒による食中毒の傾向を把握し、自然毒のリスクプロファイルの更新に向けて情報を収集した。

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
2023-06-19

研究報告書(PDF)

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公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
2023-07-26

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収支報告書

文献番号
202224015Z