新しい薬物療法の導入とその最適化に関する研究

文献情報

文献番号
200924024A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい薬物療法の導入とその最適化に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 南 博信(神戸大学医学部附属病院)
  • 小泉 史明(国立がんセンター研究所)
  • 桑野 信彦(九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点)
  • 掛谷 秀昭(京都大学大学院薬学研究科)
  • 杉本 芳一(慶應義塾大学薬学部)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 野口 眞三郎(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子標的治療薬を中心とした新しい薬物療法の最適化を目指し、(1)臨床検体を用いた効果・毒性に関わるバイオマーカーの探索、(2)薬剤感受性/耐性規定因子の解析と新たな標的分子探索、を実施する。
研究方法
本研究組織は、研究代表者の他、8名の分担研究者で構成される。基礎研究においては、施設の倫理規定等に従って、動物実験には適正飼育を行い、苦痛を最小限に抑えるよう配慮する。臨床研究においては、ヘルシンキ宣言、臨床研究およびヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に従い、IRB承認、被験者の同意、個人情報の遵守を必須とする。
結果と考察
(1)EGFR-TKIによる急性肺障害に関わる遺伝子多型を見出した。(2)乳癌遺伝子発現プロファイルから化学療法効果予測系を樹立した。(3)HER2阻害剤の耐性にPIK3CA遺伝子変異が関わる。(4)ソラフェニブはKRAS野生型肺癌細胞ではB-RAFをKRAS変異細胞ではC-RAFを標的に効果を発揮する。(5)スニチニブはリンパ管新生を阻害してリンパ節転移を抑制する。(6)ボルテゾミブの血管内皮細胞に対する阻害作用とアポトーシス誘導の機序を明らかにした。(7)C7orf24遺伝子発現について転写調節機構とNF-Y関与を明らかにした。(8)肺癌細胞においてYB-1はEGFR, HER2/3、Met発現およびEGFR-TKI感受性に関与した。(9)多くの癌に発現するABCB5は、膜貫通領域とATP結合領域を持つ1257アミノ酸のABC輸送体である。
結論
本研究で得られた、分子標的薬の効果毒性など薬力学的作用のメカニズム、規定因子の解明、予測システムの樹立は、予後・治療効果の予測バイオマーカーとして有望であり、個別化治療への応用も期待される。また、耐性機構の解明や新たな標的分子の探索は、は治療効果増強、創薬に向け重要な知見といえる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200924024B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい薬物療法の導入とその最適化に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(国立がんセンター中央病院 総合病棟部)
研究分担者(所属機関)
  • 南 博信(神戸大学医学部附属病院)
  • 小泉 史明(国立がんセンター研究所)
  • 桑野 信彦(九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点)
  • 掛谷 秀昭(京都大学大学院薬学研究科)
  • 杉本 芳一(慶應義塾大学薬学部)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 野口 眞三郎(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子標的治療薬を中心とした新しい薬物療法の最適化を目指し、(1)臨床検体を用いた効果・毒性に関わるバイオマーカーの探索、(2)薬剤感受性/耐性規定因子の解析と新たな分子標的の探索、を実施する。
研究方法
研究組織は、研究代表者の他、8名の分担研究者で構成される。基礎研究では、施設の倫理規定等に従い、動物実験には適正飼育を行い、苦痛を最小限とした。臨床研究では、臨床研究およびヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に従い、IRB承認、被験者の同意、個人情報の遵守を必須とした。
結果と考察
