労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断のより適切な実施に資する研究

文献情報

文献番号
202223015A
報告書区分
総括
研究課題名
労働安全衛生法に基づく歯科医師による健康診断のより適切な実施に資する研究
課題番号
22JA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
上條 英之(東京歯科大学 歯科社会保障学)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 英輝(国立保健医療科学院)
  • 上野 晋(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 杉原 直樹(東京歯科大学 衛生学講座)
  • 有川 量崇(日本大学 松戸歯学部)
  • 大山 篤(東京医科歯科大学 口腔疾患予防学分野)
  • 澁谷 智明(日立製作所京浜地区産業医療統括センタ 新川崎健康支援センタ)
  • 小林 宏明(東京医科歯科大学歯学部 医歯学総合研究科 歯周病学分野)
  • 佐藤 涼一(東京歯科大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有害業務に従事する労働者に義務づけられている歯科医師の健康診断の実態を把握し、近年の職場環境の変化に伴う適切なばく露防止対策を検討に必要なエビデンスを収集するため、業務の実態と作業環境管理・作業管理の課題と対策についての分析により 歯科医師による健康診断と事後措置の適切な実施方法について事例収集を行い、職場で望まれる歯科口腔疾患の適切な管理方法を示すことが本研究の目的です。
研究方法
この研究目的を達成するため、
1 大手調査会社のアンケートモニターを用いて、一都3県の製造業に従事している就労者146名を対象とし、2023年1月に口腔内健診、唾液検査、質問紙調査を実施しました。
2 酸等を扱っている就労者の方に、オンライン調査を行い、酸などの取り扱い状況や歯科健診の受診状況等について、情報収集を行いました。
3 また、歯科医師の有害業務健診について、産業歯科保健の学会等に所属している者並びに各都道府県歯科医師会等に、郵送による質問紙調査で、歯科医師による有害業務健診について、調査を行いました。
4 歯科医師の有害業務健診について、過去の論文等から、調査を行うとともに、一部の都道府県労働局がまとめている統計調査から、歯科医師による有害業務健診について、統計状況の把握を行いました。
5 歯科医師の有害業務健診での対象となる歯の酸蝕症について、フッ化物応用等を行った場合の基礎実験について、実施しました。
6 いままでの研究知見等を踏まえ、「事業所での酸蝕症の歯科健診を行うにあたっての考え方」を取りまとめるための検討を研究グループの従事者の間で実施しました。
結果と考察
1 大手調査会社のモニターの調査で酸蝕症の疑いのある者が約2%に認められ、いずれも「製造生産」、「技術開発・設計業務」に従事していました。また、酸の取り扱いを常時行っている者で酸蝕の疑いのある者は約1割でした。
2 作業環境、作業環境管理、歯科医師による有害業務健診について50人未満の事業所では、50人以上の事業所に比較して実施割合が低い状況でした。また、オンラインでの調査の結果から、酸を扱っている事業所で従事している者での健診の実施率は、年1回以上定期的実施は、50人未満の事業所の場合約22%、50~500人未満の事業所で約45%、500人以上の事業所では約64%で、6か月に1回定期的に実施と回答した者は、約28%でした。
3 産業歯科関係学会等の会員からの意見及び都道府県歯科医師会等の調査から、歯科医師による有害業務健診について診断基準の統一、健診方法を含むマニュアル整備、一般と特殊歯科健診の違いを含む研修等の必要性が提言されました。また、都道府県等歯科医師会等の調査で、有害業務歯科健診についての事業所からの問い合わせが増える傾向にあり、全国的マニュアル等の整備が欠かせないとの回答も認められました。
4 文献調査から、歯科医師による有害業務での対象となる歯の酸蝕症について、生活習慣起因か、業務起因かを明らかにする必要性が示唆されました。また、歯の酸蝕症について歯の咬耗との鑑別も必要であると考えられました
5 6か所の労働局の公開データをもとに調査したところ単純平均で、歯の酸蝕症について、有所見者率は約1割、2017年(16%)と2021年(11%)との比較で有所見率は減少傾向を示しました。
6 歯の酸蝕症に対する基礎実験の結果から、歯の酸蝕症にフッ化物応用による方法を採用することでいわゆる歯の脱灰が抑制されることが明らかとなりました。
7 有害業務に従事している方の歯科健診について、全国的に統一した基準で実施できるよう、「事業所での酸蝕症の歯科健診を行うにあたっての現時点の考え方の試案」をとりまとめました。
結論
歯科医師による有害業務健診での状況把握のため、予備調査を行ったところ、酸を常時扱っている者の場合、いわゆる歯の酸蝕症の疑いのある者は約1割でした。なお、一部の労働局の統計データを収集し、比較したところ有所見者率は2017年と2021年の比較で減少傾向を示しました。就労者のオンライン調査から事業所の規模別にみて、小規模の事業所の場合、実施が不十分で、今後の課題と考えられました。基礎実験により、歯の酸蝕症を職場で適切に管理していく上で、リスクが高い職場の場合、フッ化物局所応用を行うことで、歯の脱灰防止効果があることが明らかとなりました。なお、関係学会会員等の調査等から歯科医師による有害業務健診の統一基準での実施にあたり、マニュアル等の整備が必要なため「事業所での酸蝕症の歯科健診を行うにあたっての考え方の試案」を今年度試みとしてまとめました。

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202223015Z