と畜・食鳥処理場におけるHACCP検証方法の確立と食鳥処理工程の高度衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
202224002A
報告書区分
総括
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCP検証方法の確立と食鳥処理工程の高度衛生管理に関する研究
課題番号
20KA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
  • 山崎 栄樹(国立大学法人 帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
  • 廣井 豊子(至学館大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
17,422,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では国内全てのと畜場・食鳥処理場において衛生管理システムが適切に構築されていることを検証する手法を構築し、国産食肉・食鳥肉の更なる安全性確保の向上を図ることを目的とした。
研究方法
複数の食肉衛生検査所及び業界団体の協力を得て、微生物学的評価を行うと共に、意見聴取やその取り纏めを行った。
結果と考察
に以下の検討を進めた。①と畜場におけるHACCP外部検証に関する研究では、昨年度微生物学的評価を行った黒毛和種牛枝肉の付着異物について菌叢解析を行い、糞便・消化管内容物に加え、獣毛もゼロトレランスを求める必要性を裏付ける知見を得た。めん羊枝肉の細菌汚染実態を部位別に評価し、自治体検査員による評価を通じた採材部位の選定が有用と目された。牛豚枝肉の洗浄前後での衛生挙動を評価した。国内と畜場施設環境でのリステリア汚染状況を調査し、枝肉冷却室でリステリア属菌が検出され評価対象工程と考えられた一方、解体処理室は処理後に熱温水洗浄が行われており、同菌が持続汚染を呈する可能性は低いと考えられた。②食鳥処理場におけるHACCP外部検証に関する研究では、冷却水中の物性・微生物の時系列挙動を評価し、評価に有用と思われる試験項目及びそれらの達成目標例を確認した。③生食用食鳥肉の衛生確保に関する研究では、南九州地方の小規模事業者での処理工程の詳細情報の収集及び同工程を通じたカンピロバクター汚染挙動を評価し、製品では概ね支障ないレベルに制御できている実態を確認した。また、関連業界団体の協力を得て、同地方の小規模事業者における衛生管理実態に関するアンケート調査を行い、前年度迄の成績を含め、生食用食鳥肉の衛生管理に関するガイドライン原案を作成した。④と畜場・食鳥処理場の内部検証に関する研究では事業者、複数自治体の検査員から意見を聴取し、より実行性を高めた手順書最終案を作成した。⑤国際動向を踏まえた情報の収集整理では、諸外国の関連法規やガイドライン等を収集し、特に微生物試験に関する内容の要点を纏め、検体採取方法、検体採取頻度等は国間で相違が認められる状況を把握した。⑥サンプリングプランに関する研究では、自治体より提出された外部検証データを整理・解析し、前年度までとの対比を行った上で今後の課題と思われる事項を抽出した。
結論
本研究により得られた知見は、我が国のと畜場・食鳥処理場の衛生管理体制をより持続性を伴った効果的・効率的なものへと発展させるために活用されることが期待される。また、生食用食鳥肉のガイドライン等の策定は、依然として加熱用食鳥肉を転用することにより多発しているカンピロバクター食中毒の発生低減へ資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
2023-11-09

