癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究

文献情報

文献番号
200924022A
報告書区分
総括
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H19-3次がん・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 武井 寛幸(埼玉県立がんセンター 病院)
  • 林 慎一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SNP arrayなど最新の技術を駆使して、臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌と白血病では難治例の治療前予後予測法、乳癌では術前化学療法と内分泌療法の効果予測法を開発し、臨床応用を図る
研究方法
ウイルムス腫瘍と肝芽腫を対象にしてSNP arrayパターン、WT1変異、IGF2発現異常を解析し、臨床像との関係を分析した。化学療法前に採取した乳癌のSNP array解析を実施し、ゲノム異常と化学療法の効果との関係を調べた。ERE-GFPアデノウイルスベクターを、乳癌細胞に導入し、ER活性を測定した。エストロゲン応答遺伝子発現量を測定し、ER蛋白発現、ER活性との関係を検討した。NM23蛋白質の受容体であるMUC1*の抗体を作成した。白血病細胞においてMUC1*とNM23蛋白質の発現を調べ、増殖分化との関係を調べた。
結果と考察
ウイルムス腫瘍のSNP array解析の結果から、ゲノム欠失領域に器官形成に関わる遺伝子を発見した。同腫瘍をWT1異常とIGF2発現異常から4群に分類し、その特徴を明らかにした。肝芽腫のSNP array解析結果から、1q32.1にMDM4を含むゲノム増幅領域を同定した。乳癌のSNP array解析の結果から、HER2免疫染色陽性腫瘍の中にはHER2増幅例とHER2正常コピー数例があり、後者にHerceptin治療に不応例が多いことがわかった。ERE-GFPアデノウイルスベクターを用い、乳癌細胞のER活性を測定した。ER活性はER蛋白発現と相関しないが、ER標的遺伝子発現と相関傾向を示した。MUC1*発現は、白血病細胞の細胞外NM23に対する反応性と相関し、細胞増殖に伴い増強することを示した。
結論
ウイルムス腫瘍のゲノム欠失領域に器官形成に関わる遺伝子を発見した。肝芽腫の中にMDM4増幅腫瘍を発見し、MDM4が治療の標的になることを示した。乳癌のHerceptin併用化学療法の効果をHER2ゲノム量の測定で予測できる可能性を示した。ER蛋白陰性であってもホルモン療法に反応する乳癌が存在することが示唆された。MUC1*発現は白血病細胞の細胞外NM23に対する反応性と相関し、細胞の増殖に伴って増強した。MUC1*は診断治療の標的になる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200924022B
報告書区分
総合
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H19-3次がん・一般-022
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 武井 寛幸(埼玉県立がんセンター 病院)
  • 林 慎一(東北大学大学院医学系研究科)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター 臨床腫瘍研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SNP arrayなど最新の技術を駆使して、臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌と白血病では難治例の治療前予後予測法、乳癌では術前化学療法と内分泌療法の効果予測法を開発し、臨床応用を図る
研究方法
ウイルムス腫瘍と肝芽腫のSNP array、WT1、IGF2遺伝子異常、RASSF1A遺伝子メチル化を分析した。化学療法前に採取した乳癌をSNP arrayで解析し、ゲノム異常と化学療法の効果との関係を調べた。ERE-GFPアデノウイルスベクターを乳癌細胞に導入し、ER活性を測定した。エストロゲン応答遺伝子発現量を測定し、ER蛋白発現、ER活性との関係を検討した。NM23と結合する白血病細胞中の蛋白質を分析した。NM23受容体であるMUC1*の抗体を作成し、白血病細胞においてMUC1*とNM23の蛋白発現を調べ、増殖分化との関係を調べた。
結果と考察
ウイルムス腫瘍のゲノム欠失領域に器官形成に関わる遺伝子を発見した。同腫瘍をWT1異常とIGF2発現異常から4群に分類し、その特徴を明らかにした。肝芽腫のSNP array解析結果から、1q32.1にMDM4を含むゲノム増幅領域を同定した。RASSF1Aメチル化は小児癌の予後不良因子であることを示した。乳癌のSNP array解析の結果から、HER2免疫染色陽性腫瘍の中にはHER2増幅例とHER2正常コピー数例があり、後者にHerceptin治療に不応例が多いことがわかった。ERE-GFPアデノウイルスベクターを用い、乳癌細胞のER活性を測定した。ER活性はER蛋白発現と相関しないが、ER標的遺伝子発現と相関傾向を示した。MUC1*発現は、白血病細胞の細胞外NM23に対する反応性と相関し、細胞増殖に伴い増強することを示した。
結論
ウイルムス腫瘍のゲノム欠失領域に器官形成に関わる遺伝子を発見した。肝芽腫の中にMDM4増幅腫瘍を発見し、MDM4が治療の標的になることを示した。RASSF1Aメチル化は小児癌治療の層別化に役立つ。乳癌のHerceptin併用化学療法の効果をHER2ゲノム量の測定で予測できる可能性を示した。ER蛋白陰性であってもホルモン療法に反応する乳癌が存在することを示唆した。MUC1*が白血病診断治療の標的になることを示した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
SNP arrayなど最新の技術を駆使して、臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構の解明をめざした。この研究により発見されたWilms腫瘍のSOSTDC1, 肝芽腫のMDM4, 白血病のNM23とMUC1*は、新しい診断治療の分子マーカーになる。乳癌ではHER2遺伝子とエストロゲン応答遺伝子に焦点を当て、術前化学療法と内分泌療法の効果予測法を開発しつつあり、個別化医療への応用が期待できる。

