動物性食品輸出の規制対策のための研究

文献情報

文献番号
202224005A
報告書区分
総括
研究課題名
動物性食品輸出の規制対策のための研究
課題番号
20KA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
25,638,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧州理事会指令規則のB物質(抗菌剤物質、駆虫剤、抗コクシジウム等)のうち、牛及び鶏においてモニタリング部位が肝臓又は腎臓となっている物質について、筋肉を対象とした分析法を開発し、確立した分析法について妥当性評価を実施することにより、モニタリング検査で検出された場合に輸出再開に向けた迅速な対応が取れる体制を整備することを目的とする。また加熱加工原料のみならず、効果的な殺菌方法による食中毒の発生予防措置をとった上で、加熱加工原料用以外の転用を可能にするために、国内食肉処理施設において、牛枝肉表面のSTECについて定性的・定量的検出を行う。また各種殺菌剤について、生理食塩水や液体培地中のSTEC浮遊液での消毒効果を検証し、加えて牛肉での効果を予備的に検証することを目的とする。
研究方法
鶏の筋肉を対象として14分析法(ドラメクチン分析法、レバミゾール分析法、トリクラベンダゾール分析法等の 27化合物)を確立し、これらの分析法の確立と妥当性評価を行った。国内食肉処理施設において、牛枝肉表面のSTECについて定性的・定量的検出を行った。方 USDA/FSISの試験法を参考に志賀毒素遺伝子・大腸菌O抗原遺伝子検出のスクリーニングを行い、分離株の血清型別、毒素型別等の解析を行った。また、各種殺菌剤について、生理食塩水や液体培地中のSTEC浮遊液での消毒効果を検証した。また牛肉での効果を検証した。
結果と考察
鶏の筋肉を対象として抗菌性物質以外のB物質27化合物の分析法(14分析法)を確立し、妥当性評価試験を実施した。その結果、いずれの分析法も良好な結果(真度、併行精度、室内精度及び選択性)が得られ、鶏の筋肉を対象とした分析法として妥当であることが示された。牛枝肉のSTEC調査では、2022年5月から2023年1月に5施設の協力のもとに牛枝肉合計137検体を供試した。また、別の1施設については、計24検体を生菌数の測定のみに供試した。1検体(0.7%)からSTEC O157:H7が分離されたが、1検体のみであったことからウシの種類や性別などの特徴については考察には至らなかった。培養液から分離されたSTEC7血清群に該当しないstx遺伝子またはeae遺伝子を保有する菌株も分離されたことから指標菌とし食肉の衛生管理に役立つことも考えられた。牛肉の消毒効果の検討では、消毒薬として、過酢酸(100 ppm、200 ppm、500 ppm)および乳酸(4%)を選択し、牛肉でのSTEC(O157)の消毒効果を検証した。滅菌水よりも消毒液によるかけ流しの方がSTECの減少効果があった。また、消毒液を55℃に加温することによる減少効果は認められなかった。しかし、酸臭軽減の効果があることが判明した。さらに、消毒後の滅菌水洗浄は、酸臭の軽減対策として有効であった。
結論
鶏の筋肉を対象として抗菌性物質以外のB物質27化合物の分析法(14分析法)を確立し、妥当性評価試験を実施した。その結果、いずれの分析法も良好な結果(真度、併行精度、室内精度及び選択性)が得られ、鶏の筋肉を対象とした分析法として妥当であることが示された。本研究で確立した分析法を用いることにより、B物質が鶏のモニタリング部位から検出された場合にも速やかに鶏の筋肉(可食部位)の検査を実施することができ、EUへ動物性食品を輸出する際に求められる検査を円滑に進めることが可能と考えられる。牛枝肉のSTEC調査では、2022年5月から2023年1月に5施設の協力のもとに牛枝肉合計137検体を供試した。また、別の1施設については、計24検体を生菌数の測定のみに供試した。1検体(0.7%)からSTEC O157:H7が分離されたが、1検体のみであったことからウシの種類や性別などの特徴については考察には至らなかった。培養液から分離されたSTEC7血清群に該当しないstx遺伝子またはeae遺伝子を保有する菌株も分離されたことから指標菌とし食肉の衛生管理に役立つことも考えられた。今後も、と畜場において解体処理工程では注意深い取り扱いが必要である。牛肉の消毒効果の検討では、消毒薬として、過酢酸(100 ppm、200 ppm、500 ppm)および乳酸(4%)を選択し、牛肉でのSTEC(O157)の消毒効果を検証した。加えて、消毒効果の向上を期待して55℃に加温した消毒液、酸臭の軽減対策として消毒後の滅菌水洗浄を試みた。結果として、滅菌水よりも消毒液によるかけ流しの方がSTECの減少効果があった。また、消毒液を55℃に加温することによる減少効果は認められなかった。しかし、酸臭軽減の効果があることが判明した。さらに、消毒後の滅菌水洗浄は、酸臭の軽減対策として有効であった。

