QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200924029A
報告書区分
総括
研究課題名
QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究
課題番号
H19-3次がん・一般-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆一(国立がん研究センター東病院)
  • 井本 滋(杏林大学医学部)
  • 名川 弘一(東京大学医学部付属病院)
  • 齋藤 典男(国立がん研究センター東病院)
  • 内田 淳正(三重大学医学部)
  • 佐々木 寛(東京慈恵会医科大学)
  • 萩原 明郎(同志社大学生命医科学部)
  • 荒井 保明(国立がん研究センター中央病院)
  • 土岐 祐一郎(国立がん研究センター東病院)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 武藤 学(京都大学医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
75,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究プロジェクトは、分野6の中で、医療経済、精神腫瘍、コミュニケーション、患者支援に関わること以外で、QOLを重視した治療法開発を探索的におこない、生み出された基盤的な技術の比較試験として臨床試験を行う事を目的とした。具体的には、1)切除可能例に対して根治性を犠牲にせずに機能温存、臓器温存を可能とする治療法の開発、2)がんの治療あるいは浸潤に伴って損なわれる様々なQOLを向上するための治療法の開発、3)難治のがんに対する低毒性の薬物療法の開発を目標にしている。
研究方法
上に掲げた目的を達成するため1)頭頚部癌、食道癌を対象とした再建法の開発、機能温存を目指した根治的治療法の開発,2)術後の整容、リンパ浮腫を考慮した乳がん治療法の開発,3)リンパ浮腫、人工肛門を最小化する骨盤内広範進展がんの治療法の開発,4)患肢温存を目指した骨腫瘍治療法の開発,5)再生医学を用いた再建法の臨床応用,6)膵がん、腹膜播種など難治癌の薬物療法の開発,7)IVRを用いたQOLの改善法の開発,8)グレリンを用いた食欲不振に対する薬物療法を具体的なテーマとして取り上げた。
結果と考察
1.喉頭温存下咽頭部分切除一次縫合法の条件、早期の咽頭がんの概念を明らかにし内視鏡手治療適応の範囲を纏めた。2.食道がん治療後の重要な障害である難治性食道狭窄に対する新しい狭窄解除術の有効性と安全性を確認した。3.I期乳がんに対するラジオ波焼灼治療の有効性を明らかにした。4.前立腺・精嚢浸潤を伴う下部直腸進行癌症例でStoma-less状況が可能になる術式を開発した。5.後腹膜開放法の無作為化比較試験の症例集積がほぼ修了した。6.アクチゲニンを高濃度で含有する牛蒡子エキスの臨床導入を準備した。7.腹膜播種を伴う胃がんの治療法を開発た。8.胃全摘患者にグレリン補助療法が食欲不振改善、体重減少抑制に有効である事を確認した9.IVRによる緩和医療技術の確立を行った。
結論
がん患者の保持あるいは改善すべきQOLの低下は個別性が高い。本研究班では、機能を保持する事、失われた機能を再建する事、代償する事などを中心に研究してきた。個別の要素的技術は開発しその有効性と安全性の証明もをしたが、各々のQOLを指標とした評価は必ずしも成されていない。一方、低侵襲性の診断法、治療法の開発は、及び発症予防なども別の切り口を持った本研究班の研究課題である。本研究班では、極めて広い意味での緩和医療の技術を色々と適用可能にすることが目的である。治療法を緩和医療の観点から作り直す作業であると言える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200924029B
報告書区分
総合
研究課題名
QOLの向上をめざしたがん治療法の開発研究
課題番号
H19-3次がん・一般-030
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆一(国立がん研究センター東病院)
  • 井本 滋(杏林大学医学部付属病院)
  • 名川 弘一(東京大学医学部付属病院)
  • 齋藤 典男(国立がん研究センター東病院)
  • 内田 淳正(三重大学医学部)
  • 中塚 貴志(埼玉医科大学)
  • 佐々木 寛(東京慈恵会医科大学)
  • 萩原 明郎(同志社大学生命医科学部)
  • 荒井 保明(国立がん研究センター中央病院)