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
2023-11-09

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202224002B
報告書区分
総合
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCP検証方法の確立と食鳥処理工程の高度衛生管理に関する研究
課題番号
20KA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
  • 山崎 栄樹(国立大学法人 帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門)
  • 廣井 豊子(至学館大学)
  • 大屋 賢司(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、国内全てのと畜場・食鳥処理場において衛生管理システムが適切に構築されていることを検証する手法を構築し、国産食肉・食鳥肉の更なる安全性確保の向上を図ることを目的とした。
研究方法
多数の食肉衛生検査所及び関連事業者団体の協力を得て、微生物学的評価を進めると共に意見聴取を行い、得られた結果及び意見等を総合的に判断して、実態調査並びにガイドライン案の作成を進めた。
結果と考察
(1)と畜場におけるHACCP外部検証に関する研究では、①黒毛和種牛枝肉に付着する異物について微生物学的・遺伝学的検討を進め、糞便・消化管内容物に加え、獣毛もゼロトレランスを求める必要性を示した。②馬枝肉、めん羊枝肉を対象とした外部検証微生物試験用検体の部位選定に向けた検討を進め、牛枝肉又は豚枝肉と同様の採材部位設定が妥当との知見を得た。③牛豚枝肉での外皮等から志賀毒素産生性大腸菌由来遺伝子が検出される割合を求めた上で、衛生管理にあたっての剥皮工程の重要性を示した。また、洗浄工程前後での糞便中での細菌汚染実態を調査した。④欧米のと畜場施設環境で危害要因とされるリステリアの汚染状況を国内と畜場で調査し、冷却室環境でリステリア属菌が検出され評価対象工程と考えられた一方、処理室は一般に処理後に熱温水洗浄が行われており、同菌が処理工程環境に持続汚染を呈する可能性は低いと考えられた。(2)食鳥処理場におけるHACCP外部検証に関する研究では、成鶏(採卵鶏)の食鳥とたいにおける細菌汚染実態を調査し、肉用鶏に比べ、カンピロバクター汚染菌数が相対的に低いと思われる知見を得た。また、一般にCCPと位置付けられる冷却工程に着目し、冷却水中の物性・微生物的な時系列挙動を評価し、冷却工程のモニタリング指標には一般細菌数を原則としつつ、食中毒菌を対象とする際にはロットや中抜き処理工程での逸脱割合等を考慮してサンプリングを行う必要性を提起した。(3)生食用食鳥肉の衛生確保に関する研究では、①南九州地方の小規模事業者の協力を得て、処理工程の詳細情報の収集及び同工程を通じたカンピロバクター汚染挙動を評価し、製品では概ね支障ないレベルに制御できている実態を確認した。また、汚染事例に対する改善措置例を提示した。②南九州地方で製造加工された生食用食鳥肉製品の細菌汚染実態を調査し、その工程管理にあたっては食鳥処理から加工販売までを生食専用として取り扱う必要があること、中抜き・外剥ぎ方式の別による管理体制の区分化を行う必要性を提起した。また、「とりさし協会」の協力を得て、南九州地方で「とりさし」を取り扱う小規模事業者におけるアンケート調査を行い、これまでの成績を踏まえて、生食用食鳥肉の衛生管理に関するガイドライン原案を作成した。(4)と畜場・食鳥処理場の内部検証に関する研究では、外部検証との連携をとりうる事業者向けの内部検証手順書最終案を作成した。(5)国際動向を踏まえた情報の収集整理では、諸外国の関連法規やガイドライン等を収集し、特に微生物試験に関する内容の要点を纏め、検体採取方法、検体採取頻度等は国間で相違が認められる状況を把握した。(6)サンプリングプランに関する研究では、自治体より提出された外部検証データを整理・解析し、経時的な対比を行った上で、今後の課題と思われる事項を抽出した。
結論
本研究により得られた科学的知見は、我が国のと畜場・食鳥処理場の衛生管理体制をより持続性を伴った効果的・効率的なものへと発展させるために活用されうことが期待される。また、生食用食鳥肉に特化したガイドライン等の策定は、依然として加熱用食鳥肉を転用することにより多発しているカンピロバクター食中毒の発生低減へと資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
2023-11-09