(1)肺癌化学療法におけるCEC値の意義を検討した。(2)EGFR-TKIによる急性肺障害の関連遺伝子多型を見出した。(3)乳癌の発現解析より効果予測系を樹立した。(4)胃癌の発現解析から新規癌遺伝子、生存期間関連遺伝子を同定した。(5)YB-1はHER1/2/3、Met発現やEGFR-TKI感受性に関与する。(6)EGFRの糖鎖修飾はEGFR-TKI感受性に関わる。(7)HER2陽性乳癌のHER2阻害剤耐性にPIK3CA遺伝子変異が関わる。(8)ソラフェニブはKRAS野生型肺癌細胞ではB-RAFをKRAS変異細胞ではC-RAFを標的とする。(9)BCRP導入によるEGFR-TKI感受性変化を検討した。(10)新規血管新生抑制物質エポキシシノールBおよびアザスピレンを見出し、作用機序を解析した。
新たな薬物療法から最大限の効果を引き出すには、作用メカニズムの解明、効果・毒性の予測バイオマーカーの探索、感受性/耐性規定因子の解析に基づく治療の最適化が不可欠といえる。基礎研究者と臨床研究者の密接な研究連携が本研究の特徴である。
結論
本研究で得られた、分子標的薬の薬力学的作用のメカニズム、規定因子の解明、予測システムの樹立は、予後・治療効果の予測バイオマーカーとして有望であり、個別化治療への応用も期待される。また、耐性機構の解明や新たな標的分子の探索は、は治療効果増強、創薬に向け重要な知見となりうる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
主な成果は以下のとおりである。(1)肺癌化学療法におけるCEC値の意義を検討した。(2)EGFR-TKIによる急性肺障害の関連遺伝子多型を見出した。(3)乳癌発現解析より効果予測系を樹立した。(4)胃癌発現解析から新規癌遺伝子、予後関連遺伝子を同定した。(5)EGFRの糖鎖修飾はTKI感受性に関わる。(6)HER2陽性乳癌のHER2阻害剤耐性にPIK3CA遺伝子変異が関わる。(7)ソラフェニブはKRAS野生型肺癌細胞ではB-RAF、KRAS変異細胞ではC-RAFを標的とする。
臨床的観点からの成果
本研究における、分子標的薬の薬力学的作用のメカニズムおよび規定因子の解明、予測システムの樹立は、予後・治療効果の予測バイオマーカーとして有望であり、個別化治療への応用も期待される。また、耐性機構の解明や新たな標的分子の探索は、は治療効果増強、創薬に向け重要な知見といえる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
本研究によりもたらされる、効果・毒性の予測バイオマーカーの確立、これに基づく治療の最適化により、難治がんの治療成績の向上が期待される。難治がんの治療成績の向上は、国民福祉への大きな貢献であり、我が国のがん薬物療法の研究レベルの高さを世界に示すものである。
その他のインパクト
最大限の治療効果を得るためには、臨床検体を用いた効果毒性の規定因子の解析、基礎での感受性/耐性規定因子の解明に基づく、「治療の最適化」の構築が必須である。これには、本研究のような基礎研究者と臨床研究者が密接に連携した研究体制が必須であり、本研究の特徴といえる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
92件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計9件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fukui, T., Tamura, T., Koizumi, F., et al.
Synergistic interactions between the synthetic retinoid tamibarotene and glucocorticoids in human myeloma cells
Cancer Sci. , 100 (6) , 1137-1143  (2009)
原著論文2
Kawaishi, M. Tamura, T., Koizumi, F., et al.
Circulating endothelial cells in non-small cell lung cancer patients treated with carboplatin and paclitaxel
J. Thorac. Oncol. , 4 (2) , 208-213  (2009)
原著論文3
Yamada, Y., Koizumi, F., Nishio, K., et al.
Identification of prognostic biomarkers in gastric cancer using endoscopic biopsy samples
Cancer Sci. , 99 (11) , 2193-2199  (2008)
原著論文4
Fukai, J., Nishio, K., Koizumi, F., et al.
Antitumor activity of cetuximab against malignant glioma cells overexpressing EGFR deletion mutant variant
Cancer Sci. , 99 (10) , 2062-2069  (2008)
原著論文5
Kashihara, M., Azuma, K., Kuwano, M., et al.
