DNAチップによる急性白血病の新規分類法提案

文献情報

文献番号
200924021A
報告書区分
総括
研究課題名
DNAチップによる急性白血病の新規分類法提案
課題番号
H19-3次がん・一般-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 加納 康彦(栃木県立がんセンター)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 医学部歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は白血病などの特発性血液疾患の多くが造血幹細胞(あるいはその近傍)の異常に起因することに着目し、これら疾患患者のフレッシュ検体より造血幹細胞相当分画のみを純化しストックするバンク事業「Blast Bank」をスタートした。本バンク細胞を用いてDNAチップ解析を行うことで、疾患の種類に拘わらず分化レベルがほぼ均一な細胞群を比較することが可能になり、疾患の病態解明に有用な知見が得られると期待された。
研究方法
造血幹細胞特異的マーカーであるCD133に対するアフィニティカラムを用いて、白血病を含む各種特発性血液疾患患者骨髄より造血幹細胞分画を純化保存し、これをBlast Bankと名付けた。
癌化に関与すると予想される多くの遺伝子のcoding exonに関して、計900万塩基対の配列を決定する超大型シークエンス用DNAチップを開発し、白血病検体における配列異常スクリーニングを行った。微量の臨床検体からマイクロRNA(miRAP)を高感度にクローニングする手法miRNA amplification profiling (mRAP)を開発した。
結果と考察
高等真核性津物に存在する全miRNAカタログを作成するために、mRAPと次世代シークエンサーを組み合わせた大規模miRNAクローニングを行った。さらにヒトにおいて発がんに関連が予想される5600種類のタンパクコード遺伝子について、そのcoding exonの配列異常を超大型DNAチップによりスクリーニングした。その結果チロシンキナーゼ遺伝子の新規活性型変異を同定することに成功した。さらにエピジェネティック状態を司る酵素のアミノ酸置換を発見した。CD34陽性白血病細胞におけるラミニン受容体高発現にはGM-CSFRの発現亢進が影響していることが示唆された。
結論
本研究事業において各種白血病類縁疾患の大規模な純化細胞検体収集を行い、その体細胞遺伝子変異をスクリーニングすることで、新たながん遺伝子を発見することに成功した。また同様に白血病芽球を用いてmiRNAプロファイルを明らかにすると共に、白血病細胞のMTX抗腫瘍効果に関する薬剤感受性解析、さらに新たな白血病患者予後予測マーカーの同定にも成功した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200924021B
報告書区分
総合
研究課題名
DNAチップによる急性白血病の新規分類法提案
課題番号
H19-3次がん・一般-021
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
間野 博行(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 加納 康彦(栃木県立がんセンター)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 医学部歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は特発性血液疾患患者検体より造血幹細胞相当分画のみを純化しストックするバンク事業「Blast Bank」をスタートし、これを用いて、(1)白血病の鑑別診断に有効な遺伝子マーカーの同定、(2)白血病の薬剤感受性に関与する遺伝子マーカーの同定、(3)白血病芽球におけるマイクロRNA(miRNA)の機能解析、(4)白血病治療薬剤の最適な投与スケジュールの解明、等を本研究計画で目指した。
研究方法
造血幹細胞特異的マーカーであるCD133に対するアフィニティカラムを用いて、白血病を含む各種特発性血液疾患患者骨髄より造血幹細胞分画を純化保存し、これをBlast Bankと名付けた。さらに成人T細胞白血病(ATL)については患者末梢血よりCD4陽性白血病芽球を純化保存した。米国ベンチャー起業と共同で世界最大の塩基配列解析用DNAチップを開発した。miRNAを微量の検体から同定する目的で、microRNA amplification profiling (mRAP)法を新たに開発した。
結果と考察
慢性期ATL 22例、急性期ATL 19例の患者末梢血よりCD4陽性白血病分画を純化し、Affymetrix HGU133 A&Bマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、慢性型と急性型ATLが互いに異なった遺伝子発現プロファイルを有すること、また特定のサブセットの遺伝子発現量に基づき病期を予測することが可能なことが明らかになった。
我々は新たに、数ngのRNAから10万クローン以上のmiRNAを簡便に単離・同定する新しいmRAPを開発し、まず哺乳動物における全身のmiRNAボディマップを決定するために、様々な発達レベルのマウス胎児および、成体マウスの様々な臓器におけるmiRNAのプロファイリングを行い、miRNAの発現が発生段階、時間、空間において精妙に制御されていることを明らかにした。
ヒトにおいて発がんに関連が予想される5600種類のタンパクコード遺伝子について、そのcoding exonの配列異常を超大型DNAチップによりスクリーニングした。その結果チロシンキナーゼ遺伝子の新規活性型変異を同定することに成功した。
結論
純化疾患細胞を用いたゲノミクス解析により疾患発症関連分子を効率よく同定することに成功した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
単に臨床検体をもちいた大規模ゲノミクス解析を行うのみでなく、分化レベルを揃えた細胞分画を純化した上で比較するため効率よく疾患関連遺伝子の同定が可能となった。実際本検体セットを用いた大規模ゲノム配列解析の結果、新たな発がん原因遺伝子の同定に成功した。またこの様な目的で収集した1000例に及ぶ白血病芽球分画は、世界最大の純化がん検体バンクであり、今後の白血病解析における極めて貴重な検体リソースとなる。
臨床的観点からの成果
本研究の結果明らかにされた、新たな白血病原因遺伝子は活性型変異を有する酵素をコードしており、同酵素活性を阻害する薬剤は、本白血病タイプの全く新しい分子標的療法となる。また今回の活性型変異を検出する分子診断法は白血病の新たな診断マーカーとなるものであり、本研究計画によって我が国からがんの新たな診断法・治療法が提案されたことになる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
23件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takada S, Berezikov E, Choi YL, et al.
Potential role of miR-29b in modulation of Dnmt3a and Dnmt3b expression in primordial germ cells of female mouse embryos
RNA , 15 (8) , 1507-1514  (2009)
原著論文2
Takeuchi K, Choi YL, Togashi Y, et al.
KIF5B-ALK, a novel fusion oncokinase identified by an immunohistochemistry-based diagnostic system for ALK-positive lung cancer
Clin. Cancer Res. , 15 (9) , 3143-3149  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-