加工食品の輸出拡大に向けた規格基準設定手法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202224009A
報告書区分
総括
研究課題名
加工食品の輸出拡大に向けた規格基準設定手法の確立のための研究
課題番号
20KA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部栄養学科)
  • 佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,644,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、近年行われた全国食事調査データを活用し、加工食品からの化学物質の摂取量を精密に推定できる新たな手法の開発を目的とする。
研究方法
①加工食品の摂取状況を把握するための全国食事調査のデータ解析
 食事記録データや食事質問票をもとに食品を加工レベルに応じて分類するシステムを構築し、日本人における加工食品の摂取状況から、超加工食品の摂取と関連する因子を明らかにするために、超加工食品の摂取量と食事の質、尿中リン・カリウム・ナトリウム排泄量、食品選択の価値観およびフードリテラシー、年齢、性別、喫煙状況等の個人的特性との関連を検討した。さらに、加工食品等の食品からの残留農薬の摂取量を解析できるようにするために、残留農薬等の基準値が設定されている313種類の食品に、日本標準食品成分表の食品番号をあてはめた。
②調理加工係数のデータベースの構築
 日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載されている食品について、調理加工係数を推定する方法を考案し、それに基づき算出した調理加工係数に関するデータベースを作成し、その根拠資料とともにウェブで公開した。
③加工係数予測モデルの開発
 農薬の物理化学的性質に基づいてPFを推定可能なPF予測モデルを開発することを目的とした。トマトの加工食品であるjuice, wet pomace及びdry pomaceを対象とし、PF及び農薬の物性値との関連性について詳細に解析した上で、正則化回帰法elastic netによるPF予測モデルの構築を行った。
 ①~③の研究結果をもとに、最新の全国食事調査データ、調理加工係数、ならびに加工係数を用いた残留農薬等のばく露量を精密に推定する手法を開発し、推計されたばく露量と国内外の基準値と比較して考察した。
結果と考察
①加工食品の摂取状況を把握するための全国食事調査のデータ解析
 超加工食品は日本人の総エネルギー摂取量のうち4分の1から半分程度を占めており、日本人の食生活に一定程度寄与していることが示された。超加工食品が健康状態を悪化させる可能性があることを考えると、とくに若年者や喫煙者といった超加工食品の摂取割合が比較的大きい層を対象にした栄養教育が必要であるかもしれない。また、年齢や喫煙状況だけでなく、たとえば女性では栄養の知識などが超加工食品の摂取量と有意な関連がみられることから、栄養の知識をつけるなどの個々人の食品選択の価値観やフードリテラシーに応じた対策も有用だと考えられる。また、食事データから残留農薬の摂取量を解析できるようにするためには、現行の各食品分類名に食品成分表からどの食品番号を付与すべきかについて今後さらなる検討が必要であると考えられる。
②調理加工係数のデータベースの構築
 日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載されている加工食品2,428食品について、原材料的作物への分解係数(調理加工係数)を推定し、データベース化した。
③加工係数予測モデルの開発
 JMPR及びトマト加工試験のPFデータを解析することにより、トマトのjuice, wet pomace及びdry pomaceにおけるPFと農薬の物性値の間に有意な相関が認められることを明らかにした。また、PFと相関が認められた農薬の物性値を説明変数として、正則化回帰法elastic netを用いて開発したPF予測モデルは、一定の精度をもってPFを予測可能であると考えられた。
結論
①~③の研究で得られた情報を精査し、加工食品の摂取量、調理加工係数ならびに加工係数を考慮した、日本人が摂取する食品全体からの残留農薬等のばく露量の推計手法を開発した。特に摂取量の多い作物である玄米を例に、それを原材料に含むすべての食品からの残留農薬等のばく露量を推計した。推計されたばく露量のADIに対する割合は、国内産玄米から2018年度に検出されたFenitrothionの16.7%、海外産玄米から2018年度に検出されたChlorpyrifosの0.0142%以下であった。この結果は、国内で流通する玄米について、一生涯に渡って毎日摂取し続けたとしても、残留農薬等による健康に影響を生じるおそれはないレベルの残留量であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-01-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224009B
報告書区分
総合
研究課題名
加工食品の輸出拡大に向けた規格基準設定手法の確立のための研究
課題番号
20KA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公亮(国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部栄養学科)
  • 佐々木 敏(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、加工食品から受ける残留農薬等のばく露量を明らかにすることを目的に、ばく露量推計に必要なデータベースと計算ツールを開発する。
研究方法
分担研究者 吉池は、日本の加工食品の原材料分解に必要な調理加工係数を設定し、公開データベース化した。

分担研究者 佐々木は、日本人の加工食品の摂取状況を明らかにすることを目的として、平成28 年度から令和2 年度にかけて全国食事記録調査を実施し、そのデータを集計して1歳以上79 歳以下の対象者における食品および食品群の摂取量の分布を明らかにした。また、超加工食品の摂取量と食事の質との関連を調査し、超加工食品の摂取量と尿中のリン・カリウム・ナトリウム排泄量との関連、超加工食品の摂取量と、食品選択の価値観およびフードリテラシーとの関連、超加工食品の摂取量と、年齢、性別、喫煙状況等の個人的特性との関連の検討を行った。残留農薬等の基準値が設定されている食品分類名への日本食品標準成分表の食品番号の付与を行った。

分担研究者 中村と山崎は、調理加工に伴う残留農薬等の量の変化に関する情報を残留農薬等の規格基準設定に係る国際会議(Joint FAO/WHO Meeting on Pesticide Residues [JMPR]やJoint FAO/WHO Meeting on Pesticide Specifications [JMPS])の報告書ならびに評価書から収集し、残留農薬等の量の減衰や濃縮による変化の割合(加工係数;Processing factor, PF)を予測できる方法を開発した。
結果と考察
最新の全国食事調査データを精査し、加工食品を含む食品からの残留農薬等の化学物質のばく露量を推計できるツールを開発した。厚生労働行政で活用できるよう、推計に用いた日本人の食品の摂取量、調理加工係数、ならびに、残留農薬等の加工係数に関する情報を取り纏め、データベース化した。食品からの残留農薬等の長期ばく露量を推計し、国内外の基準と比較した。日本人の摂取する量の多い作物の一つである玄米と、それを加工した食品を含むすべての食品の摂取量から推計された残留農薬等のばく露量のADIに対する割合は、国内産玄米から2018年度に検出されたFenitrothionの16.7%が最高値で、海外産玄米からは、同年度に検出されたChlorpyrifos0.0142%が最高値であった。この結果は、国内で流通する玄米について、一生涯に渡って毎日摂取し続けたとしても、残留農薬等による健康に影響を生じるおそれはないレベルの残留量(対ADI比20%以下)であることが示唆された。
結論
本研究では、最新の全国食事調査データを活用し、残留農薬等の検査や基準値が設定されている作物を加工した食品を含む、すべての加工食品からの残留農薬等のばく露量を推計するツールを開発した。今後、玄米以外の作物を原材料にしたすべての食品を摂取した場合の残留農薬等のばく露量を算出し、ADIと比較することで、日本産の食品の安全性の確認する方法の一つとして、日本の輸出入に係わる食品の安全性の評価の一助につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-01-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224009C

収支報告書

文献番号
202224009Z