文献情報
文献番号
202224006A
報告書区分
総括
研究課題名
食品及び食品用容器包装に使用される新規素材の安全性評価に関する研究
課題番号
20KA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
- 安達 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,659,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、食品及び食品用容器包装用途に使用され、経口及び経皮等から暴露されるナノマテリアル等の新規素材について、安全性評価に資するデータの蓄積、評価方法の検討並びにその暴露状況やリスク評価に関する国際動向の把握を目的とする。
研究方法
経皮及び経口暴露の頻度が高い食品・食品用容器包装用途のナノマテリアルであるナノ酸化チタンやナノ銀等について、異なる生体影響が示唆されている直径10 nm以下(6 nm)の小粒子径の被験物質を用いた反復投与による詳細な毒性試験を実施した。一般毒性については、強制経口による90日間反復投与毒性試験を実施し、毒性プロファイル及び体内動態を解析した。免疫毒性については、これまでに確立しているアレルゲン経皮感作+経口惹起実験系を用いて、ナノマテリアルが免疫系に与える影響及びサイズ並びに量との関連等について検討した。また、食品関連分野で使用あるいは関連製品に混入する可能性のあるナノマテリアル等の新規素材の安全性評価に関する国際動向調査を実施した。
結果と考察
・F344ラットを用いた一次粒径6 nmのナノ酸化チタンの28日間投与による用量設定試験を実施し、その結果に基づいて、90日間反復投与毒性試験の投与量を100、300、1000 mg/kg bw/dayと設定して、F344ラット雌雄を用いた90日間の強制経口投与試験を行った。一般状態、体重変化、摂餌量、血液検査、血液生化学検査、臓器重量測定及び病理組織学的検査において、投与に関連した明らかな毒性影響は見られなかった。90日試験の病理組織学的検査においては、酸化チタン投与群において、回腸パイエル板等のリンパ組織に被験物質の沈着が認められ、経口暴露によって消化管から生体内に微量ながら酸化チタンが取込まれることが示唆された。令和4年度は、ナノ酸化チタンの生体への取込と粒子サイズの関係を検討するため、一次粒径が 6 nm, 30 nm 及び180 nmの3種類の酸化チタン(何れもアナターゼ型)について、1000 mg/kg bw/dayの用量で、F344ラットを用いた90日間反復投与毒性試験を実施した。いずれの粒子径の二酸化チタン粒子投与群でも小腸パイエル板等リンパ組織への粒子の沈着は観察されたが、炎症や組織障害などの毒性影響は観察されなかった。
・ナノ酸化チタン等の同時暴露がアレルゲンによる感作やその後のアレルギー症状惹起に与える影響を検討した。マウスを用いる経皮感作+経口惹起実験系を使用し、モデルアレルゲンとしては卵白アルブミン(OVA)を用いた。具体的には、雌性BALB/cマウスの背面片側を剃毛し、翌日よりOVA(1-2 μg)を3日間連続貼付/週にて4週間経皮感作を行った。感作終了の翌週から、OVA 30 mgの複数回経口投与による追加免疫を実施し(3回/週の頻度で7回程度)、最後にOVA 50 mgを経口投与してアレルギー症状を惹起した。OVA特異的抗体の血中濃度や経口投与後の体温低下・下痢症状等を指標とし、ナノ酸化チタン等が経皮感作及びその後の経口暴露に与える影響について、粒子径や結晶型の違い等も含めて検討した。令和2-3年度は、粒子径6 nm、15 nm、及び30 nmのナノ酸化チタンを経口追加免疫時にOVAと共存させ、その影響について検討した。令和4年度は、粒子径6 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンを経皮感作時及び経口追加免疫時の両過程においてOVAと共存させ、その影響を検討した。これまでの検討と同様にOVA経皮感作及び経口追加免疫の増強効果が見られたが、経皮感作時の共存による経口追加免疫増強効果に対する影響は見られなかった。
・食品関連分野のナノマテリアル並びに新規素材の安全性評価に関する国際動向調査を担当した。令和2年度は、FDAのワークショップ等について調査した。令和3年度は、EFSAの新ガイドライン(2018年)を捕捉するテクニカルガイダンス案について、第11回食品と試料のナノテクノロジーに関するネットワーク会議(2021年10月29日Web会議)を調査した。令和4年度は、食品と飼料のナノテクノロジーに関するネットワーク会議(2022年10月24-25日)及びFDAが10月に行ったFDA’s Nano Day Virtual Research Symposiumについて調査した。
・ナノ酸化チタン等の同時暴露がアレルゲンによる感作やその後のアレルギー症状惹起に与える影響を検討した。マウスを用いる経皮感作+経口惹起実験系を使用し、モデルアレルゲンとしては卵白アルブミン(OVA)を用いた。具体的には、雌性BALB/cマウスの背面片側を剃毛し、翌日よりOVA(1-2 μg)を3日間連続貼付/週にて4週間経皮感作を行った。感作終了の翌週から、OVA 30 mgの複数回経口投与による追加免疫を実施し(3回/週の頻度で7回程度)、最後にOVA 50 mgを経口投与してアレルギー症状を惹起した。OVA特異的抗体の血中濃度や経口投与後の体温低下・下痢症状等を指標とし、ナノ酸化チタン等が経皮感作及びその後の経口暴露に与える影響について、粒子径や結晶型の違い等も含めて検討した。令和2-3年度は、粒子径6 nm、15 nm、及び30 nmのナノ酸化チタンを経口追加免疫時にOVAと共存させ、その影響について検討した。令和4年度は、粒子径6 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンを経皮感作時及び経口追加免疫時の両過程においてOVAと共存させ、その影響を検討した。これまでの検討と同様にOVA経皮感作及び経口追加免疫の増強効果が見られたが、経皮感作時の共存による経口追加免疫増強効果に対する影響は見られなかった。
・食品関連分野のナノマテリアル並びに新規素材の安全性評価に関する国際動向調査を担当した。令和2年度は、FDAのワークショップ等について調査した。令和3年度は、EFSAの新ガイドライン(2018年)を捕捉するテクニカルガイダンス案について、第11回食品と試料のナノテクノロジーに関するネットワーク会議(2021年10月29日Web会議)を調査した。令和4年度は、食品と飼料のナノテクノロジーに関するネットワーク会議(2022年10月24-25日)及びFDAが10月に行ったFDA’s Nano Day Virtual Research Symposiumについて調査した。
結論
TiO2の生体影響に対する結晶子径の影響は小さいことが示された。粒子径6 nm・アナターゼ型のナノ酸化チタンはOVA経皮感作及び経口追加免疫を増強したが、経皮感作時の共存による経口追加免疫増強効果に対する影響は見られなかった。また、今後の欧米における食品関連物質のナノマテリアル評価動向は、より具体的なガイダンスの適用例や詳細な評価手法の開発に関するが議論が中心となっていくものと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-06-22
更新日
-