野生鳥獣由来食肉の食中毒発生防止と衛生管理ガイドラインの改良に資する研究

文献情報

文献番号
202224013A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣由来食肉の食中毒発生防止と衛生管理ガイドラインの改良に資する研究
課題番号
21KA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 壁谷 英則(日本大学生物資源科学部)
  • 宇根 有美(麻布大学獣医学部)
  • 鈴木 康規(北里大学 獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
イノシシ・シカを中心にE型肝炎ウイルス、SFTSウイルス、SARS-CoV-2の感染状況を調査し、消費者の摂食による感染リスク、狩猟者の狩猟時による感染リスク、解体者の解体時における感染リスクを彰隆にすることを目的とする。
研究方法
各研究者の報告を参照してください。
結果と考察
①野生鳥獣が保有する病原体(ウイルス)の汚染
状況に関する研究:1)野外調査計画、2)E 型肝炎ウイルスの実験室内解析法の確立、3)狩猟者および鳥獣肉を取扱者の感染症対策、② 野生鳥獣が保有する食中毒細菌の汚染状況と薬剤耐性に関する研究、③野生鳥獣が保有する病原体(寄生虫)の汚染状況に関する研究、④異常個体の病理学的検索とカラーアトラスの充実、⑤処理施設における解体処理工程での微生物汚染防止に関する研究、⑥食品製造や調理段階における食品リスクの軽減に関する研究、に関して研究を実施した。
結論
重要な内容を列記する。
1)E型肝炎ウイルス、SFTSウイルス、SARS-CoV-2ウイルスのイノシシとシカにおける感染状況を調査し、食肉からの感染、捕獲時・解体時における感染リスクが明らかになりつつある。2)シカ糞便18検体(12.9%)、イノシシ糞便1検体(2.3%)、食肉21検体(28.0%)から黄色ブドウ球菌が分離された。処理工程における流通食肉への糞便汚染が疑われた。全257検体においてCREは分離されなかった。セフォタキシムに耐性を示す株が、シカ糞便5検体(3.6%)から分離されたが、現時点では、野生獣が保有する株を原因とする薬剤耐性菌感染症の発生リスクは低いと予測される。3)アナプラズマ科細菌がヤクシカから高率に検出されたが、マダニからは検出されなかった。マダニからはマダニ共生菌と考えられるリケッチア科およびコクシエラ科細菌が検出された。アナグマからは、マダニ共生菌が血液からのみ検出され、脾臓からは検出されず、病原性のないリケッチアが一時的に血液中に存在する可能性が示された。ニホンザルからは特定できる細菌は検出されなかった。4)わが国で発生した旋毛虫食中毒の原因Trichinella T9の幼虫に対し、65℃で15分間の加熱を施し、マウスに経口摂食させたところ、感染性は消失した。北海道で捕獲された236頭のヒグマのうち6頭から、また北東北で捕獲された117頭のツキノワグマのうち1頭(岩手県)から、旋毛虫の幼虫が検出され、検出虫体は総て日本固有種のTrichinella T9と同定された。秋田県で捕獲されたイノシシ10頭についても、舌を対象に同様の検査を実施したが、旋毛虫は総て陰性であった。5)カラーアトラスの素材としてイノシシ、シカの臓器・組織のみならず、食肉衛生検査で摘発される豚、牛の共通疾患・病変をも採用してビジュアル的に理解しやすいようにした。今までに収集した検体数はイノシシおよびシカ延べ105件、2022年単年度で牛、豚および羊約300病変を収集・検査してカラーアトラス素材とした。これらの素材を用いて、カラーアトラス詳細版のサンプルを作成するとともに、簡易版カラーアトラスを作成した。なお、以上の活動過程で見出した特徴的病変の病理発生の解明の作業を継続した。6)「剥皮」と「内臓摘出」の作業順別では鹿において、「屋外」で処理されたものは、高度に一般細菌が検出される傾向があること、鹿、猪ともに、剥皮時に「のせ台」を用いた場合には、懸吊する場合に比べ、一般細菌が多く検出されること、「ウィンチ」と「手剥ぎ」では同程度の細菌汚染があること、が示された。野生鳥獣肉処理施設で処理された鹿、猪各1頭について、各処理工程における作業者、器具、と体等から拭き取りを行い、細菌叢解析を実施した結果、剥皮後、内臓摘出後、解体後などの作業者の手指やナイフから高度な細菌汚染が認められた。また、表皮洗浄による細菌減少効果は限定的であること、などが明らかとなった。熟成肉では、一般細菌数が増加するものの、大腸菌群・大腸菌は低下する傾向があること、わが国でインターネットにて市販されている野生鹿肉のうち一部の施設で販売されていたものにおいて極めて高度に細菌汚染をしているものがあること、が確認された。7)1施設由来のアナグマ食肉製品からサルモネラが検出されたほか、高い腸内細菌科菌群数が検出されたアナグマ食肉製品ではphylogroup B2に属する非定型腸管病原性大腸菌(aEPEC)の汚染を受けている実態を把握した。また、ジビエ生ハム製造に関する調査を開始し、塩蔵工程では温度及び塩分濃度の管理等が微生物制御に重要であることを示す知見を得た。このほか、カモ盲腸便からカンピロバクター及びaEPECが検出され、同食肉製品における当該病原細菌探索を開始した。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
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収支報告書

文献番号
202224013Z