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224005B
報告書区分
総合
研究課題名
動物性食品輸出の規制対策のための研究
課題番号
20KA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
穐山 浩(星薬科大学 薬学部 薬品分析化学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 志田 静夏(齊藤 静夏)(国立医薬品食品衛生研究所 食品部)
  • 工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧州理事会指令規則のB物質(抗菌剤物質、駆虫剤、抗コクシジウム等)のうち、牛及び鶏においてモニタリング部位が肝臓又は腎臓となっている物質について、筋肉を対象とした分析法を開発し、確立した分析法について妥当性評価を実施することにより、モニタリング検査で検出された場合に輸出再開に向けた迅速な対応が取れる体制を整備することを目的とする。また加熱加工原料のみならず、効果的な殺菌方法による食中毒の発生予防措置をとった上で、加熱加工原料用以外の転用を可能にするために、国内食肉処理施設において、牛枝肉表面のSTECについて定性的・定量的検出を行う。また各種殺菌剤について、生理食塩水や液体培地中のSTEC浮遊液での消毒効果を検証し、加えて牛肉での効果を予備的に検証することを目的とする。
研究方法
本研究ではB物質のうち、牛及び鶏においてモニタリング部位が肝臓または腎臓の物質について筋肉を対象とした分析法(39分析法)を確立し、これらの分析法の確立と妥当性評価を行った。国内食肉処理施設において、牛枝肉表面のSTECについて定性的・定量的検出を行った。方 USDA/FSISの試験法を参考に志賀毒素遺伝子・大腸菌O抗原遺伝子検出のスクリーニングを行い、分離株の血清型別、毒素型別等の解析を行った。また、各種殺菌剤について、生理食塩水や液体培地中のSTEC浮遊液での消毒効果を検証した。また牛肉での効果を検証した。
結果と考察
EUに動物性食品を輸出するためには、モニタリング検査おいてB物質がモニタリング部位(肝臓、腎臓等)から検出された場合は筋肉(可食部位)の検査を行い、基準値を超過した場合に原因等の調査が求められる。本研究ではB物質のうち、牛及び鶏においてモニタリング部位が肝臓または腎臓の物質について筋肉を対象とした分析法(39分析法)を確立した。妥当性評価試験を実施した結果、真度73.4~115.7%、併行精度1.1~11.7%、室内精度2.3~19.9%となり、良好な結果が得られた。いずれの分析法も筋肉を対象とした分析法として妥当であることが示された。牛肉のSTEC汚染リスク低減のための研究を実施した。牛枝肉のSTEC調査では、2020年10月から2023年1月に食肉検査所(生菌数のみ測定の1ヵ所を除く11ヵ所)の協力のもとに牛枝肉合計480検体から7血清群のSTECを対象とした試験を行った。この結果、3検体(0.6%)からSTEC O157が分離され、その汚染は低率であるものの牛肉の取り扱いには十分な注意が必要であることが明らかとなった。また、さらなる汚染低減にその制御法の確立が求められる。また、牛肉の消毒効果の検討では、牛肉でのSTECの消毒効果を検証した。消毒液によっては使用量を増やすことや濃度を高めることによってSTECの減少効果が認められた。また、消毒後の滅菌水洗浄は消毒液の酸臭の軽減対策として有効であった。これらの結果から牛肉の消毒に有用な消毒薬として、過酢酸があげられ、55℃に加温しての使用や消毒後の洗浄によって酸臭を軽減することで現実的に使用できると考えられる。
結論
令和2年度は牛の筋肉を対象としてB物質の分析法(13分析法)を確立した。令和3年度は鶏の筋肉を対象としてB物質のうち抗菌性物質の分析法(12分析法)を確立した。令和4年度は鶏の筋肉を対象としてB物質の抗菌性物質以外の分析法(14分析法)を確立した。確立した分析法の妥当性評価試験を実施した結果、いずれも良好な結果が得られた。本研究で確立した分析法を用いることにより、B物質が牛や鶏のモニタリング部位から検出された場合にも速やかに筋肉の検査を実施することができ、EUへ動物性食品を輸出する際に求められる検査を円滑に進めることが可能と考えられる。牛枝肉のSTEC調査では、2020年10月から2023年1月に食肉検査所(生菌数のみ測定の1ヵ所を除く11ヵ所)の協力のもとに牛枝肉合計480検体から7血清群のSTECを対象とした試験を行った。この結果、3検体(0.6%)からSTEC O157が分離され、その汚染は低率であるものの牛肉の取り扱いには十分な注意が必要であることが明らかとなった。さらなる汚染低減にその制御法の確立が求められる。また、牛肉の消毒効果の検討では、一般に使われている6種類を選定し、牛肉でのSTECの消毒効果を検証した。その結果、消毒液によっては使用量を増やすことや濃度を高めることによってSTECの減少効果が認められた。また、消毒後の滅菌水洗浄は消毒液の酸臭の軽減対策として有効であった。これらの結果から牛肉の消毒に有用な消毒薬として、過酢酸があげられ、55℃に加温しての使用や消毒後の洗浄によって酸臭を軽減することで現実的に使用できると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
EUへ輸出される動物性食品は、B物質のモニタリング対象部位(肝臓、腎臓等)の分析法は確立されているものの、筋肉を対象とした分析法は整備されていない。筋肉を対象とした分析法を確立することにより、モニタリングで検出された場合に直ちに筋肉の調査を実施することができ、輸出先国に求められる検査を円滑に進めることが可能となる。また、モニタリング対象部位で検出された場合においても、迅速にEUへの輸出を再開することが可能となり、我が国の動物性食品の輸出拡大を推進することができると期待される。
臨床的観点からの成果
臨床的な観点からの成果は得られていない。
ガイドライン等の開発
ガイドラインは作成していない。
その他行政的観点からの成果
米国では食中毒防止対策のひとつとして牛肉のSTEC検査を行い、検出した関連製品については米国向けに輸出ができないため、国内の加熱加工原料向けに転用している。和牛は畜産食品のなかでも単価の高い高級食材であり、国内で限られた数の対米輸出食肉取扱施設でのと畜、食肉処理による生産量を考えると、加熱加工原料のみならず、効果的な殺菌方法による食中毒の発生予防措置をとった上で、加熱加工原料用以外の転用を可能にすることは、国内生産者や食肉処理関係者の継続的な生産にもつながることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202224005Z