香料を含む食品添加物の遺伝毒性から発がんに至る毒性評価スキーム確立に向けた基盤的研究

文献情報

文献番号
202224011A
報告書区分
総括
研究課題名
香料を含む食品添加物の遺伝毒性から発がんに至る毒性評価スキーム確立に向けた基盤的研究
課題番号
21KA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部)
  • 古濱 彩子(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 佐々 彰(千葉大学 大学院理学研究院生物学研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
26,731,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、香料の安全性をin silico、in vitroそしてin vivoで階層的に評価するスキームの開発を目的に、効率的かつ信頼性の高い遺伝毒性・発がん性の包括的評価法の構築を目指す。
研究方法
ジケトンなどカルボニル基を含有部分や互変異性体で変化しうる構造に注目したQSAR解析を行なった。
チミジンキナーゼ(TK)遺伝子突然変異試験をプラットフォームとして、エピジェネティックな変化を定量可能な新規試験法の検出能・定量性の評価を行った。
Alizarin類縁体のEmodinを用いてエピジェネティック変異原検出系FLO assayを行なった。
個別指定香料を除いた18類香料について年間使用量に関する情報を精査した。
Ames試験陽性物質である4-メチル-2-ペンテナール(MP)のin vivo遺伝子突然変異試験を実施した。
階層的評価におけるin vivo評価系として、肝遺伝毒性・発がん性中期包括試験法(GPGモデル)の有用性を検討するため、本法を用いてin silico及びin vitroで遺伝毒性が明らかになった6-methoxyquinoline (6-MQ)を評価した。
2-isopropyl-N-2,3-trimethylbutyramide(ITB)の毒性標的の一つである肝臓についてレポーター遺伝子変異原性試験を実施した。
結果と考察
18物質のAmes試験結果とQSAR予測結果は、知識ベースの予測では18物質中13物質が一致し、統計ベースでは、18物質中5物質が一致した。令和4年度に実施したAmes試験結果とQSAR予測結果は、全ての物質でAmes試験陰性であり、統計ベースQSARのInconclusiveを陽性と判断すると、2物質において 試験結果と2つのQSAR予測結果が一致し、1物質がAmes試験結果と2つのQSAR予測結果が不一致であった。
LmTK6株のTKレポーター遺伝子には、プロモーターのDNAメチル化と活性型ヒストンマークH3K4me3が共存することが示された。DNAメチル化阻害候補物質GSK-3484862の処理によってTK復帰頻度は1,900倍まで上昇したのに対して、RG108の処理によるTK復帰頻度の変化はみられなかった。
FLO assayの妥当性確認の一環としてEmodinに対してFLO assayを行なった結果、用量依存的に凝集性が促進される傾向を確認した。
流通実態調査結果に基づき、類ごとの品目数を比較したところ、エステル類が最も多かった。類ごとの国内使用量の割合においては、エステル類、次いでケトン類が多いことが分かった。使用量の最も多い香料はエチルマルトール、次いでδ-ドデカラクトンであった。
MPに対するTK6試験の本試験は、375 µMを最高用量として等差25 µMで6用量を実施した。その結果、最高用量のMutant Frequency値(MF)は12.1 x 10-6であった。大森法による統計処理の結果、MPは陽性と判定されたが、当ラボにおける未処理群のMFは3.5~5.5 x 10-6の範囲にあり、そのMFは、わずか約2倍の上昇なことから、専門家判断として弱い陽性であると判定した。
Quinoline投与群のgpt変異体頻度は対照群に比べ有意な高値を示し、変異スペクトラム解析の結果、G:C-C:Gトランスバージョンの増加を特徴とする塩基置換型の点突然変異頻度が有意に増加した。一方、6-MQおよび8-HQ投与群におけるgpt変異体頻度及び変異スペクトラムに有意な変化は認められなかった。Quinoline投与群のSpi-変異体頻度は対照群に比べ有意な高値を示した一方、6-MQおよび8-HQ投与群では有意な変化は認められなかった。
ITBについては、全身諸臓器の病理組織学的検索を行った結果、肝臓では肝細胞の空胞化が50 mg/kg群から認められた。一方、その他の臓器においてITBの投与に起因した変化は認められなかった。ITBの毒性標的臓器の一つである肝臓についてgpt assay及びSpi- assayによる遺伝毒性評価を行った結果、いずれのITB投与群においてもgpt及びSpi- MFsの有意な変化は認められなかった。また、gpt遺伝子の変異スペクトラム解析において、ITBに投与に起因した変異パターンの変化は認められなかった。

結論
本研究課題で掲げる目的に対し、各階層からのアプローチによる研究を継続実施したことで、効率的且つ信頼性の高い安全評価法の開発にむけた基礎知見並びに予備検討結果の蓄積が進んだ。

公開日・更新日

公開日
2023-07-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202224011Z