  • 古瀬 純司(杏林大学医学部付属病院)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 武藤 学(京都大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究プロジェクトは、厚生労働省第3次対がん十カ年戦略分野6の中で、医療経済、精神腫瘍、コミュニケーション患者支援に関わること以外の領域で、QOLを重視した治療法の開発を探索的におこない、この研究班の中で生み出された基盤的な技術が、臨床の中で比較試験として臨床試験を行える様に臨床導入の最初の部分を行う事を目的とした。より具体的には、1)切除可能例に対して根治性を犠牲にせずに機能温存、臓器温存を可能とする治療法の開発、2)がんの治療あるいは浸潤に伴って損なわれる様々なQOLを向上するための治療法の開発、3)難治のがんに対する低毒性の薬物療法の開発を目標にしている。
研究方法
これらは、いずれも日常診療の中での問題意識や創意工夫を基盤として発想されるいわゆる臨床研究の範疇であり、基本的には薬剤開発に準拠して、第Ⅰ相試験に相当するfeasibility試験から、第Ⅱ相試験に相当する有効性と安全性の検証試験、更には第Ⅲ相試験に相当する生命予後を検証する比較試験へと相別に評価が求められる。
結果と考察
この3年間で、下咽頭がんの切除・1次縫合や表在癌の内視鏡治療の確立をした。本研究班で開発した直腸癌の肛門温存法は広まってきている。尿路浸潤を伴う直腸癌のTPEの回避を目指した手術法は、適応決定も含め課題残る。リンパ浮腫を予防する子宮頚部がん体がんの術式臨床試験は症例登録は終了。リンパ管静脈吻合は広く一般化するため改良が必要。食道狭窄に対するRIC法の開発は長期の有効性と安全性の検証が必要。頭頚部食道領域の同時性・異時性多発癌のコントロールのためのIPCLに関わる遺伝子発現解析による予防法の研究は大きな可能性。グレリン投与による体重減少・食欲不振改善法は大きな可能性。薬物療法に関しては今後大いに期待できるが臨床試験の結果を待ちたい。再生医療の臨床応用に関iPS細胞などを利用した研究に、注目する必要がある。
結論
機能温存手術や臓器温存療法はがん患者の身体的QOLの向上に寄与し得るが、手技の安定化(標準化)と根治性の評価が課題である。また、外科手術や病勢の進行によって招来される患者QOLの障害についても、これを軽減する様々な支持療法の開発が可能である。この場合、生存をendpointとしていないことから第Ⅱ相比較試験でも有効性評価が可能である。その意味で、臨床試験の合理的な設定が課題となるが、QOLの指標尺度をどの様に設定するかを今後は検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
頭頚部特に下咽頭の表在癌を見出し、初期病変の概念を作研究会の組織化へと発展した。直腸癌に対する肛門温存手術法は全国的に広まりつつある。腹膜播種を伴う胃がんの化学療法、低毒性の新しい原理に基づく薬物療法、グレリン投与による体重減少食思不振予防法は臨床試験の段階に入った。
臨床的観点からの成果
頭頸部がんでは、同時性異時性多発癌が重要な問題であるが頭頚部の初期病変の概念が固まれば早いうちの治療や進行がんへの進展予防法の開発など全く新しい方向への発展が期待される。骨盤内臓器の手術療法におけるリンパ浮腫の発生予防、ストーマ無しあるいは減少は患者の術後生活に取り極めて大きなインパクトがある。膵がんや、腹膜播種を伴う胃がんなど難治癌の薬物療法の開発は臨床的に大きなインパクトがある。
ガイドライン等の開発
ガイドラインとして具体的には記載されないが、学会を通じて癌専門病院へと広く新しい技術が広まっている。
その他行政的観点からの成果
この研究の一部がスーパー特区に取り上げられている。新しい概念に基づく低毒性抗がん治療薬の開発である。
その他のインパクト
低毒性の新しい原理に基づく治療薬の開発に関しては何回かマスコミに取り上げられている。頭頚部の初期病変の概念及びこれらに対する治療に関しては対がん十カ年総合戦略事業の公開シンポジュウムでも取り上げられ大きな反響があった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
150件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計7件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsuchihara K, Suzuki Y, Esumi H, et al.
Massive transcriptional start site analysis of human genes in hypoxia cells.
Nucleic Acids Res. , 37 (7) , 2249-2263  (2009)
原著論文2
Hirayama A, Kami K, Esumi H, et al.
Quantitative metabolome profiling of colon and stomach cancer microenvironment by capillary electrophoresis Time-of-Flight mass spectrometry.
Cancer Res , 69 (11) , 4918-4925  (2009)
原著論文3
Yasumura T, Hayashi R, et al.