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
2024-08-06

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202224002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
と畜場や食鳥処理場で制度化されたHACCP外部検証の手法について、更なる改善が必要と考えられる科学的知見を集積した。また、生食用食鳥肉については生食専用の衛生管理を食鳥処理から販売消費段階にまで設ける必要性と意義を明確にするための根拠を創出し、ガイドライン案を策定した。この他、事業者が自ら行う内部検証を外部検証と連携できるよう、手順書案を作成した。更に、自治体から厚生労働省に報告された外部検証微生物試験成績の全体結果を解析し、厚生労働省担当官に共有し、調整を経て、通知文書別添として活用された。
臨床的観点からの成果
臨床的観点からの成果は特になし。
ガイドライン等の開発
と畜場・食鳥処理場におけるHACCP検証や生食用食鳥肉の衛生管理にかかわるものとして、今後効果的・効率的な運用に資するための提言やガイドライン案の策定を行った。また、解析協力を行った外部検証の結果について、通知文書として全国の自治体あてに発出された。
その他行政的観点からの成果
全国自治体から厚生労働省に報告された外部検証微生物試験結果の解析を進め、獣種毎に平均+2SDを暫定的な達成目標値として提起し、通知文書別添として活用された。
その他のインパクト
日本カンピロバクター研究会や国立保健医療科学院での講演・講義を行い、研究成果の社会発信に努めた。また、鶏肉をはじめ、そのほかの食肉を含めた、生食する際のリスクについて、共同編集者として企画し、発刊した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
1件
Asakura H. 54th Korean Society for Food Science of Animal Resources International Sympodium
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
外部検証成績の解析結果は、全国自治体宛通知文書別添資料として活用された。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kumagai Y, Pires SM, Kubota K, Asakura H.
Attributing human foodborne diseases to food sources and water in Japan using analysis of outbreak surveillance data.
J. Food Prot. , 83 ,  2087-2094  (2020)
原著論文2
Yamasaki E, Matsuzawa S, Takeuchi K, Morimoto Y, Ikeda T, Okumura K, Kurazono H.
Rapid Serotyping of Salmonella Isolates Based on Single Nucleotide Polymorphism-Like Sequence Profiles of a Salmonella- Specific Gene.
Foodborne Pathog. Dis. , 18 , 31-40  (2020)
原著論文3
Okumura K, Kaido M, Yamasaki E, Akai Y, Kurazono H, Yamamoto S.
Genomic Sequences of Uropathogenic Escherichia coli Strains with Various Fluoroquinolone Resistance Profiles
Microbiol. Resour. Announc. , 9 , e00199-20-  (2020)
原著論文4
Yamamoto S, Kitagawa W, Nakano M, Asakura H, Iwabuchi E, Sone T, Asano K.
Plasmid sequences of four large plasmids carrying antimicrobial resistance genes in Escherichia coli strains isolated from beef cattle in Japan.
Microbiol. Resour. Announc. , 9 , e00219-20-  (2020)
原著論文5
朝倉宏
食鳥肉製品のハザードとその管理
保健医療科学 , 70 , 100-106  (2021)
原著論文6
Asakura H, Nakayama T, Yamamoto S, Izawa K, Kawase J, Torii Y, Murakami S.
Long-term grow-out affects Campylobacter jejuni colonization fitness in coincidence with altered microbiota and lipid composition in the cecum of laying hens
Front. Vet. Sci. , 8 , 675570-  (2021)
原著論文7
Duc VM, Kakiuchi R, Obi T, Asakura H, Chuma T
The incidence of Campylobacter contamination levels through chicken-sashimi processing steps in a small-scale poultry processing plant applying the external stripping method
J. Vet. Med. Sci. , 84 , 414-419  (2022)
原著論文8
Asakura H, Yamamoto S, Sasaki Y, Okada Y, Katabami, Fujimori A, Munakata K, Shiraki Y, Nishibu H,
Bacterial distribution and community structure in beef cattle liver and bile at slaughter
J. Food Prot. , 85 , 424-434  (2022)
原著論文9
Ogawa A, Nagaoka H, Asakura H.
Draft genome sequence of Campylobacter jejuni ST-508 strain Shizu21005, isolated from an asymptomatic food handler in Japan, 2021.
Microbiol Resour Announc. , 10 , e0031622-  (2022)
原著論文10
Yamasaki E and Fukumoto S.
Prevalence of Shiga toxin-producing Escherichia coli in Yezo sika deer Cervus nippon yesoensis in the Tokachi sub-prefecture of Hokkaido, Japan.
J. Vet. Med. Sci. , 84 , 770-776  (2022)
原著論文11
塚本真由美、苅谷俊宏、山﨑翔矢、小畑麗、向島幸司、村瀬繁樹、朝倉宏、森田幸雄.
黒毛和種牛枝肉表面に付着する異物の細菌学的汚染状況
日本獣医師会雑誌 , 76 , e11-e17  (2023)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202224002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,500,004円
(2)補助金確定額
20,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
4円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,413,934円
人件費・謝金 6,317,388円
旅費 680,710円
その他 1,009,972円
間接経費 3,078,000円
合計 20,500,004円

備考

備考
研究分担者1名について、物品費所要額が交付時の想定額よりも円安等の影響を受けて増加したため、自己資金によりこれを充足した。

公開日・更新日

公開日
2024-08-06
更新日
-