Nuclear Y-box binding protein-1 (YB-1) a predictive marker of prognosis, is correlated with expression of HER2/ErbB2 and HER3/ErbB3 in non-small cell lung cancer
J Thoracic Oncology , 4 (9) , 1066-1074  (2009)
原著論文6
Hosoi, F., Nishio, K., Kuwano, M., et al.
N-myc downstream regulated gene 1/Cap43 suppresses tumor growth and angiogenesis of pancreatic cancer through attenuation of IKKbeta expression
Cancer Res. , 69 (12) , 4983-4991  (2009)
原著論文7
Fujii, T., Nishio, K., Kuwano, M., et al.
Expression of HER2 and estrogen receptor alpha depends upon nuclear localization of Y-box bindingc protein-1 in human breast cancers
Cancer Res. , 68 (5) , 1504-1512  (2008)
原著論文8
Basaki, Y., Nishio, K., Kuwano, M., et al.
Akt-dependent nuclear localisation of Y-box-binding protein 1 in acquisition of malignant characteristics by human ovarian cancer cells
Oncogene , 26 , 2736-2746  (2007)
原著論文9
Noguchi, K., Kawahara, H., Sugimoto, Y., et al.
Substrate-dependent bidirectional modulation of P-glycoprotein-mediated drug resistance by erlotinib
Cancer Sci. , 100 (9) , 1701-1707  (2009)
原著論文10
Katayama, K., Shibata, K., Sugimoto, Y., et al.
Pharmacological interplay between breast cancer resistance protein and gefitinib in epidermal growth factor receptor signaling
Anticancer Res. , 29 (4) , 1059-1065  (2009)
原著論文11
Katayama, K., Masuyama, K., Sugimoto, Y., et al.
Flavonoids inhibit breast cancer resistance protein-mediated drug resistance: transporter specificity and structure-activity relationship
Cancer Chemother Pharmacol. , 60 (6) , 789-797  (2007)
原著論文12
Takahashi, S., Aiba, K., Sugimoto, Y., et al.
Pilot study of MDR1 gene transfer into hematopoietic stem cells and chemoprotection in metastatic breast cancer patients
Cancer Sci. , 98 (10) , 1609-1616  (2007)
原著論文13
Tanaka,K., Nakagawa, K., Nishio, K., et al.
SRPX2 is overexpressed in gastric cancer and promotes cellular migration and adhesion
Int J Cancer , 124 , 1072-1080  (2009)
原著論文14
Matsumoto, K., Tamura, T., Nishio, K., et al.
mTOR signal and hypoxia-inducible factor-1 alpha regulate CD133 expression in cancer cells
Cancer Res. , 69 (18) , 7160-7164  (2009)
原著論文15
Maegawa, M., Arao, T., Nishio, K., et al.
EGFR mutation up-regulates EGR1 expression through the ERK pathway
Anticancer Res. , 29 (4) , 1111-1117  (2009)
原著論文16
Maegawa, M., Arao, T., Nishio, K., et al.
Epidermal growth factor receptor lacking C-terminal autophosphorylation sites retains signal transduction and high sensitivity to epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor
Cancer Sci. , 100 (3) , 552-557  (2009)
原著論文17
Matsumoto, K., Yokote, H., Nishio, K., et al.
N-Glycan fucosylation of EGFR modulates receptor activity and sesitivity to EGFR tyrosine kinase inhibitors
Cancer Sci. , 99 (8) , 1611-1617  (2008)
原著論文18
Sakai, K., Tamura, T., Nishio, K., et al.
Pertuzumab, a novel HER dimerization inhibitor, inhibits the growth of human lung cancer cells mediated by the HER3 signaling pathway
Cancer Sci. , 98 (9) , 1498-1503  (2007)
原著論文19
Kimura, H., Tamura, T., Nishio, K., et al.
Antibody-dependent cellular cytotoxicity of cetuximab against tumor cells with wild-type of mutant epidermal growth factor receptor
Cancer Sci. , 98 (8) , 1275-1280  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-