Functional Outcomes and Reevaluation of Esophageal Speech After Free Jejunal Transfer in Two Hundred Thirty-Six Cases
Annals of Plastic Surgery , 62 (1) , 54-58  (2009)
原著論文4
Imoto S, Wada N, Sakemura N, et al.
Feasibility study on radiofrequency ablation followed by partial mastectomy for stage I breast cancer patients
The Breast , 18 , 130-134  (2009)
原著論文5
Ishigami H, Kitayama J, Nagawa H. et al.
Phase I pharmacokinetic study of weekly intravenous and intraperitoneal paclitaxel combined with S-1 for advanced gastric cancer.
Oncology , 76 (5) , 311-314  (2009)
原著論文6
Ishigami H, Kitayama J, Nagawa H. et al.
Phase II study of weekly intravenous and intraperitoneal paclitaxel combined with S-1 for advanced gastric cancer with peritoneal metastasis.
Ann Oncol , 21 (1) , 67-70  (2010)
原著論文7
Hashimoto S, Shiokawa H, Saito N, et al.
Development and validation of a modified Fecal Incontinence Quality of Life Scale for postoperative evaluation of Japanese patients with rectal cancer
J Oncol.  (2010)
原著論文8
Saito N, Sugito M, Ito M, et al.
Oncologic outcome of intersphincteric resection for very low rectal cancer
Word J Surg , 33 (8) , 1750-1756  (2009)
原著論文9
Nakamura T, Kusuzaki K, Uchida A, et al.
A new limb salvage surgery in cases of high-grade soft tissue sarcoma using photodynamic surgery, followed by photo- and radiodynamic therapy with acridine orange.
J Surg Oncol. , 97 , 523-528  (2008)
原著論文10
Okazaki M, Asato H, Nakatsuka T, et al.
Analysis of salvage treatments following the failure of free flap transfer caused by vascular thrombosis in reconstruction for head and neck cancer.
Plast Reconstr Surg , 119 (4) , 1223-1232  (2007)
原著論文11
Tada H, Teramukai S, Sasaki H, et al.
Risk factors lower limb lymphedema after lymph node dissection in patients with ovarian and uterine carcinoma
BMC Cancer , 9 (47) , 1-17  (2009)
原著論文12
Kuriu Y, Yamagishi H, Hagiwara A, et al.
Regeneration of peritoneum using amniotic membrane to prevent postoperative adhesions.
Hepato-Gastroenterology , 56 , 1064-1068  (2009)
原著論文13
Kobayashi T, Arai Y, Takeuchi Y, et al.
Phase I/II clinical study of percutaneous vertebroplasty (PVP) as palliation for painful malignant vertebral compression fractures (PMVCF): JIVROSG-0202
Ann Oncol , 20 , 1943-1947  (2009)
原著論文14
Yamamoto K, Takiguchi S, Doki Y, et al.
Randomized phase II study of clinical effects of ghrelin after esophagectomy with gastric tube reconstruction
Surgery  (2010)
原著論文15
Adachi S, Takiguchi S, Doki Y, et al.
Effects of ghrelin administration after total gastrectomy: a prospective, randomized, placebo-controlled phase II study
Gastroenterology , 138 (4) , 1312-1320  (2010)
原著論文16
Ishii H, Furuse J,  Ikeda M, et al.
Phase II Study of Gemcitabine Chemotherapy Alone for Locally Advanced Pancreatic Carcinoma: JCOG0506.
Jpn J Clin Oncol.  (2010)
原著論文17
Okusaka T, Funakoshi A, Furuse J, et al.
A late phase II study of S-1 for metastatic pancreatic cancer
Cancer Chemother Pharmacol, , 61 (4) , 615-621  (2008)
原著論文18
Katada C, Muto M, et al.
Narrow band imaging for detecting superficial squamous cell carcinoma of the head neck in patients with esophageal squmaous cell carcinoma.
Endoscopy , 42 (3) , 185-190  (2010)
原著論文19
Muto M, Horimatsu T, et al
Narrow Band Imaging of the Gastrointestinal Tract
J Gastroenterol , 44 (1) , 13-25  (2009)
原著論文20
Yano T, Muto M , et al.
Long-term results of salvage endoscopic mucosal resection in patients with local failure after definitive chemoradiotherapy for esophageal squamous cell carcinoma.
Endoscopy , 40 , 717-721  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-