臨床的観点からの成果
SNP arrayなど最新の技術を用い臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構の解明を試みた。その知見に基づき治療効果予測法を開発中である。この研究により発見されたWilms腫瘍のSOSTDC1, 肝芽腫のMDM4, 白血病のNM23とMUC1*は、新しい診断治療の分子マーカーになる。Wilms腫瘍と肝芽腫のRASSF1Aメチル化を予後不良因子として確立した。乳癌ではHER2遺伝子とエストロゲン応答遺伝子に焦点を当て、術前化学療法と内分泌療法の効果予測法を開発しつつあり、もう一歩で臨床応用が可能になる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
肝芽腫のメチル化を指標にした化学療法効果予測法や、乳癌のホルモン療法効果予測法を、肝芽腫や乳癌の臨床治療プロトコールの層別化に応用可能かどうか検討中である。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Arai, Y., Honda, S., Kaneko, Y., et al.
Genome-wide analysis of allelic imbalances reveals 4q deletions as a poor prognostic factor and MDM amplification at 1q32.1 in hepatoblastoma.
Genes Chrom. Cancer , 49 , 596-609  (2010)
原著論文2
Furukawa, S., Haruta, M., Kaneko, Y.,et al.
Yolk sac tumor but not seminoma or teratoma is associated with abnormal epigenetic reprogramming pathway and shows frequent hypermethylation of various tumor suppressor genes.
Cancer Sci., , 100 , 698-708  (2009)
原著論文3
Ohshima, J., Arai, Y.,Kaneko, Y., et al.
Two candidate tumor suppressor genes, MEOX2 and SOSTDC1, identified in a 7p21 homozygous deletion region in a Wilms tumor.
Genes Chromosomes Cancer , 48 , 1037-1050  (2009)
原著論文4
Fukushi, D., Watanabe, N.,Kaneko, Y., et al.
Centrosome amplification is correlated with ploidy divergence, but not with MYCN amplification in neuroblastoma tumors.
Cancer Genet. Cytogenet., , 188 , 32-41  (2009)
原著論文5
Matsumoto, M., Yamaguchi, Y.,Hayashi, S.,et al.
3-Dimentional microarray analysis of estrogen signal- related genes in breast cancer tissues.
Anticancer Res. , 29 (10) , 3971-3976  (2009)
原著論文6
Okabe-Kado, J., Kasukabe, T., Kaneko. Y.,et al.
Extracellular NM23 protein promotes the growth/survival of primary cultured human acute myelogenous leukemia cells.
Cancer Sci. , 100 , 1885-1894  (2009)
原著論文7
Okabe-Kado, J., Kasukabe, T., Kaneko. Y.,et al.
Extracellular NM23-H1 protein inhibits the survival of primary cultured normal human peripheral blood mononuclear cells and activates the cytokine production.
Int. J. Hematol. , 90 , 143-152  (2009)
原著論文8
Honda, S., Haruta, M., Kaneko, Y.,et al.
The methylation status of RASSF1A promoter predicts responsiveness to chemotherapy and eventual cure in hepatoblastoma patients.
Int. J. Cancer , 123 , 1117-1125  (2008)
原著論文9
Haruta, M., Matsumoto, Y., Kaneko, Y.,et al.
Combined BubR1 protein down-regulation and RASSF1A hypermethylation in Wilms tumors with diverse cytogenetic changes.
Mol. Carcinog, , 47 , 660-666  (2008)
原著論文10
Haruta, M., Arai, Y., Kaneko, Y.,et al.
Duplication of paternal IGF2 or loss of maternal IGF2 imprinting occurs in half of Wilms tumors with various structural WT1 abnormalities.
Genes Chromosomes Cancer , 47 , 712-727  (2008)
原著論文11
Honda, S., Arai, Y., Kaneko, Y., et al.
Loss of imprinting of IGF2 correlates with hypermethylation of the H19 differentially methylated region in hepatoblastoma.
Brit. J. Cancer , 99 , 1891-1899  (2008)
原著論文12
Kaneko, Y.
Neuroblastomas that might benefit from mass screening at 6 months of age in Japan.
Pediatr Blood & Cancer , 48 , 245-246  (2007)
原著論文13
Sugawara, W., Haruta, M., Kaneko, Y., et al.
Promoter hypermethylation of the RASSF1A gene predicts the poor outcome of patients with hepatoblastoma.
Pediatr Blood & Cancer , 49 , 240-249  (2007)
原著論文14
Watanabe, N., Haruta, M., Kaneko Y., et al.
Duplication of the paternal IGF2 allele in trisomy 11 and elevated expression levels of IGF2 mRNA in congenital mesoblastic nephroma of the cellular or mixed type.
Genes Chromosomes Cancer, , 46 , 929-935  (2007)
原著論文15
Okabe-Kado, J., Kasukabe, T., Kaneko, Y., et al.
Clinical significance of serum NM23-H1 protein in neuroblastoma. Focus on Neuroblastoma Research
Editor:Julio A. Fernandes, , 85-97  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-